破産しても残せる財産とは?

弁護士の谷川です。

 

9月になるのに、まだ暑いですね。

 

今回は、破産の項目でも説明はしていますが、破産しても奪われないで

 

残すことができる財産についてご説明します。

 

そのような残すことができる財産のことを「自由財産」と呼びます。

 

その自由財産は、大きく分けると次の5つになります。

 

 99万円以下の現金

 民事執行法で「差押禁止財産」と言われているもの

 権利の性質上、差押えの対象とならない財産

 裁判所が自由財産として認めた財産

 破産管財人が管理の対象から外して法規した財産

 

このうちで注意しなければならないのは「現金」という言葉です。

 

言葉のとおり現ナマを指すので、預金は含みません。

 

残したい預金はで自由財産として裁判所に認めてもらう形となります。

 

の差押えが禁止されているのは、生活の維持のために必要なものや政策的な理由によるものなどがあります。

 

例えば、衣服、家具・家電、台所用品など生活に必須な物は差押えが禁止されているので、破産のときにもそのまま自由財産として確保できます。

 

また、公的年金・失業手当の給付請求権、中小企業退職金共済、小規模企業共済なども自由財産として確保できます。

 

そして、の例としては金額が確定していない慰謝料請求権があります。

 

これは、その人の精神的な痛みという性質上、第三者が介入すべきものではないので、自由財産とされています。

 

但し、慰謝料請求権が加害者との合意や裁判で、具体的に「●●円」と金額が確定している場合には、普通の債権と同じように扱われて自由財産とならない場合があることに注意が必要です。

 

 更には、預金や生命保険、火災保険、自動車保険など、どうしても解約したくない財産について、裁判所に申し立てて自由財産としてもらいます。

 

最後に、は破産管財人が不要と考えて放棄した財産です。

 

管財人が、お金に変えて債権者に配当する対象としては無価値だと考えた財産になるため、例えば解約の手数料の方が高くなってしまう預貯金、誰も買ってくれない山林や古い建物のような不動産などがあります。

 

これは、破産した方にとっても要らないものであることが多いのですが、管財人が放棄をすれば自由財産として戻ってくる形となります。

 

このように、何を自由財産として管財人や裁判所に申請するかは、なかなか難しいので、弁護士などの専門家と相談しながら決めていくと良いと思います。

Posted in 債務整理、自己破産、個人再生など借金問題のお話 |

寄与分の主張の工夫は

梅雨に入って、雨や曇の日が多いですね。

最近、私(谷川)は運動をかねて、低めの山に行くようになりました。

まずは日本平から始めました。

日本平は、静岡市の南に位置し、その山頂に続く丘には、静岡大学や静岡県立大学など様々な施設があります。

市内から車で行くとあっという間なのですが、歩くと距離感も違い、頂上では知らない観光地に行ったような気分になれました。

とはいえ、標高は307m……

人に話すときには「登山」とは言わず、「ハイキング」と言うようにしています。

 

さて、遺産分割調停を行うとき、認められにくくて苦労するものの一つに「寄与分」があります。

特別受益の場合、例えば亡くなった方(被相続人)から贈与を受けていたりすると、金銭の流れや書面などの証拠があったりすると認められることは珍しくありません。

ところが、寄与分の場合には、それを直接証明する証拠はないことが多く、また被相続人のために努力しても「特別の」寄与でないといけないため、苦労するのです。

少しでも、裁判所で認めて貰うためには、ただ「特別の寄与」と主張するよりは、実務上の類型を意識するという工夫がお勧めです。

一般には5つの類型に分けられるとされています。

 

1 家業従事型

 亡くなった方が、農業、漁業、製造業など事業をしているなどの自営の場合に、その業務を助けていた場合を言います。

 ただ、業務にふさわしい給与をもらっていたというような場合には「特別の寄与」にはあたりません。

 全くの無償とか、世間一般の給与と比べると著しく低いとかいう場合に、寄与分が認められることになります。

 

2 療養看護型

 亡くなった方のために、看護をしていた場合です。これは良く主張されます。

 ただ、これも「特別の寄与」でなければならないので、ある相続人が頑張って面倒を見たことにより、本来は支出されるはずだった介護などの費用の支払を免れたために、遺産が減らないで済んだというような関係が必要です。

 そのため、特に介護まで必須でない被相続人の生活を助けていただけでは、「特別の」寄与ではないとされてしまうのですね。

 

3 扶養型

 これも上の療養看護型と似ていて、相続人の一人が被相続人の生活の扶養をしていて、それをしなければ被相続人の遺産が減っていたというような場合に認められるものです。

 そのため、一緒に暮らしていたというだけでなく、毎月金銭を渡していたなどの事情が必要となります。

 ところが、家族の間だと振込ではなく、現金で不定期に渡していたりするので、その場合には証明のハードルが上がります。

 本当に助けていたのに、それが認められないと非常に歯がゆい思いをされるとは思います。

 ひょっとしたら、これからの未来では、PayPayなどの電子マネーで送金していれば、送金履歴が残るので証拠となっていくかも。

 

4 金銭などの出資型

 相続人が被相続人に、財産上の給付や利益を付与する場合です。

 ありそうな事案としては、子どもが、親の家屋の新築やリフォーム、借金の返済などのために金銭を援助するような場合です。

 これも、現金でやりとりしていると証拠がないという問題が起きるので、扶養型と違って領収書をもらいやすいケースでしょうから、これから援助する方はもらっておくことをお勧めします。

 

5 財産管理型

 これは相続人が、被相続人の財産を管理することで、その財産の維持などに寄与した場合を言います。

 例えば、被相続人の住んでいた建物につき倒壊の危険があったので解体したとか、被相続人の賃貸物件を管理して賃料(これは遺産になります)を確保していたなどです。

 

