高い教育費は遺産に戻すべき?

スギ花粉の量が多くなりましたね。

 

花粉症の私には厳しい季節です。

 

私がくしゃみをしていても風邪ではないので、ご相談者の方々は移ることはないのでご安心を。

 

さて、今回は相続における特別受益のお話です。

 

例えば、遺産を分けるときに兄弟姉妹の中に特別に高い教育費を親から払ってもらっていた人がいた場合、「特別受益」として教育費分を遺産に戻すよう請求できるでしょうか?

 

過去の裁判例を見ると、兄弟姉妹の間の教育費を比較して判断している事案が多いようです。

 

実際の事案で多額の教育費を認定しているものには、医科大学、歯科大学の教育費が多いようです。

犬のお医者さんのイラスト

例えば、A、Bの2人の子が相続人となっているとします。

 

その中のBの子(被相続人、つまり亡くなった人から見ると孫)3人に医科大学、歯科大学進学のための大学受験予備校、大学の入学金、寄付金、生活費等を支払った例があります。

 

この大阪高裁の事件では、これらを合計すると1億2,000万円程度の額となったそうです。

 

被相続人が孫のために支払ったとはいえ、実質的には子の扶養義務を負うBの支払うべき教育費が減っているのですからBの利益です。

 

そこで、Aは1億2,000万円を「特別受益だから遺産に戻せ」と請求しました。

 

大阪高裁では、そのうち4,300万円程度を特別受益として遺産に戻すよう決定しました。

 

ここでもAが受けていた贈与があったため、それをBが受けた利益と比較して教育費全額までは戻せとは言いませんでした。

 

実際、教育費についてはどれだけ不公平かを証明するのはけっこう大変ですよね。

 

兄弟姉妹間でも、大学が公立か私立か、親元か一人暮らしか、一人暮らしの場合には男性か女性かで普通は差が生ずるでしょう。

 

このような多くの家庭で見られるような差については「特別」な利益を教育費として受けていないので、特別受益とはいえません。

 

そのため、特別にお金がかかる大学として医科大学、歯科大学の教育費がやり玉に挙げられるのでしょう。

 

ひょっとしたら、今後ロースクール(法科大学院)も標的になってしまうかも?

 

裁判官は、ロースクールの学費がどの程度であれば高額とみるのか、個人的には興味があります。

 

今後、どこかで主張するかもしれないと心の準備だけはしておこうと思います。

 

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 相続のお話 |

金塊の取り戻し

せっかくの3連休ですが、静岡の今日は雨模様です。

 

驚くことに11日の月曜日に静岡市に雪予報が出ています。何故か最低気温は3度となっていますが・・・

 

さて、今月の初め頃に出た判決で、造幣局の職員(懲戒解雇されて今は元職員)が勤務先から金塊約15kgを盗んだ事件の判決が出ました。

 

私は、まず「造幣局にそんな金塊があるんだ!」と驚きました。

 

どうも、造幣局では、私たち一般国民からの依頼があると金などの貴金属の不純物を取り除いて純度を高くする仕事をしているようです。

 

そのため、お客さんに来てもらうように金塊を博物館コーナーで展示しているようです。

 

造幣局にはお客さんから預かった金塊と博物館コーナーで展示してある金塊があるということですね。

 

金塊なんか盗んでも普通はどうしたらいいのか分かりませんが、その職員は質入れしたそうです。

 

「金塊を質入れ・・・」

 

見るからに怪しそうです。質屋の人は不審に思わなかったのでしょうか?

 

質屋のお客さんは、何とかお金を借りようと色々なものを持ち込むでしょう。

 

身の回りの物、先祖代々相続してきた物、クレジットカードで買ったばかりの物、そして盗品も。

 

お客さんにいちいち「どこから手に入れたのですか?」なんて聞いていたら商売にならないでしょう。

 

判決では、質屋が金塊を質に受け取ったことは、善意無過失(お客が盗んだことを知らず、知らないことについて過失もないこと)だと認めました。

 

これを即時取得といって、ドロボウなどの無権利者から質入れを受けた場合でも質屋は権利を取得できます。

 

では、造幣局はその金塊を取り戻せないのでしょうか?

 

実は、「盗品」の場合には、即時取得にあたるときでも盗難から2年以内なら所有者が被害品を取り戻せるという規定が民法にあります。

 

ここで争いになりました。

 

元職員が行った犯罪は、窃盗なのか?横領なのか?

 

窃盗であれば、金塊は「盗品」ですから先ほどの例外規定が適用されます。まだ2年たっていないので、造幣局は金塊を取り戻せます。

 

しかし、横領となると「盗品」ではないので例外規定が適用されず、質屋の勝ちです。

 

そこで、窃盗横領かが争点となりました。

 

さいたま地方裁判所は、この金塊を「盗品」と認めて、造幣局に軍配を挙げました。

 

窃盗横領の違いって何でしょうか?

