土地から健康被害が生ずる場合の責任は?

静岡では春らしい陽気になってきましたが、昼と夜の気温差が大きく感じられます。

 

おそらく、全国的にそのような気候だと思いますので、体調には十分お気をつけ下さい。

 

さて、フッ素というと皆さんどのようなイメージを持たれるでしょうか?

 

歯磨きに含まれている成分とか、化学記号を連想したりされるかもしれません。

 

詳しい方は、健康被害を起こすリスクのある有害物質という認識を持たれているかもしれません。

 

歯磨きに含まれるような微量のフッ素は直接健康被害はないとされていますが、濃度が大きい場合には中毒症状や健康被害が起きることも指摘されています。

 

そのため、環境省では土壌汚染の原因物質としてフッ素も含めています。

 

土地の売買では、土壌汚染が問題となることが多いのですが、今回ご紹介する最高裁の判例ではフッ素による土壌汚染が問題となったものです。

 

買主は、フッ素工場の跡地を買い取りました。

              <designed by いらすとや>

フッ素工場の跡地ですから、当然、土壌にフッ素が含まれていることは予測できますよね。

 

ところが、この売買契約をした平成3年当時は、フッ素についての環境基準が公に決められていませんでした。

 

ですから、買主は特にフッ素の汚染除去などをせずに土地を転売できるつもりで買い受けました。

 

その後、平成15年2月にフッ素が有害物質として規定されました。

 

おそらく、専門家でない限り、早い方でも高濃度フッ素を健康被害のリスクと認識し始めたのはその頃からではないでしょうか。

 

もっとも、フッ素については、PCBや有機リンのように少しでも入っていたら土壌汚染になるのではなく、一定の濃度以上の場合には土壌汚染となるという規制です。

 

その意味ではフッ素は猛毒というわけではありませんが、一定以上の濃度を持つと汚染が広がるのを防ぐ工事などをしなければなりません。

 

この事案では、土地の汚染が最もひどい箇所では基準値の1,200倍のフッ素が検出されました。

 

このような土壌汚染を除去したり、汚染漏れの防止の工事をすると、その費用が莫大になることが多いのです。

 

そこで、買主は、売主に対して土壌汚染を土地の瑕疵(かし)=欠陥だとして、4億円を超える損害賠償請求をしました。

 

しかし、売買契約時にはフッ素について人の健康被害を引き起こす危険があるとは一般には認識されていないので、売主は土地に欠陥などないと考えて売ったわけです。

 

そこで、売買契約後に有害物質であることが分かって法規制された物質についてまで、売主は損害賠償責任を負うかが問題となりました。

 

最高裁まで争われましたが、結局は否定されました。

 

その最大の理由は、もし売買契約後に生じた瑕疵=欠陥についてまで売主に責任を負わせると、売主は永遠に責任を免れないことになりかねないということです。

 

例えば、フッ素以外の物質で健康被害を生ずるものの中には、まだ科学的にも社会的にも明らかになっていないものもあると思います。

              <designed by いらすとや>

10年後に健康被害が判明する物質についてまで、今の土地を売る人に責任を負わせてしまうと、土地売買自体が成り立ちません。

 

そのため、土地を売るときに健康被害が判明している物質についてだけ、売主に責任を負わせようとしたものです。

 

とはいえ、土地を住居として買う場合には、後で健康被害が分かったのではたまらないという気持ちもありますよね。

 

私の経験から見ると、売主が工場・作業場・廃棄物置場にしていた土地について土壌汚染が問題となるケースが多いようです。

 

もし、土地を購入されることがあったら、以前、その土地が何に使われていたか確認してから決めた方が良いかもしれませんね。

 

 

不動産トラブルの基本知識についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 不動産のトラブル |

ながらスマホでの運転は重い罪?

桜が満開をそろそろ終えることですね。

 

静岡市内では満開だったり、葉桜になりかけたりしています。

 

静岡祭りと桜がちょうど重なったこともあって、今年は桜を楽しめた方も多かったのではないでしょうか。

 

さて、自動車の運転中にスマートホンの操作をしてはいけないことはご存じだと思います。

 

運転中にやってはいけないことは他にもありますね。

 

脇見、カーナビの操作、TVを観るなどです。

 

今月の19日に滋賀県の大津地方裁判所で、ながらスマホで事故を起こした事件についての判決が出ました。

携帯電話を使いながら運転をしている人のイラスト

              <designed by いらすとや>

 

 

事件の内容は、大型トラックの運転手が、高速道路を運転中に、スマートホンのアプリを操作したり、車内に落としたスマホを拾うなどしました。

 

スマホを使うときって、うっかり落としたりしますよね?

 

この運転手も車内に落としたスマホをあわてて拾おうとしたようです。

 

「スマホをちょっと操作して落として拾う」だけの時間ってどれくらいだと思いますか?

