寄与分が認められるのはどんなとき?
親からの相続で遺産を分ける時に、自分が親の世話をしてきたことを考慮して取り分を増やすことができるのでしょうか?
弁護士からのアドバイス
「寄与分(きよぶん)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
寄与分とは、亡くなった人(被相続人~ひそうぞくにん)の財産を維持したり、増やしたりした相続人に、他の相続人より多く特別に与えられる取り分です。
良く、「親の世話をした」ということが争われますが、同居の子が食事の世話とか病院への送迎をした程度だと、子が親に対する扶養義務を果たしただけなので、寄与分とは扱われません。
寄与分が認められるためには3つの重要な要素があると言われています(東京家庭裁判書の資料)ので、これを覚えておくと良いと思います。
1 被相続人の主張する親などを助けた行為(寄与行為)が、被相続人が死亡する前の行為であることが必要です。
そのため、親名義の土地・建物の固定資産税を支払ったり、管理の費用を負担したり、葬儀費用を負担しても、それは寄与分の対象にはなりません。
しかし、通常は葬儀費用は領収証や請求書を出したうえで、相続人全員の合意で遺産から支出することが実際には多いです。
お寺に支払うお金は領収証も請求書も出ないのが普通ですが、相続人の間では、「このお寺なら50万円」とか相場観があるようで、その額でもめることも少ないです。
2 寄与分の以下の法律的な要件をみたしていることが必要です。
寄与分の法律的な要件とは
① 亡くなった人の財産の維持・増加をすることが、亡くなった人にとって必要不可欠であったこと
② その相続人のした行為が「特別な貢献」と認められること
③ 亡くなった人から対価をもらっていないこと
④ 財産の維持・増加行為が短期間ではなく、相当の期間あること
⑤ 実際にその維持・増加行為で、遺産の価値が維持されたり、増加したという事実があること
の5つです。
相当ハードルが高いですよね。
例えば、「親の世話をしたこと」が寄与分ではなく、その世話をしなければ、特別にヘルパーを依頼しなければならないので、その費用が浮いたという点が寄与分となります。
そのため、同居している親の世話の場合には、特にヘルパーに頼むほどではないという場合には寄与分に入りにくいといえるでしょう。
この場合、例えば、気難しい親の世話を献身的にした同居の子には大きな不満が残ると思います。
でも、その気苦労を客観的に証明するのが、非常に難しいのが現実です。
3 遺産の維持や増加をした行為について、領収書などの客観的な裏付け資料が必要ということです。
例えば、高額の施設入所費用を負担していたとかであれば、施設費用の引き落とし口座の名義で裏付けがとれます。
これに対して、毎日の食事を作って運んでやっていたという場合には、一々スーパーや薬局のレシートを保管していないといけないことになります。
自分がノートにメモをしていただけでは裏付けが無いといわれてしまいますので、日々の記録とレシートなどを、亡くなる前からしっかりと保管しておく必要があります。
このように、寄与分というのは、認めてもらうためには被相続人が亡くなる前に、しっかりと知識がを持っていることが重要となります。
常識的には認めてあげたいのに、「特別」な寄与とまで言えないとされてしまったり、しっかりした証拠がなかったために苦労が報われないことも多いです。
事前に知っておいて、証拠として残せるものは確保しておくことが必要でしょう。
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