 

他人の物を持ち去った場合、占有が被害者にある場合には窃盗、占有が加害者にある場合には横領となります。

 

例えば、職員が私たちから精製するために預かった金塊を持ち去ったとします。

 

この場合、職員に造幣局が金塊の管理をする権限を与えていれば、職員に占有がありますからこれを持ち去る行為は横領になります。

 

横領した金塊は盗まれたものではありませんので「盗品」ではありません

 

しかし、今回、元職員が盗んだのは博物館コーナーで展示されていた金塊でした。

 

博物館は造幣局が訪問者に見せるために展示していて、もともと動かすことは予定していません。そのため、占有が職員にあるとは言えないでしょう。

 

そのため、職員が持ち出す行為を窃盗とみて、金塊を「盗品」と認定したのです。

 

しかし、盗んだ物か、横領した物かは、なにも知らないで質入れや売買で取得した人にとっては関係ないような気もしますね。

 

皆さんの感覚ではどうでしょうか?

 

 

「契約のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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相手に住所を知られずに調停はできるの?

最近、アマゾンのビデオで昔のドラマを見ています。

最近では、過去にヒットした「僕のヤバイ妻」というドラマを楽しんでみています。

そのドラマにも離婚届が出てくるシーンがありました。

見たところ、本物の離婚届の用紙を使っているようです。

さて、日本では夫婦で話し合って離婚届を市役所などに提出する協議離婚87.2%を占めています。

残りの12.8%が、家庭裁判所における調停離婚裁判離婚などになります。

そのうち、法律にくわしくなくても自分でやれる手続が離婚調停です。

この離婚調停は、夫婦では話し合いができない状態にあるときに、家庭裁判所の調停委員に間に入って解決を目指す手続です。

夫婦が話し合いをできない理由はさまざまですが、その一つにDV(家庭内暴力)があります。

多くは夫の妻に対する暴力であり、妻がは逃げるように別居に至ったケースが多いです。

ところが、家庭裁判所に申し立てる申立書には、自分の住所を書く欄があります。

そして、申立書の写しは相手(この場合には夫)に送られます

ここに正直に今住んでいる住所を書いてしまうと、夫が妻のところに来て、また暴力をふるわれるなど身体や生命の危険があります。

そこで、裁判所の手続においては、DVなど危険がある場合には、次のような住所を隠す手段が認められています。

① 申立書には別居前の住所(夫と同じ住所)を書く。

② 家庭裁判所に教えた連絡先については「非開示の希望に関する申出書」を提出する。

③ 調停申立を弁護士に依頼しているときには、連絡先は弁護士の事務所を書く。

このような対応により、安心して調停の申立ができるのですね。

また、調停が始まったときに、裁判所に提出した証拠、例えば源泉徴収票や給与明細書のコピーなどは相手も見たり、コピーしたりできるのが原則です。

そのため、住所や勤務先を知られたくないときには、勤務先の名前や住所が書かれている所をマジックなどで塗りつぶして提出する必要があります。

更には、調停日当日に、相手(夫)とばったり出くわすと、事件になってしまう可能性もあります。

そこで、「進行に関する照会回答書」(これは家庭裁判所でもらえます)に、顔を合わせないような配慮をして欲しいと書いて提出することで危険を回避できます。

また、家庭裁判所では、原則として対面で行う手続もありますので、その手続で顔を合わせてしまったのでは、精神的に参ってしまいます。

この場合には、事前に家庭裁判所に対面で手続を行うと、精神傷害、身体の不調の危険があことを診断書などを提出して説明します。

そうしておけば、当日、顔を合わせないで手続を勧めるように家庭裁判所も配慮してくれます。

本来は、調停手続でも双方の手続保障という意味で、夫婦の両方を公平に扱う必要があります。

しかし、DVなど特殊な場合には、片方にだけ秘匿を認めて、調停手続が安全に上手くいくようにしているのです。

また、明かなDVでなくても、相手と顔を合わせると精神的に不安定になってしまうような時には、家庭裁判所で状況に合わせて顔を合わせないなどの配慮をしてくれるようになっています。

不安があるときには、まず家庭裁判所の調停係に聞いてみるか、お近くの弁護士に無料相談されると良いと思います。

離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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自己破産と恩義

3連休の初日、どこかへ出かけられている方も多いと思います。

 

良い天気らしいので、旅行も楽しいでしょうし、家でゆっくりするのも快適ですね。

 

私は、ちょうど静岡でユーミン(松任谷由実)がコンサートをやるので、それを聞きに行く予定です。

 

さて、今回は借金の問題、特に自己破産のお話です。

 

借金が多額になってしまった場合には、以下の3つの方法により生活を立て直していきます。

① 利息をカットして、毎月の支払い額を減らせば返済が出来る人には、弁
 護士が各債権者と交渉して和解する任意整理

② 裁判所の決定により5分の1程度に借金を減らして無利息で支払う個人
 再生

③ 返済の予定が全くたたない人の生活再建のための自己破産

です。

 

自己破産をする場合、ご相談では「破産するとどうなるでしょうか?」という破産後のことについてのご質問が多いです。

 

確かに、破産の決定を裁判所がした場合に、自分の生活や財産はどうなるのかは大切です。

 

これに対して、弁護士破産申立の前の事情を気にします。

 

どうしてでしょうか?