 

この事件では約10秒間でした。

 

もし、高速道路を時速100kmで走っていた場合、その自動車は10秒間で約278m走ります。

 

つまり、普通自動車でも約1トン、大型トラックだったら約8~25トンもの重さのものが、時速100kmで278m無人運転になるということです。

 

今回の大型トラックの総重量が20トンだとすれば、普通自動車20台がまとめて時速100kmで無人運転をして、追突事故を引き起こしたことになります。

 

この大型トラックが渋滞中の自動車の列に追突したことで5人が死傷してしまいました。

 

こう考えると、スマホに限らず、自動車のながら運転というのは恐ろしいことだと感じますよね。

 

警察や検察官も当然、重く受け止めて、禁錮2年求刑を求めました。

 

「禁錮(きんこ)」というのは、「懲役(ちょうえき)」と同じように刑務所に入れられますが、懲役のように刑務所内で働く刑務作業が無い刑を言います。

 

もっとも、何年も働かないのは人間にとって苦痛のようで、ほとんどの禁固刑を受けた人は志願して刑務作業に加わるようです。

 

検察官が裁判所に求める刑罰(求刑)は通常は重めにしますので、実際に言い渡される刑は求刑よりも軽いことがほとんどです。

 

例えば、禁錮2年の求刑だったら、判決は禁錮1年8月などが予想される判決です。

 

この事件を担当した弁護人も当然そのような判決を予測していたでしょう。

 

ところが、大津地裁では、検察官の求刑の禁錮2年よりも更に重い禁錮2年8月を言い渡しました。

 

これは、時々あるとはいえ珍しい判決です。

 

ちなみに、私が刑事弁護人になった事件では求刑以上に重い判決を受けたことは一度も有りません。

 

それだけ、この事件で裁判所はながらスマホでの運転を重く見たのでしょう。

 

これは、昨今の運転状況に裁判所も危機感を持っているのだろうと思います。

スマートフォン禁止のマーク              <designed by いらすとや>

人間の感覚というのは恐ろしいもので、危険だと思うことがやり続けるうちにどんどん鈍っていきます。

 

・赤信号で止まっているからスマホを操作しても良いだろう。
         ↓
・運転中でも安全な道路なら良いだろう。
         ↓
・高速道路は一般道より注意を落としても危険はないだろう。
         ↓
・10秒間くらいのながらスマホに危険を感じなくなる。

 

このように危機意識が下がって、自分の中での自動車運転の注意義務を落としていくリスクは、この事件の運転手に限らず誰にでも当てはまりそうです。

 

そういう意味で、この判決では
「求刑以上の判決を下すことで、マスコミなどに社会問題として取り上げてもらい、今後のながらスマホでの事故を減らして欲しい」
という意識が裁判官にあったのかもしれません。

 

私たちも気をつけたいですね。

 

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 刑事事件のお話 |

訴訟最終告知の葉書でビックリ

暖かい日が増えて、桜の開花が気象庁で宣言されましたね。

 

静岡市も暖かいので、私の事務所の近くの神社では既に桜の花が開いています。

 

さて、色々な詐欺の中で訴訟を起こすという最終通告を葉書などで行って、電話をかけさせようとする詐欺。

 

私の自宅にも葉書が来ました。

 

写真を載せておきますね。

 

法律の実務家から見るとツッコミ所が多すぎますし、修正点をブログで指摘すると、それが悪用されても困るので一部だけ取り上げますね。

 

まず、タイトルにある「訴訟最終告知」という言葉が、法律実務に存在しなので、それ自体がウソです。

 

 

また、「管理番号(わ)315」というのは、訴訟上ありえない言葉です。

 

「管理番号」というのが存在しないことの他に、「(わ)」というのは、検察官に起訴されなければつかない事件番号なのです。

 

いきなり葉書でくるような代物ではありません。

 

でも、日本語的には「訴訟」とか「最終告知」とか書いてあると、裁判に縁の無い人は、ビックリして電話をかけて確認したくなっても不思議ではありません。

               <Designed by いらすとや>

 

それが詐欺師の狙いなのです。

 

そして、受付が「法務省管理局 民間訴訟告知センター」となっています。

 

裁判所という司法機関と法務省という行政機関が一つになってしまっています。

 

よくよく考えれば、司法、行政は、立法とともに三権分立で分けられていたはずですよね?

 

冷静に考えれば、何かおかしいな?という感覚は持っていただけるのではないでしょうか。

 

こういう葉書やメールが来たときには、時折、記載されている電話番号に事務所からかけてみます。

 

最近は忙しくて、そんな時間をとることはできないのですが過去の経験をお話しますね。

 

こんなやりとりになります。

 

私:「訴訟最終告知って葉書が来たのですが、そちらが担当ですか?」

相手:「はい。そうです。」

私:「これはどういうことでしょうか?」

相手:「お客様。最近、インターネットで何か良く確認しないでクリックしたことはなかったでしょうか?」

私:「(ビックリした感じで)あったかもしれません!」

相手「その会社から裁判が起こされていて、取り下げの期限が迫っています。」

私:「一体、どうしたらいいのでしょうか?」

相手:「取り下げには、保証金の支払いが必要です。お客様のご住所はどちらになりますか?」

私:「静岡市葵区鷹匠・・・(法律事務所の住所)です。困りました。どうすればいいのですか?」

相手:「今から言う住所にレターパックという方法で30万円を送って下さい。そうすれば、訴訟の取り下げが認められます。住所は、東京都新宿区・・・郵便局留め」

私:「(不審そうに)郵便局留めってどうしてですか?しっかりと送るので、そちらの住所を教えて下さい。」

相手:「いえ、今言った住所で届くので。」

(もう話しても情報を得られないと分かるので、突っ込んでみます)