 

それは、自己破産のご依頼を受けたのに、その目的を達成できないことを怖れるからです。

 

例えば、
自己破産の申立をしたのは良いけれど、結局、借金の免除がされないとか
破産決定後に、破産管財人という監督者から依頼者に支払を命じられたりとか
してしまうと、しっかりと依頼を果たせないことになるからです。

 

弁護士が気にすることの一つとして、ご依頼を受けた後やその直前に債権者に返済をしていないか?があります。

 

破産に至る原因は、ご相談者それぞれによって違います。

 

クレジットカードやキャッシングを普通にしているうちに、それに頼りすぎるようなケース。

 

病気・退職・残業が極端に減るなど、突然訪れるケース。

 

会社経営や個人事業をしていて、売り上げ不振や設備の過剰投資が引き金になるケース。

 

ただ、いずれの場合にも弁護士が破産申立前に気にする事情の一つとして、「一部の債権者にだけ返済していないか?」
があります。

 

そして、私が特に注意していることは

 身内や友人からの借入金を除外したり、返済していないか?

② 大切な取引先にだけ、買掛を返済していないか?

です。

 

確かに、恩義のある人に迷惑をかけたくないというのは、人として普通の感情です。

 

しかし、借金に苦しんで、全ての債権者への支払を続けることができなくなったとき(これを「支払不能」と言います)には、「債権者平等の原則」が働きます。

 

お金に余裕があるときであれば、どこの債権者にいくら支払うのかは約束の範囲内で自由にできます。

 

ところが、支払不能になったときには、全ての債権者に支払えないので、破産による配当で債権額の割合で返済するしかありません。

 

その意味で、支払不能になっった時点で、債務者の財産は、全ての債権者へへの支払の原資となるものと扱われます。

 

そんなときに、「迷惑をかけたくない」「これからお世話になるかもしれない」といった個人的な事情で、不平等な返済をすることは許されないのです。

 

そして、一部債権者への支払は、裁判所に破産申立をしてから大きな問題となるのです。

 

例えば、身内や一部の取引先にだけ、支払不能後に50万円を返済していたとしましょう。

 

このようなことをすると、まず、裁判所はその調査と回収の確認のため破産管財人という監督人をつけます。

 

そして、その破産管財人が、破産法の一定の条件を満たすと考えた場合には、返済した身内や取引先に50万円の返還を請求していきます。

 

任意に返還しない場合には訴訟を起こして行きます。

 

結局は、迷惑をかけたくないと思って返済したことで、もっと大きな迷惑をかけてしまうことになるのです。

 

これを見ていくと、借金の相談をされる方は、破産申立前に、「どこまでがセーフか?」ということを弁護士と十分に話し合っておく必要があります。

 

そういう意味では、
自己破産申立前に、どこまで破産手続の行く先を読めるか?
が破産申立をする弁護士にとって一番重要な能力かもしれません。

 

 

借金問題ご解決方法についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 借金のお話 |

相続税の節税のための養子縁組は有効?

11月も中旬になるのに、日中は暑いくらいの気候が続いています。

 

静岡だけでなく、全国的にもそうなのでしょうか。

 

突然寒くなりそうで、それだけ少し心配しています。

 

さて、養子縁組という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。

 

これは、本当の親子でない間柄の人と法律上の親子になる手続です。

 

養親からみた場合、全くの他人を養子にすることもできますし、長男の妻や孫のような親族を養子にすることもできます。

 

養子縁組が有効になるためには、民法により「縁組の意思」が必要とされています。

 

この「縁組の意思」とは、社会通念(常識)でみた場合に、実際の親子と同様の関係を作ろうとする意思を言います。

 

典型的なのは、養親、例えば祖父から見て、子が先になくなった場合に、孫を養育するために養子にする場合です。

 

ここでは、祖父は孫を親代わりに孫を育てていこうとしていますから、「縁組の意思」が認められることに問題ありません。

 

では、相続税の節税のために養子縁組をした場合はどうでしょうか?

 

相続税には基礎控除といって、財産の中から課税の対象から除かれる金額が定められています。

 

この基礎控除の額の計算は、
3,000万円+法定相続人の数×600万円
とされています。

 

つまり、法定相続人の数を増やせば基礎控除の額が大きくなるため、養子縁組をして養子という法定相続人の数を増やして節税することが考えられます。

 

もっとも、国税庁もそんなに甘くありません。

 

相続税の基礎控除をする場合には、①実子がいる場合には養子は1人まで、②実子がいない場合でも2人までしか法定相続人の数に入れることができません。

辛そうに納税する人のイラスト(男性)

なお、例外もありますので、その点は国税庁のホームページをご覧下さい。

 

この人数制限はあくまで税法上のもので、民法では別に養子の数に制限はありません

 

ですから、本当に縁組をする意思があれば養子の数が3人以上でも有効です。

 

日本ではあまり想定しにくいですが・・・

 

さて、ここで最高裁まで争われた事例があります。

 

分かりやすく、事例を少し変えてご説明しますね。

 

Aさんは、孫を養子にすれば相続税の基礎控除額が増えて節税になると税理士からアドバイスを受けました。

 

そこで長男Bの孫Cを養子にすることにしました。このことは長男B家族とAさんの弟夫婦だけの秘密にしておきました。

 

ここでAさんが死亡した場合、誰が怒るでしょうか?