私:「お金を払えば訴訟って取り下げが認められるのでしょうか?」

相手:「はい。そのようになっています。」

私:「裁判所に、私から何か書類の提出はいらないのでしょうか?」

相手:「・・・いらないと思います。」

私:「『執行官による執行証書の交付』って書いてありますが、これはどういいう意味ですか?」

相手「それは執行官が書類を渡すっていうことです。」

私:「執行官って何をする人ですか?裁判官とどう違うんですか?」

相手:「・・・」

私:「私の所には訴状も、判決書も送達されてきていないのですが、それでどうやって執行できるのでしょうか?」

相手:「・・・担当の者に改めてお電話をさせるようにいたします。失礼します。」

 

もちろん二度と電話がかかってくることはありません。

 

つまり、上の会話の前半部分で引っかかる人からはお金をとり、途中から不信感を出して追及する人は、そこで切り上げるという方法をとっているのでしょう。

 

ちなみに、裁判所から初めて届くのは訴状で、しっかりと封筒などに「静岡地方裁判所」とか、「東京簡易裁判所」と裁判所の名前が書かれ、その裁判所の電話番号も書かれています。

 

このような裁判所から正式な形で送達された訴状支払督促を放置しておくと大変なことになるのは事実です。

 

ですから、もし裁判に関する通知を受け取ったら、書いてある住所や電話番号をインターネットの検索エンジンに打ち込んでみて、裁判所の公式ホームページの住所や電話番号と一致するか確認すると良いと思います。

 

もっとも、「お金を裁判所や法務省に払えば裁判が終わる」という制度は日本にはありませんので、くれぐれもご注意を。

 

消費者被害の一般的なご説明についてはこちら

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カテゴリー: 消費者の被害 |

ドライブレコーダーと証拠

最近、花粉が飛び散り始めましたね。

 

花粉症の私にとっては辛い時期です。

 

毎年、この時期には「今年こそ、舌下免疫療法(舌の裏に薬を垂らして治療する方法)をやろう」と思うのですが、5月になると楽になって忘れてしまいます。

 

まさに、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とのことわざ通りです。

 

さて、今年になって思い立って、私の自動車にドライブレコーダーを着けました。

 

オートバックスで購入した15,000円くらいのものです。

 

やはり、交通事故の事件の依頼者の方の話を聞いていると、ドライブレコーダーがあったら良かったのにと思うことが多いです。

 

自分自身がいくら法令を守って運転していても、相手の運転手が例えば一旦停止を守らなければ交通事故は避けようがありません。

車の交通事故のイラスト(男性)               <Designed by いらすとや>

 

そんな時に、ドライブレコーダーがあれば、事故の過失割合で余計な紛争を避けることができます。

 

交通事故の過失割合は、過去の裁判例を整理した本「別冊判例タイムズ」を基準にして細かく整理されています。

 

そのため、ドライブレコーダーに事故の映像が残っていれば、別冊判例タイムズの交通事故図面と照らし合わせて基本的な過失割合をすぐに出せます。

 

これを使えば、保険会社や弁護士からの提案について、裁判まで争わなくてもすむでしょう。

 

最近の衝突防止システムなど安全支援機能がついている自動車には、ドライブレコーダーも一緒に装備されているものが多いです。

 

さて、そのドライブレコーダー、私は最近つけたばかりだったので、初めて知ったのですが、衝突時以外の記録も自動的に残っています。

 

ドライブレコーダー本体からマイクロSDカードを取り出して、PCで見たところ、自動車が衝撃を感じた時以外の記録も残っていました。

 

例えば、今週、沼津駅北口のプラザヴェルデに講義に行ったところ、

① 事務所の駐車場でエンジンをかけてから出発までの動画

② 国道を通っている動画

③ 東名高速道路を走っている動画

④ サービスエリアに駐車・発車した時の動画

⑤ 沼津インターを降りた直後の動画

⑥ プラザヴェルデの駐車場に駐めた時の動画

が保存されていました。

 

つまり、後からドライブレコーダーを見れば、私がどのような経路で静岡市内の事務所から沼津市の施設に行ったのかがほぼ分かってしまうのです。

 

さて、ここでピンと来た方もいると思います。

 

そうです。これは不貞行為の証拠としても使えるのです。

浮気現場を見つけた人のイラスト(女性)              <Designed by いらすとや>

 

妻が夫の不貞行為を疑ったとき、こっそりとドライブレコーダーの動画をコピーして保管しておけば、場合によって裁判で証拠となります。

 

例えば、ラブホテルに入った画像があれば、少なくとも夫が誰か別の女性と不貞行為をしたことが証明できるでしょう。

 

また、夫が不貞相手のマンションの駐車場に駐車して一泊する一連の動画が入っていれば、そのマンションに住む女性との不貞行為を強く推測させる証拠になります。

 

私がドライブレコーダーを買ったとき、オートバックスの方に
「記録のゴミが溜まるので、月1回くらいはマイクロSDカードをフォーマットしてください」
と言われました。

 

その意味が、再生してみて初めて分かりました。

 

どうして再生することにしたのかというと、実は交通事故にあったからです。

 

私が止まっていた所に軽くぶつけられた物損で、相手も10対0の責任を認めてくれたのでドライブレコーダーが活躍する場面はありませんでした。

 

そして、後からマイクロSDカードを見てみると、走行経路はしっかりと動画がありましたが、肝心の衝突時の記録がありませんでした。

 

衝突がどうも軽すぎたようです。

 

良かったのか、悪かったのか・・・

 

何はともあれ、皆さんも交通事故にはお気を付け下さい。

 

 

「裁判手続で知っておきたいこと」の過去記事はこちらへどうぞ。

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カテゴリー: 裁判手続きで知っておきたいこと |

退職金は労働者の権利じゃない?