 

そうです。長男Bの兄弟姉妹です。

 

兄弟姉妹からすれば、

①自分に黙って親が養子縁組をしていたこと、

②自分たちの相続分が減ること、

③自分の子供(孫)には養子縁組をしてくれなかった不公平

など怒る原因が満載です。

 

これに対して、Aさんや長男B夫婦から見ると、Aさんを扶養したり、同居でBの妻が苦労したりして、養子縁組は当然だと思うでしょう。

 

つまり、どこまで行っても平行線で理解しあうのは難しいです。

 

そこで、裁判になって最高裁まで争ったのです。

裁判所の建物のイラスト

そこでの争点は、AとCとの養子縁組は相続税の節税目的であり、通常の親子関係を作ろうとする意思がない(縁組の意思がない)のではないか?ということです。

 

確かに、縁組の意思がなければ養子縁組は無効です。

 

これに対して最高裁は、「節税目的と縁組の意思は併存し得る」として、この事案での養子縁組を有効としました。

 

ですから、「明らかに節税目的だけで、縁組の意思が認められない」という例外的な場合でなければ、養子縁組は有効とされることになります。

 

その判断は、養親と養子との関係、縁組から死亡までの期間など色々な要素が関係していきそうです。

 

長男Bの立場から見れば、AとCとの養子縁組をAができるだけ元気なうちにしておくことや、生前の交流を持っておくことが大切でしょう。

 

逆に、兄弟姉妹からすれば、必要に応じて戸籍を確認させてもらって、もし養子縁組がされていた場合には、自分の子供も公平に扱うよう求めてみるしかないでしょう。

 

この場合、養子が2人以上に増えてしまい節税にはなりませんが、兄弟姉妹の実質的な相続分を確保することができることになります。

 

もっとも、親が生きているうちに親族の間で戦略的に動くことは難しいでしょうから、そこに相続問題を生じる原因があるのでしょうね。

 

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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「お世話になります」と言わないワケ

季節は完全に秋になりましたね。

 

11月の初めは、静岡では大道芸ワールドカップで街は賑やかになります。

 

街中や港をブラブラしながら大道芸人のパフォーマンスを見ていくことは、楽しいものです。

 

さて、「お世話になります」という言葉。

 

社会人としては、「こんにちは」と変わらないただの挨拶ですよね。

 

私も数十年前になりますが、勤め人だったときにはどのような電話でも「お世話になります」と言っていた記憶があります。

挨拶をしているサラリーマンのイラスト<designed by いらすとや>

 

ところが、私たちの業界では、ちょっと使いにくい場面があります。

 

その場面とは、法曹同士が仕事で会話をするときです。

 

何故なら、法曹が仕事で相手の「お世話に」なることはないし、なってはいけないことも多いからです。

 

刑事弁護を例にすると一番分かりやすいと思います。

 

被疑者、被告人が無実を主張しているとき、弁護人が検察官に電話をかけたとき、どちらかが「お世話になります」というのは非常に違和感があります。

 

検察官の主張する事実を被疑者、被告人が認めている事件でも、やはり刑の重さで争うので、検察官から「お世話になります」という言葉を聞いた記憶は余り有りません。

 

もちろん、私も言いません。

 

それと同じ事が他のケースにも当てはまるのです。

 

弁護士裁判官関係も同じようなことが当てはまります。

 

裁判官は中立公正な立場で判断をするので、原告側の弁護士にも被告側の弁護士にも「お世話に」なる関係ではないですよね。

 

ですから、裁判官から「お世話になります」という言葉を聞いたことはほとんどありません。

 

私が司法修習生(研修生)の頃の指導教官から聞いた話で印象に残っていることがあります。

 

「裁判所にいるときには、裁判官は中立公正を保たなければならないから、弁護士に挨拶をしない方がいいという考えもあるんですよね。」

 

といいつつも、

 

「でも、私は、挨拶をしたから中立公正を疑われるとは思わないし、事件の判断には関係ないから、挨拶くらいはしてもいいと思っています。」

 

とのお話でした。

■<designed by いらすとや>

 

弁護士になりたての頃は、実際に事件で何度も当たっていても、裁判所では一切挨拶をしない裁判官もいました。

 

最近では、どちらかというと軽く挨拶をしてくれる裁判官の方が多数派のように感じます。

 

もっとも、挨拶の言葉は「こんにちは」「どうも」とかがほとんどで、やはり「お世話になります」という言葉はほとんど聞きません。

 

私も弁護士になりたての頃は、検察庁を除いては、むやみやたらと「お世話になります」を連発していた記憶があります(当時は、今よりはるかに検察は弁護士に敵対的だったので)。

 

途中から、何となく「お世話になります」が宙に浮いているような印象を受けたことから、場面によって使い分けるようにしました。

 

特に、裁判所の期日では、弁護士も誰の「お世話に」なってはいけないので、裁判官にも相手弁護士にも「こんにちは」と中立的な挨拶をするようにしています。

 

でも、世間では「お世話になります」って、別に本当にお世話をする意味で使ってはいませんよね。

 

直接、敵対的な当事者の方に電話をしたときにも、私が「こんにちは」というと「お世話になります」と応える方の方が多いように感じます。

 

さて、果たして「お世話になります」という言葉の意味にそこまでこだわる必要があるのか?