平昌オリンピックの男子フィギュアスケートで、羽生結弦選手が金メダル、宇野昌磨選手が銀メダルという素晴らしい結果を出しましたね。

 

リアルタイムでTVで観ると、こっちまでハラハラしてしまいます。

 

オリンピックの上位争いをする選手たちに同等の技術があるのは分かっていましたが、それを出し切るメンタルの強さも実力の大切な一部だと感じました。

 

さて、企業などで働いていると、給料(賃金)を毎月もらいますよね。

 

給料(賃金)とは「労働の対価」のことで、労働基準法支払義務が明確に定められています

 

これに対して、退職金については労働基準法は支払義務を定めていません。

 

ですから、退職金を請求するためには、働いている方(労働者)と企業(使用者)との間で何らかの取り決めがあることが必要です。

 

取り決めとは、例えば企業が就業規則や労働者との契約で退職金を支給すること、その金額の算定基準を定めていることを言います。

 

ですから、何の定めもない企業では、労働者は原則として退職金を請求できません。

 

「でも、前に辞めた先輩は退職金をもらっていたのに」

 

というケースもあるでしょう。

<Designed by いらすとや>

そのような場合に、果たして企業は他の労働者に退職金を支払わなければならないのでしょうか?

 

これが、例えば、その先輩が特別に会社に貢献したことを理由に退職金をもらっていたのであれば、別の人には支払わないことが前提でしょう。

 

この場合には、退職金を請求できません。

 

これに対して、それまで辞めていった先輩が全員、ほぼ同じ基準で退職金をもらっていることもあるでしょう。

 

例えば、「勤務年数×月額賃金給料」というような基準がほぼ当てはまれば、使用者と労働者の間で退職金支払の合意があったと見ることもできます。

 

つまり、退職金の支払が就業規則にも雇用契約にも定められていない場合には、退職金の支給金額が算定可能な程度に明確であることが必要ということです。

 

労働者側から言えば、退職金を請求できるかどうかは、前例の記録や基準がしっかりと証明できるかで判断することになります。

 

使用者側からすれば、全ての従業員に退職金を支払わないのであれば、「原則として退職金は支給しないが、その時の企業の経営状況が良いからこの従業員には支払う」など、個別性を明確にしておく必要があるでしょう。

 

いずれにせよ、退職金は賃金と違って労働者の権利ではないので、使用者も労働者も慎重に対応する必要があるでしょう。

 

 

労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 雇用と労働のお話 |

裁判官はココをみる

平昌オリンピックが始まりましたね。

 

最高気温が氷点下の中、頑張る選手達を見ていると人間の底力を感じます。

 

怪我や故障に気をつけて、最高のパフォーマンスを見せてくれることを期待しています。

 

さて、私たち個人や法人のような私人の間の紛争は、最終的には民事の裁判で解決します。

 

民事の裁判に関わったことがない方には、実際に裁判官がどこを見るのかは気になるところでしょう。

 

私も裁判官の仕事をやったことがないので推測するしかないのですが、今までの経験や裁判官が書いた本を読むといくつか重視しているポイントがあります。

 

今回は2つの重視するポイントについてお話しようかと思います。

 

まず、一つ目は「書面」です。

<Designed by いらすとや>

例えば、AがBさんに、「貸したお金200万円を返せ」という裁判を起こしたとしましょう。

 

このとき、Bさんが「確かに、お金はAさんから受け取ったけど、それはもらったもの(贈与)だ」と反論しました。

 

このとき、書面があるかどうかが最も大きく判決に影響を及ぼします。

 

例えば、パソコンで「確かにAからお金を借りました。B」と名前まで書いてあって、そこに認め印でもBさんの苗字の印鑑が入っていれば大きな証拠になります。

 

これに対して、書面がない場合には、Aさんの口座にBさんの名義で毎月1万円の入金がされていても、その200万円の借金返済の証拠とされないこともあります。

 

私たちの社会常識から見ると、ちょと不自然かもしれません。

 

全てをパソコンで作った書面など簡単に偽造できますし、貸金が紛争になっていた時期にたまたまBさんがAさんに1万円入金していたことを重視しないのもちょっと違和感がありますよね。

 

ただ、1万円の入金だけではいくら借りたのか分からず、200万円という金額を認定するのは難しいでしょう(当事者の主張する借金(贈与)の総額がほぼ200万円に一致していれば別ですが)。

 

民事の裁判では、刑事裁判と違って「絶対的な真実」の追求にはそれほど力をいれません。

 

その裁判手続の中でだけ通用する事実相対的な真実)を決めて、それを前提に当事者の紛争を図ろうとするのです。

 

つまり、他に違う考え方や真実があったとしても、紛争解決のためにはその裁判で認定できる事実から判断しようとするわけです。

 

そのためには、「人の言葉よりは、嘘が起きにくい書面を信用していこう」ということになります。

 

そのやり方が良いか悪いかは、私たちが民主主義に従って考えていくことですが、現在は、法律(民事訴訟法など)でそのような制度が定められているのでそれを前提にどう戦うかということになります。

 

では、裁判官が重視する二つめのポイントは何でしょう?

 

これは今のお話から見ると意外かもしれませんが、「当事者や証人の人となり」です。

<Designed by いらすとや>

書面重視と言った後で、人間重視というのも変に感じるかもしませんがそれは色々な裁判官の書いた本や私の経験から見て事実です。

 

ここで言う「人となり」というのは、貧富とか、社会的地位とかは関係ありません

 

裁判手続で見えてくるその人の人生のストーリーから、客観的に見える部分で判断します。

 

例えば、労働事件で未払残業代をCさんがD社に請求していたとしましょう。

 

タイムカードが見つからなかったので、Cさんの手帳や会社のパソコンのシャットダウンの時間の履歴から残業代を推測して請求しています。

 

ここで、手続がある程度進んで法廷で、当事者(原告・被告)や証人から話を聞くことになった(尋問手続)としましょう。

 

ここで、法廷で話をした内容はもちろん証拠になります。

 

ただ、それ以外にも裁判官が見ているポイントがあるようです。

 

例えば、証言するために法廷に出てきたD社の社長が、ピシッとした背広を着て、裁判官に対して落ち着いて冷静に答えられたとしましょう。

 

これに対して、Cさんは普段着を着てオドオドした態度で、裁判官への答えもしどろもどろです。

 

D社の社長は、法廷に入るときにもCさんに優しく「元気でやっているかね」と声をかけましたが、Cさんは全く無視です。

 

さて、皆さんはこれをどう見ますか?

 

裁判官の心証としては、おそらく残業代の請求権がある」という方向に傾くでしょう。

 

つまり、

① 内面を隠すようなキッチリとした背広

② 法廷に出てきても動じないD社の社長の肝の太さ

③ 法廷でアピールするかのような優しい声かけ

④ それに返事ができないCさんの態度

などからD社の社長とCさんの絶対的な力関係の差が感じられて、裁判官の判断の裏打ちするということです。

 

ここで、見られているのは尋問の内容だけではなく、法廷での姿を通してみた過去にD社でCさんが働いていたときの2人の関係性です。

 

これだけ説明すると「法廷で逆の演技をすればいい」と思う方もいるかもしれません。

 

ただ、先ほどお話したように、事前に「書面」も重視して見られているので、それはなかなか難しいでしょう。

 

法廷に当事者や証人が出る前には、弁護士から裁判所に合計数百枚にわたる主張や細かい字でびっしり書かれた証拠が出されています。

 

その主張の中で言っていたことや提出した証拠と矛盾しない言動を、法廷で演ずることはとても難しいと思います。

 

このように、客観的な書面などを踏まえて、法廷などで当事者や証人の「人となり」を見られるということなのです。

 

それを考えると、私たち弁護士の仕事も、法律的な主張を書面や口頭でするだけでなく、依頼者のプロデュース的なことも大切になるのでしょうね。

 

 

「裁判手続で知っておきたいこと」の過去記事はこちらへどうぞ。

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相続で所有者不明になる土地と私道

最近、全国で雪が積もる風景がTVで報道されていますね。

 

静岡市に住んでいると、まるで他の国の風景を見ているようです。

 

例年通り今年も一度も雪は積もらず、晴れの日が続いています。

 

私が生まれてから現在まで、静岡市内で雪が積もったのを見たのは2回だけなので、静岡市の子供たちはTVを観てうらやましがっていると思います。

 

静岡市の魅力を伝えるコピーとして「本州に沖縄があった!」などがいいかもと、しょうもないことを考えてしまいました。

 

さて、土地を売ったり、買ったりするときに、その土地に通じている道路の幅や所有者が誰かは気になりますよね。

 

土地があっても、出入りする道路がなければ土地を利用できません。

 

その道路、必ずしも公道とは限りません。

 

住宅街の道路には周囲の土地所有者が土地の一部を出し合って、共有にしている「私道」がよく見られます。

 

ですから、土地を売買するときには道路の所有者を確認して、土地の所有者が道路の持分を持っていれば、その持分も一緒に売買する必要があるのです。

 

ところが、最近、誰も住まなくなってしまった住宅が増えているという問題が起きています。

<Designed by いらすとや>

私の経験した事案でも、土地の所有者が亡くなって相続の登記がされないままでいるうちに数十年経過してしまったというケースがあります。

 

亡くなった所有者が世帯主でなかったため住民票(除票)の調査もできず、本籍地が分からないので戸籍事項の確認もできませんでした。

 

そのため、相続人が不明になり、その土地の所有者が不明のため、「共有の私道」の持分を持っている人も不明となります。

 