 

法曹だけが言葉にこだわりすぎているのか?

 

それは、皆さんが依頼した弁護士が、敵対相手の弁護士に「お世話になります」と挨拶をしたのを見たらどう感じるのかがヒントになりそうですね。

 

 

「弁護士のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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原野商法リターンズ

1日の中で熱くなったり、寒くなったり気温が急変するので体調を崩しやすいですね。

 

お体には十分気をつけてお過ごしください。

 

今回は、最近、復活している詐欺商法について、分かりやすくなるように小説風に書いてみました。

 

タイトルは原野商法(げんやしょうほう)と読みます。

 

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【原野商法リターンズ】

 

 玄関のチャイムが鳴った。横になってぼんやりとしていた勇蔵は重い腰を上げた。横目で時計を見ると針は午後2時30分頃を指している。今日は水曜日だったろうか?勇蔵は思いだしながらインターフォンに対応した。

 

 「突然のご訪問失礼いたします。実は、地方に土地を所有されている方のお宅を訪問しています。」

 

 勇蔵の鼓動が一瞬早くなった。苦い記憶がよみがえる。いつだったろう?不動産の値段が上がり続けた頃、電話で「必ず、高く売れる」とだまされて土地を買ったのは。

 

 勇蔵が買った静岡県の山中の土地は今でも売れなくて塩漬けになっている。負の遺産を息子や娘に残したくないと強い焦燥感に追われることもしばしばある。

 

 勇蔵は急いで玄関の戸を横に引いて開けた。

 

「私は、不動産の売買のお手伝いをする会社の鈴木と申します」

 

 玄関前に立っていた男は『株式会社●●不動産』という名刺を差し出した。上質な紙の上に明るい色のロゴが踊っている。年齢は30才くらいに見える。

名刺を渡している人のイラスト(男性)<designed by いらすとや>

 

(どこかで聞いたような名前の会社だ。大企業かもしれない。)

 

 勇蔵は思った。人と話しをするのは3日ぶりだった。前回は確か、訪問してくれた町内会長との雑談だった。

 

 山田勇蔵は今年で75才になる。妻に先立たれて一人暮らしは5年を経とうとしている。頼りにしている長男は転勤生活で1年に2回ほどしか会うことができない。

 

「インバウンドという言葉をご存じですか?」

 

 勇蔵は、毎朝欠かさず新聞を読んでいた。海外から日本への旅行者が日本国内で消費することで日本の経済が活性化していることをインバウンドと略称することも知っていた。

 

「海外の旅行者の消費と、私の土地とどう関係があるんですか」

 

 鈴木は朗らかにこたえた。

 

「さすがです。そのお年でインバウンドと言われてすぐに分かる方はなかなかいませんよ」

 

 勇蔵は退職前の仕事の時間が一瞬戻ったような気がした。社内でも人に仕事のことをよく教えていた。

 

 鈴木は続けた。

 

「今、旅行者だけでなく、中国の富裕層が日本の不動産を買っているのはご存じですか?」

 

 「ああ、便利な高層マンションの部屋を海外の人が投資のために買っているという話はよく聞きますよね」

 

 新聞記事のコラムに書いてあったことを勇蔵は覚えていた。

高層ビルのイラスト<designed by いらすとや>

 

 「そこまでご存じでしたか。そうなんです。海外の富裕層は、地価が上がっていることからマンションだけでなく、別荘地の土地にも手を出し始めたんです」

 

 「登記を見ると、別荘地に適切な土地を所有されている方のご住所が分かるので、本日、山田さまのお宅に訪問した次第です」

 

 そういうことだったか。そういえば地価が上昇傾向になったという記事も少し前に見た記憶がある。勇蔵は、山中の土地を売るのが急に惜しくなった。

 

 「そうすると、私の山の方の土地を買いたいということですか」

 

 「はい。今でしたら、100万円で当社が買取をさせていただきます。失礼ですが、この土地について売れないと言われたことはありませんか」

 

 勇蔵は、かけひきをしようと思った。俺の方が社会人経験は豊富だ。少し頭がさえてきたように思える。

 

 「いや、お宅のように買いたいといってくる業者さんは他にもいますよ」

 

 「まいりましたね。もう他社も動いているんですか。ウチだけだと思っていたのですが。上司から100万円までしか決裁権を与えられていないんですよ」

 

 「何かサービスを追加するくらいのことはできるんでしょう?そうじゃなきゃ営業なんて出来ないですからね」

 

 勇蔵は会社で営業をやったときのことを思いだした。まだ俺も現役でいけると、気分を良くした。

 


 鈴木は困ったような顔をして頭をクシャクシャとかいた。

 

 「本当に100万円までなんですよ。他の方法は・・・」
 鈴木は空を見上げながら少し沈黙した。

 

 「よし。こういうのはどうでしょう」

 

 「富裕層への売却は土地が広いほど価格も高くなります。今、山田様がもたれている静岡県の土地を100万円で購入して、更にもっと広い神奈川県の土地を山田様だけにお譲りします」

 

 「ただ、土地の広さが3倍になるので売買代金も300万円となってしまいます。山田様の土地をサービスで150万円で評価して、代金を150万円値引きいたします。」

<designed by いらすとや>

 