この場合、道路が「共有の私道」だとしても、その下には水道管など公共の設備が通っていたりして、周囲に住んでいる人にとっては生活のために必須の工事があったりします。

 

ところが、民法では共有物の管理や変更について制限を設けています。

 

共有物について

① 物理的に変更するような処分行為にあたる場合は「全員」の同意が必要

② 性質を変えない範囲での利用、改良「過半数」の同意で可能

③ 現状を維持するような保存行為「単独」で可能

と定めているのです。

 

そのため、道路工事をする場合は通常は①にあたるので、共有者全員の同意がないとできません。

<Designed by いらすとや>

そうすると、私道の共有者の1人でも不明になると水道工事ができないことになったりして、他の共有者の生活に悪影響が出てしまいます。

 

このような相続に伴って所有者不明となる土地・建物はこれからも増えていくでしょう。

 

そこで、先日、2月1日に、法務省は、所有者の一部が所在不明になっている共有の私道について、補修工事などが円滑にできるよう同意の取り付け範囲のガイドライン(指針)を出しました。

 

ガイドラインでは、
共有私道が陥没したため、穴をふさいで再舗装したい場合
私有の水道管を共有私道の下に埋設したい場合
などは共有者の1人の単独の判断で工事ができるとしています。

 

つまり、工事をしないと周囲の住んでいる人が困るケースについて、民法の「保存行為」にあたると公的な解釈の方針を示して、共有者の1人の同意で工事が出来るとしたのです。

 

もっとも、民法の従前の解釈では、共有私道を掘り返して水道管を埋設してしまうような行為は、全員の同意が必要な処分行為だと私は思います。

 

新たな紛争の種にならないことを祈ります。

 

また、所在不明の共有者の土地から木の枝が伸びて共有私道の通行の妨げになっている場合でも、他の全員の同意があっても勝手に枝を切ることはできないとしています。

 

実は、これも民法に定めがあって、木の枝については土地所有者に対して切除を請求はできるのですが、いくら邪魔でも勝手に切ることはできないのです。

 

これに対して、根が私道に伸びてきて私道の利用が損なわれるときには、勝手に切っても構いません。

 

これはお隣同士でも同じです。

 

お隣の木の枝が自分の土地に伸びてきていくら邪魔でも勝手に切除すると損害賠償請求される危険があります。

 

でも、伸びてきた根を切る分には勝手にやって構わないということです。

 

隣に植えた竹から自分の土地にタケノコが生えたので、切って食べてしまっても実は適法です。

 

竹は建物の基礎を壊すとも言われて嫌われているので、あまり住宅に植える人はいないとは思いますが・・・

 

いずれにせよ、相続によって所有者不明の土地が増えていくと多くの人が困るので、いずれ抜本的に法律で解決する必要があるのでしょうね。

 

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 相続のお話 |

「はれのひ」は詐欺にならないの?

先週の土曜日に、静岡駅ビルのパルシェで民法(債権分野)改正の研修会があったので行ってきました。

 

実際に改正民法が適用されるのは、東京オリンピック開催の年である2020年の4月からです。

 

皆さんの生活にも大きく関わってくることもあるので、また機会をみてお話していきたいと思います。

 

さて、着物販売レンタルの「はれのひ」が、先週の金曜日(26日)に破産申立をして、裁判所破産手続開始の決定が出されたと報道されています。

 

多くの人が、成人の日に何も言わずに行方をくらましたやり方に卑怯だとおもっているでしょう。

 

その点については、私も同感です。

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ただ、それが「詐欺」にあたるか?というと結構高いハードルがあります。

 

まず、この事件で「詐欺」として責任を追及したいという場合、法律的には2つの意味があります。

 

一つは、刑法に定めた詐欺罪として逮捕して犯罪として処罰して欲しいという意味です。

 

仮に詐欺罪にあたると、被害額が数千万になりますので、全額をお客さんに返金しない限り実刑(刑務所いき)でしょう。

 

二つ目は、破産手続開始決定がされたとしても、債務を免除する決定(免責)を認めないようにして欲しいという意味です。

 

破産法では、破産手続開始決定(1月26日)から1年以内に、明らかに破産するしかない状態なのに、経営が良いかのように顧客を欺してお金をとったような場合には裁判所が免責を認めません。

 

さて、「はれのひ」の社長がやったことは、詐欺罪になったり、破産手続で債務の免除が認められないのでしょうか?

 

まず、「詐欺」というためには、お店でお金を顧客から受け取る時点で、社長がどう見ても破産しかなく、破産したらお金を返せないことを認識しながら、各店舗の従業員に営業の指示を出していなければなりません。

 

しかし、報道で見ていくと、
最後の注文を受けて顧客からお金を受け取ったのは昨年12月中旬で、
破産(閉鎖)を決断したのは成人式の前の日の1月7日の18時~19時
と言っています。

 

これを「詐欺」に照らし合わせていくと、

→ 最後の顧客からお金を受け取るときには経営破綻までは認識していない

→ お金を受け取った時点では、晴れ着を渡せなくなるとは思っていなかっ
 た

→ 晴れ着を渡せると思ってお金を受け取った

→ 顧客を欺すつもり(詐欺行為・詐欺の故意)はなかった

ということになります。

 

そのため、昨年の12月中旬頃の経営を調べて、誰が見ても破産を前提にしていたはずという証拠がなければ、詐欺罪での立件は難しいのです。

 

そして、いくら莫大な債務を負っていたとしても、会社の資産の一部を売れば当面の資金はあったと主張されると、詐欺の証拠はないことになります。

 

もっとも、社長を詐欺だとして、刑罰を下したり、債務の免除(免責)しなかったからといって顧客が救われるわけではありません。

 

大切な成人の日を台無しにされてしまった事実は消えません。

 

でも社長を罰するより、顧客が支払った数十万円ものお金を返してもらったり、買った振り袖などを引き渡してもらうことの方が大切でしょう。

 

実は、破産手続で、このような消費者被害が出て返金などの問題が生じることはときどきあります。

 

静岡県では、富士ハウスというハウスメーカーが破産した時には、顧客1人あたり数千万円のお金が返ってこないという深刻な被害がでました。

 

その時には、弁護団の要請もあって、裁判所から選任された破産管財人が顧客をできるだけ救済できるような工夫をしました。

 

今回、これほど大きな問題となったのは、成人の日という一生に一度の日に振り袖などの晴れ着が来ないこと、そしてそれが当日まで分からなかったことが理由でしょう。

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それを考えれば、被害者に対して何らかの救済があると良いですね。

 

借金問題ご解決方法についてはこちらをご参照ください。

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相続で配偶者保護など大きな改正が

今週は大寒波が日本を襲うという天気予報が出ていますね。

 

静岡では考えられない最低気温マイナス3℃という週間予報がされているので、寒さが苦手な私は今から防寒対策を考えています。

 

東北や北海道の方から見ると「甘い!」と言われそうですが・・・

 

さて、今日、月曜日から始まる通常国会に、民法の相続の分野についての改正案が提出される予定と報道されています。

 

いくつかの新聞記事を読んでいると、重要な改正箇所については、今まで私たち実務家が疑問に思っていた点についても改良がされています。

 

改正案が成立するときには修正が入るでしょうが、大筋での方向は決まっているはずなので、その点について予備知識として考えてみました。

 

まず、配偶者を保護する方向性が打ち出されています。

 

その一つとして、配偶者の法定相続分を増やすことが検討されています。

 

今は、配偶者は遺言がなかった場合には、配偶者と子が相続したときに、配偶者は法定相続分として遺産の2分の1を相続します。

 

それを、結婚期間が長い配偶者について3分の2に増やすことが検討されています。

 

離婚する場合に配偶者に2分の1財産分与するのですから、相続する配偶者が3分の2相続するのは自然に思えますよね。

 

配偶者保護の二つ目として、「配偶者居住権」という権利を新設することが提案されています。

 

これは、親子の間で相続争いが起きてしまったときに、配偶者に夫(妻)と住んでいた自宅に居住する権利を与えるのが目的です。

 

そして、色々な理由で親と子の関係が上手くいっていない場合に、親が住んでいる家の相続の居住をめぐって問題がおきます。

 

例えば、夫婦に長男・長女がいる家庭で考えてみましょう。

 

父親が死亡したとき、母親と長男・長女との折り合いが悪く(母親が悪いか子供が悪いかは別として)、母親が住んでいる自宅を売却して金銭で分けたいと長男・長女が提案してきたとします。

 

ここで、母親(配偶者)が自宅を取得するためには、長男・長女に土地・建物の価値の2分の1に相当する金銭を支払うなどしなければなりません。

 

そこで、土地・建物お金にの価値が4,000万円と評価された場合には、母親(配偶者)は2,000万円を支払うことになります。

 

でも、母親(配偶者)は、自宅の土地・建物に修正住めれば良いだけで、売却してお金にかえたいとは思っていないことが多いですよね。

 

そこで、終生住むことができる配偶者居住権という権利を作って、その価値を例えば自宅の価値の40%に設定したとしましょう。

 

その場合、母親(配偶者)が子供たちに支払わなければならないお金は、

4,000万円×1/2×0.4=800万円

となるため、相続した金銭や母親(配偶者)の預金から支払うことをしやすくするということです。

 

もっとも、その場合、母親の年齢や健康状態によって配偶者居住権が消滅する時期が大きく変わるので、どう評価するかで争いになるかもしれません。

 

更に、配偶者保護として、結婚してから20年以上たった夫婦については、夫(妻)が配偶者に自宅生前贈与したり、遺言で「与える」と書いた場合には、それを遺産分割から外して配偶者のものにするという規定も提案されています。

 

そして、配偶者保護と同時に不公平だと考えられてきた相続人以外の親族による介護を無視する制度を変えていきます。

 

簡単に言うと、同居して義父母の介護に苦労したお嫁さんなどに金銭を請求する権利を与えようとするものです。

 

今までは、嫁いできた妻は、自分の日常生活を犠牲にして義父母を介護しても「あなたは他人だから」と相続で除外されてきました。

 

それを変えて、相続の中で介護の苦労を金銭で評価しようとするものです。

 

もっとも、デイサービスの利用状況によっても介護負担に差があったり、他の相続人から見ると「亡くなる直前まで元気でほとんど介護の苦労はしていない」という異論もありそうです。

 

「どういう場合に、いくらの金銭の請求ができるのか?」を一律に定めるのは難しそうです。

 

ここも、相続で新たな争点になるのかもしれません。

 

制度を変えた場合、むしろ争う部分が増えるのかもしれません。

 

でも、人はそれぞれ別々の生活をして死を迎えますので、相続のことを一律に法律で定めること自体が無理だと思います。

 

やはりそれぞれの家族の実態にあった公平な相続制度に変えていくことは必要なのでしょう。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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不倫が裁判で認められるには

寒くて乾燥する日々が続いていますね。

 

皆さんも、風邪などひかないように体をご自愛ください。

 

さて、不倫、法律用語で「不貞行為」が裁判で認められるにはどのような事実が必要でしょうか?