 勇蔵は頭で計算した。処分に困っていた土地を150万円で評価してもらって処分できる。その上で、本来300万円の土地を150万円で手に入れられる。ただ一つだけ確認しておかなければならない。

 

 「私は神奈川県の土地を買っても意味はないのですが」

 

 勇蔵の質問に、鈴木は胸をたたいて言った。

 

 「そこは、地価上昇とインバウンドの時代。私の会社が責任を持って売却の仲介をいたします。海外の富裕層に300万円以上で売れることは確実です。」

 

 「●●不動産をご信頼ください」

 

 「分かりました。ちょっと考えさせてください」

 

 勇蔵は一旦考えることにした。静岡県の土地のことは息子にも娘にも内緒だから相談できない。高く売れたら、自慢してやろう。

 

 勇蔵はパソコンを開いた。●●不動産のホームページを検索した。トップページには会社の理念や社長の挨拶が書かれている。東京の池袋の有名なビルに本社を置いており、創業して50年以上経っているようだ。

 

 勇蔵は、名刺を取り出して携帯電話のボタンを押した。

 

「鈴木さんのお電話でしょうか。先ほど話しをした山田ですが」

 

「山田さま!早速のお電話ありがとうございます」

 

 鈴木の暗く濁った笑いを勇蔵は知るよしもなかった。

 

【読者への小さな挑戦】

 鈴木が勇蔵を欺そうとした手法とどうして勇蔵が欺されてしまったのかについて、お時間があるかたはちょっと考えて下さい。

後書きに続きます。

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 ここから、解決編と解説を兼ねた後書きになります。

 

  土地の価格が永遠に上がり続けると信じられていた昭和40年~昭和50年頃に原野商法(げんやしょうほう)という消費者詐欺が流行しました。

<designed by いらすとや>

 これは、「土地は値上がりするから、転売すれば利益が必ず出る。」とウソを言われて、存在しない土地や売れない山中の土地を購入させる詐欺です。

 

 この詐欺に欺されて土地を買ってしまった方が、だんだん高齢化してきています。

 

 それに気づいた消費者詐欺グループが、最近になってこれをネタに欺そうとしており、実際に被害が出ています。

 

 原野商法の被害者が高齢になり、家族に話せなかったり、売り急いでいる心理と判断力の低下を狙った詐欺です。

 

 景気が良くなってきてから、土地の価格が都市部で上がってはいますが、地方都市では横ばいの所も多いです。

 

 また、生活圏の土地は売れますが、不便な山の方の土地が売れずにマイナスの資産となっているのは相変わらずです。

 

 ですから、山の方の不便な土地まで売れるようになっているわけではありません。

 

 そこをあたかも全ての土地が値上がりするかのように欺す原野商法が復活してきているのです。

 

 物語を読んで推測されたとおり、勇蔵さんが二次被害者です。つまり、昭和40年~50年頃に原野商法でだまされて買った土地を処分したくて、二度目の詐欺に引っかかってしまったのです。

 

 仮に静岡県の土地を処分できたとしても、結果的には150万円支払って、前よりも更に広くて価値のない神奈川県の土地を所有することになってしまいます。

 

 もちろん、民法や消費者契約法などで取り消すことはできますが、欺されたと気づいて代金の返還請求をするころには、詐欺グループは会社とオフィスごと消えています。

 

 裁判を起こして請求しても民事訴訟でのお金の回収はほぼ不可能です。

 

 ここで私が書いたのは一つのパターンに過ぎません。

 

 消費者詐欺をする連中は、色々な情報を取得して、高齢者の心理を逆手にとります。

 

 ちなみに、詐欺グループにある程度の技術者がいれば綺麗なホームページを作ってウソはいくらでも書けます。

 

 創業が古い廃業した会社の株式を安く買い取って社名変更すれば、好きな業種の創業50年の会社を作れます。

 

 その会社の名前で、例えば1年だけ高層ビルのオフィスを借りることも可能なので、郵便物や電話が繋がっても詐欺ではないと言い切れません。

 

 被害が出る可能性ですが、オレオレ詐欺などの特殊詐欺で欺されている被害者がいるので、原野商法の詐欺に欺される被害者が出る可能性も高いですよね。

 

 これを読まれた皆さんご自身だけでなく、皆さんのご両親や祖父母など周囲の高齢者の方に注意していただいて、二次被害を未然に防いでいただければ幸いです。

 

消費者被害の一般的なご説明についてはこちら

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カテゴリー: 消費者の被害 |

最強のカード

涼しくなりはじめて秋に入ったことを実感します。

 

全国の天気予報でみていると、静岡は最低気温も最高気温も1、2を争うくらいの高さなので、他の都道府県の方々はもっと秋を感じられているかもしれませんね。

 

さて、弁護士がご依頼を受けるときにどのようなことを意識するでしょうか?