 

有名人で、一緒にホテルの部屋で一晩過ごしても「打合せしていただけ」というような説明がなされることがありますよね。

 

裁判では、このような反論は認められるのでしょうか?

 

ひとまず、裁判では不貞を被告側が争う場合には、ありとあらゆる主張をしていきます。

 

ですから、先ほどのような反論も珍しくありません。

 

というか、もっと凄い反論がされます。

 

例えば、妻が夫に「好きな人ができた」と言って自宅を出て行って、男性が住む家に自分用の部屋を作って同居しました。

 

当然、その男性と不貞行為があったと、夫はその男性に慰謝料請求をしますよね。

 

その裁判の被告の反論で、
妻が「好きな人」というのはその男性ではない
その男性は、妻と同居していたのではなく、一部屋を間借りさせただけ
という主張がありました。

 

日常生活ではなかなか無いやりとりだと思いますが、裁判では当然のようにこのような主張・反論が繰り返されます。

 

この事案では、裁判所はさすがに不貞行為の存在を認めました。

 

不貞が疑われているとき、男女が同じ部屋や同じ建物に2人だけで宿泊すれば基本的には不貞の推定は働くようです。

 

では、宿泊までいかない場合はどうでしょう?

 

夫が単身赴任で社宅に住むことになりました。

 

妻が、夫の高校の同級生の女性とメールが頻繁に行われていたので不審に思って調べたところ、夫の社宅で一緒に鍋料理を食べていたことが分かりました。

 

妻からすれば、単身赴任先の社宅で女性と2人で鍋料理を食べていれば、不倫があったと思うのが普通でしょう。

 

しかし、この裁判では不貞は認められませんでした。

 

高校の同級生だったことや、年齢が二人とも50才代だったこと、それ以外に具体的な証拠がないことなどが理由でしょう。

 

このとき、鍋料理を食べただけでなく、夫の社宅に一晩宿泊していれば、不貞が認められたと思います。

 

もっとも、いくら仲の良い男女の友人関係でも、結婚したら1対1で一方の部屋で料理など食べない方が良いことは確かでしょう。

 

疑いを晴らす手段がないので、いつまでの夫婦の溝になりかねませんので。

 

宿泊までいかなくても、良く不貞が認められるのはメールやLINEの内容からです。

 

ただ、連絡を取り合っていただけでは駄目ですが、メールやLINEの内容が普通の人が見れば、性交渉がなければ書かない内容ってありますよね。

 

裁判所が不貞行為を認定したメールやLINE内容としては、

「お休みchu」⇔「愛している」などのやりとり

「愛を受け止めて」⇔「奪いに行く」などのやりとり

「また、襲われちゃうかも?」⇔「襲いに行くよ。愛してるし」などのやりとり

などがあります(家庭の法と裁判(日本加除出版株式会社)・2017年10月号・大塚正之弁護士の引用判例を一部参照)。

 

裁判例を色々と見ていくと、週刊誌もビックリの下ネタ的な証拠も沢山ありますが、ここは一応上品なものだけを。

 

裁判官は「事実を確定して、そこから推測する」という思考方法をとります。

 

そのため、不貞にダイレクトにつながる事実を証明できる証拠が強いのです。

 

元同級生の男女が、男の部屋で鍋とつついていた(宿泊なし)という事実からは、ただの友達という可能性も否定できません。

 

でも、「お休みchu」「愛を受け止めて」「襲われちゃう」というメールやLINEのやりとりがなされていたらどうでしょう?

 

仮に、皆さんが性交渉のない相手に、そのような内容のメールを送信したとしましょう(そんなこと自体普通しませんが)。

 

その場合、相手からその内容を当然とした返信があるでしょうか?

 

仮に、相手が好意を持っていたとしても、一旦は慎重な返答が返ってくるのではないでしょうか?

 

ということで、LINEやメールは、その内容と相手からの返信で、関係の深さが証明しやすい証拠なのです。

 

不貞行為で訴訟を起こす前に、夫(妻)のスマホをチェックというのはもはや常識になっているかもしれません。

 

しかし、最新のiPhoneⅩのように顔認証ということになると、寝ている間にこっそり指で押させて指紋認証クリアという方法も難しくなっていきそうです。

 

怪しいと思っているときにスマホを顔認証に変えたらいよいよ後をつけるしかないかもしれません。

 

逆に、スマホを顔認証のモデルに変えるタイミングに注意しないと無用な疑いを夫(妻)にかけられてしまうかもしれませんので御注意を。

 

 

不倫と慰謝料」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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