 

弁護士によって重視する要素のバランスは違うとは思いますが、全員が意識することは

「この依頼者のニーズは何だろう?」

「それに応えられる仕事ができるだろうか?」

です。

 

そして、民事事件では依頼者のニーズは、結局は物やお金など経済的な価値のあるものにせざるを得ません。

 

人生においてお金に換えられないものは色々とあると思います。

 

典型的なのは人の命や体のことでしょう。

 

刑事訴訟では究極の「死刑」という選択がありますが、それでも亡くなった人が帰ってくるわけではありません。

 

また、民事訴訟では人の命についても「損害賠償請求」というお金の請求に代えるしかないのです。

請求書のイラスト<designed by いらすとや>

とすると、民事事件での依頼者のニーズは経済的な価値のあるものを取得することにとうしてもなってしまいます。

 

そのため、全ての弁護士は、お金や物を回収出来るか?を非常に重視します。

 

例えば、離婚で妻側から依頼された場合に、夫の収入や預貯金などの財産を把握する必要があります。

 

相手の財産を把握しないと、いくら判決をもらっても相手が支払わない場合に強制的に回収できないからです。

 

夫がサラリーマンの場合には、給与明細1枚あるだけで、収入だけでなく、財形貯蓄や会社での積立金を把握できます。

 

また、給料振込口座と別の銀行で大きな額の積立をしていることが少なく、仮にしている場合でも口座の取引履歴を分析すると予測がついたりします。

 

ところが、自営業の方の財産の調査は、苦労が多くなります。

 

確かに、事業に使っている口座は必ずあるはずなので提出を求めることはできますし、確定申告書などの資料で把握できる部分はあります。

 

しかし、プライベートの口座を複数持ったり、現金処理をしていて通帳に載らないお金があることが多いので、全て突き止めることが難しいのです。

 

それでも、業種ごとに調査方法はありますので、何とかして突き止めるようにします。これも弁護士の腕の差になりますね。

 

財産がなかったり、把握が難しい人は、たとえ裁判で敗訴判決をもらっても、サラリーマンとくらべて実際の回収が困難になります。

 

そのため、弁護士が相手の財産をつかみきれないで裁判をするときには、常に判決書がただの紙切れになるリスクを考えて動かなければなりません。

 

つまり、裁判では、サラリーマンよりも自営業の人の方が強いカードを持っていることになります。

 

弁護士は、依頼者のために何らかの財産を回収したいのです。

 

では、裁判における最強のカード」って何でしょう?

トランプのジョーカーイラスト<designed by いらすとや>

そうです。

 

「財産を何も持っていないこと」です。

 

例えば、

売買契約を解除して数千万円の代金の返還を裁判で請求した場合

離婚にあたって夫や妻から財産を請求された場合

借金のトラブルで債権者から取り立てられた場合

裁判で請求されても「判決がされても現実には払いようがありません」という切り札を持っているのです。

 

弁護士が、請求する側の代理人になったときには、依頼者の方から、裁判ってそんな意味がないものなのですか?と聞かれることもあります。

 

私も、財産がないから払わないですむというのは本当は良くないと思うのですが、民事訴訟では強制労働をさせて支払わせることは認められていません。

 

刑事事件では罰金を支払わないと、拘束されて「労役」という労働をさせられるのですが、刑事事件ほど厳密に真実を追求しない民事事件では難しいでしょう。

 

今後は、誠実な人が損をしない裁判制度になるよう改善していく必要があるでしょう。

 

裁判所も法律の要件だけで全て処理するのではなく、市民のニーズに応えていかないと、市民から避けられてしまうかもしれません。

 

今後、色々と改革の計画が組まれているようなので、より私たち市民や企業が使いやすくなるよう期待ですね。

 

 

「裁判手続で知っておきたいこと」の過去記事はこちらへどうぞ。

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カテゴリー: 裁判手続きで知っておきたいこと |

自転車の飲酒運転

日曜日に、静岡の運転免許センターに運転免許の更新にいってきました。

 

10年以上前に行ったときには古いコンクリの建物でしたが、新しくなっていてビックリしました。

 

 

 

 

 

 

 

せっかっく講習を受けたので色々と資料を読んでいたところ、自転車について少し分かったことがあったのでそのお話をしますね。

 

道路交通法では「車両等」と定義をして、一定の行動を禁止しています。

 

この場合、自転車道路交通法上軽「車両ですから自動車と同じように道路交通法を守らなければいけません。

 

例えば、信号を守ること、一時停止を守ること、酒酔い運転をしてはいけないことなどです。

 

私を含めて昔から自転車に乗っている人は、ここ数年になって自転車が自動車と同じように信号を渡るようになったり、規制が厳しくなったように感じていると思います。

 

これは法律が変わったのではなく、自転車で不幸な事故た起きたりして、社会が自転車にも厳しくなってきているということです。

自転車事故のイラスト<designed by いらすとや>

 

自転車もお酒を飲んで運転してはいけないと定められているのですが、罰則があるのは酒酔い運転で、酒気帯び運転については罰則がありません。

 

酒酔い運転酒気帯び運転違いはどこにあるのでしょうか?

 

酒酔い運転とは、酒に酔って正常な運転ができないおそれがある状態で自動車を運転することです。

 

これに対して、酒気帯び運転は科学的に分類され、呼気1リットルあたりのアルコール濃度が0.15mg以上の状態で自動車を運転することを言います。

 

通常は、酒酔い運転の方が大量にお酒を飲んでいて危険なので、重い処罰になります。

 

もっとも、極端にお酒が弱い人が、ちょっとお酒を飲んで気持ちが悪いまま自動車を制御できない場合は、酒気帯びではなくても酒酔い運転になることもあります。

 

このように酒酔い運転は「正常な運転ができないおそれ」を警察の検挙や裁判で判断するのが難しくなるため、明確に検査で分かる基準を入れるために酒気帯び運転という少し軽い犯罪類型をつくったのです。

 

呼気1リット中0.15mg以上かどうかは、検挙のその場でテストすることができてすぐに区別できます。

<designed by いらすとや>

自動車とちがって、自転車の場合には酒気帯び運転の罰則はないので、仮に呼気1リットルあたり0.15mg以上の状態で運転しても違法ですが罰せられることはありません。

 

ただ、それによってフラフラしてしまうと酒酔い運転として罰せられる可能性はあります。

 

実際の警察の運用では、自動車と同じ条文で処罰されることから、自転車にそのまま適用することは避けているようです。

 

現在では、事故さえ起こさなければ酒酔い運転でも素直に違反を認めれば注意と記録をする運用です。

 

ただし、このような危険な違反で警察官に注意されて記録された回数が3年以内に2回以上となると公安委員会から命令が来ます。

 

何の命令かというと、「自転車運転者講習を受けなさい」という命令です。

 

命令を受ければ講習を受ければ良いのですが、仕事が忙しいなどを理由に受講しないと5万円以下の罰金が科せられます。

 

というように、自転車では、違法になる場合や罰せられる場合、講習ですむ場合などが混じっているのでわかりにくくなっています。

 

もっとも、事故を起こしてしまった場合には、酒気帯びにあたる場合にはより過失が重くなりますので、自転車を引いて「歩行者」として帰るのが安全でしょうね。

 

交通事故の民事事件の基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 交通事故のお話 |

セクハラ・パワハラ保険

暑いのか涼しくなったのか良く分からない気候が続いていますね。

 

台風だけは警戒していますが、できるだけ人がいないところを通って欲しいものです。

 

さて、最近、「ハラスメント保険」というものがあるようです。

 

保険の名前からすると被害者になる従業員が加入するものにも見えますが、今急増しているのは企業側が加入する損害保険だそうです。

 

前年の同期から約1.58倍増加しているとの記事がありました。

 

保険の内容としては、従業員が上司などからセクシャルハラスメントパワーハラスメントを受けたとして損害賠償請求をしたときに、企業に代わって保険会社が支払うという形になります。

 

交通事故でいうと事故がリスクですが、今回の保険では、企業が所属する従業員(上司)のハラスメント行為をリスクと考えていることになります。

酔っ払って絡むおじさんのイラスト<designed by いらすとや>

 

セクハラやパワハラを証明できれば、被害者である従業員が損害賠償請求をすることができます。

 

この場合、加害者はセクハラやパワハラをした上司自身ですよね。

 

ただ、弁護士が依頼を受けて裁判を起こす場合には、上司だけでなく、会社に対しても損害賠償請求することが多いでしょう。

 

これも、会社の使用者責任とか、監督義務違反など一定の条件を充たせば法律的な根拠に基づくものです。

 

そして、セクハラやパワハラはそれによって生じた被害の程度によって金額が大きく変わります。

 

基本的には慰謝料の請求なので、日本の裁判では多額の金額にはならないことが多いのですが、仮に数十万円でも中小企業では資金繰りに影響しそうです。

 

そこで、企業としては、突然、「来月80万円支払え」というようなことになったときに、保険会社に払ってもらうというわけです。

 

保険会社への保険料は毎月決まっていますから、計算できないリスクを毎月の計算できる経費に変えるという発想ですね。

 

企業側からすれば、製造業に伴う事故のようにリスクが高いと言い切れないので、保険に入るかどうかは悩むところでしょう。

 

ただ、仮に企業が保険に入っているからといって、従業員がセクハラ・パワハラにより確実に損害賠償請求できるというものではありません。

 

裁判まで行くとすると証明が難しいという性質があります。

 

その理由は二つあります。

 

一つ目は、企業内のことなので証拠がない場合が多いことです。

 

同僚は勤務している以上証言してくれないでしょうし、言葉のニュアンスによってセクハラ行為・パワハラ行為の捉え方は大きく変わってしまいます。

 

暴言の録音データなど動かせない証拠があれば別ですが、客観的証拠が集めにくいので証明が難しい面があります。

<designed by いらすとや>

 

二つ目は、精神的被害になるため、その被害の程度を図る基準がないことです。

 

結局は、うつ状態になったとか、退職せざるを得なくなったという結果から証明するしかありません。

 

うつ状態の主張をする場合、仮に過去にうつ状態の病歴があると、会社の業務のせいではなく、もともとの性格から生じたと反論されます。

 

また、退職した場合でも、職場の人間関係が悪い場合には、もともと辞めるはずだったと反論されます。

 

いずれも、パワハラ・セクハラと被害との間の因果関係を争うものですが、よく争点になる部分でしょう。

 

企業としては、仕事はできるけれども厳しすぎる従業員がいるような場合はハラスメント保険への加入を検討しても良いかもしれません。

 

でも、ハラスメントが起きないような良好な職場環境作りが一番良いのでしょうね。

 

 

労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。

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