 いずれにせよ証拠を取得できるのは、被相続人が生きている間だけなので、もし証拠が少ないということであれば、上の5類型を意識して主張していく工夫をしてみると良いでしょう。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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遺留分侵害額請求書の書式

新年おめでとうございます。

 

本年もよろしくお願いいたします。

 

最近、相続に関する事件の割合が増えてきています。

 

多くは、自分の知らないうちに相続に関する手続を進められていて納得できない、という気持ちから始まることが多いです。

 

そのため、相続手続を主導する方は、他の相続人にあたる方々に、しっかりとプロセスとその理由を透明化して説明していくことが、紛争を防ぐ道だということになります。

 

それでも、遺言で相続人の一人だけに遺産が贈られてしまうと、よほど信頼関係か、何らかの補償がないとモヤモヤすることが多いでしょう。

 

その場合、相続人が兄弟姉妹でない限り、遺言でも奪えない取り分、つまり遺留分の請求が行われることとなります。

 

この請求には、①相続の開始及び②遺留分を侵害する事情知ってから1年間以内に請求しておかないと権利が消えてしまうという厳しい制限があります。

 

例えば、父親が亡くなって遺言書が書かれていたとすれば、①父親が死亡したこと、②父親の遺言書の内容が自分の遺留分すら残さないものであること、の二つを知ってから1年以内に権利行使をしなければならないのです。

 

は通常は知らないということはないでしょうが、については亡くなって相当経ってから知らされることもあります。

 

その時には、②から1年間は請求できるのですが、対立する場合に、「遺言の内容はもう知っていたはずだから1年以上経っている」という反論がされることがあります。

 

そのため、遺留分侵害額請求を行うのは、被相続人(先ほどの例では父親)が亡くなってから1年以内にするのが確実です。

 

その際には請求を行ったことを証拠として残すため、配達証明付きの内容証明郵便で行うことをお勧めします。

 

弁護士に依頼して代理人として通知してもらえば、その後の請求手続も全て任せられるので楽ではありますが、どの弁護士に依頼するか決めるのにも時間がかかります。

 

そのため、自分で遺留分侵害額請求書を送っておいた方が良い場合もあるでしょう。

 

そこで、皆さんがご自分で通知する場合のひな形を参考までに、以下に書いておきます。

 

もし、遺言書に書かれた遺言執行者(遺言の内容を実現する権限と責任を持つ者。例えば預金の解約や不動産の登記名義の変更を行う。)と請求する相手が同じだった場合には、どの程度の財産があるのかを照会すると遺留分侵害額の概算がわかります。

 

そのため、遺言執行者に対する財産の開示請求の文言も末尾に入れておきました。

 

作成しようと思われた方は作成するときのご参考に、逆に受け取った方は、どういう意味なのかのご参考になれば幸いです。

 

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通知書

令和〇年〇月〇日

静岡県静岡市葵区●●〇番〇号

〇〇〇〇殿

                    〒420-〇〇〇〇

静岡市葵区鷹匠〇-〇-〇        

                    甲 野 太 郎

 

拝啓

私の父親である(亡)●●●●(住所:静岡県静岡市駿河区●●〇番〇号、昭和〇〇年〇月〇日生、以下「被相続人」といいます。)の相続に関して、法定相続人としてご連絡します。

被相続人は、令和〇年〇月日付け公正証書遺言(静岡地方法務局所属 公証人 ●●●●、令和〇〇第〇〇号、以下「本件遺言書」といいます。)により、貴殿に対し、不動産、預貯金、有価証券その他の財産全部を相続させる旨の遺言をなし、令和〇年〇月〇日に亡くなりました。

 この本件遺言書の内容は私の遺留分を侵害するものであり、これを認めることはできません。従って、私は貴殿に対し、本通知書をもって、遺留分侵害額請求権を行使いたします(民法1046条)。

なお、遺言執行者には相続財産の目録を作成して遅滞なく相続人に交付する義務がある(1011条1項)ため、お手数ですが、令和〇年〇月〇日までに、私宛てに、前記財産目録及びその根拠となる資料をご送付いただきますようお願いいたします。

敬具

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遺産分割の話し合いは誰とする?

この3月一杯をもって、弁護士会の副会長の任務も終わり、一段落です。

 

弁護士になって初めて、数十年前のサラリーマン時代の異動の感覚を思い出しています。

 

さて、今回は遺産分割の始まりのときに注意すべきことをお話します。

 

遺産分割は亡くなった方の遺産について、話し合いで分ける手続です。

 

ですから、遺産分割の当事者各相続人となります。

 

当たり前のようですが、時々、その相続人が不明なことがあります。

 

よくあるのは、高齢の兄弟姉妹の間で相続が起きた場合です。

 

兄弟姉妹だけならお互いに存在を知っていそうですが、相続人が高齢の場合、亡くなられた方は戦前、昭和初期の生まれということも珍しくありません。

 

その頃は、今よりも社会が大ざっぱで、戸籍もいいかげん・・・というか、記載ミスがあったりします。

 

そして、「戸籍をさかのぼると異母兄弟姉妹がいた!」ということも時折あるのです。

 

例えば、父親が結婚しないである女性との間に子どもを設け(今でいう不倫ですね)、認知はしたけれど、妻や子には言わなかったというケースです。

 

これをしっかり調べないで遺産分割協議書を作ってしまうと、後で相続人全員の合意がないとして無効となりかねません。

 

弁護士は遺産分割事件をお引き受けした場合には、そのようなことがないように職務上請求という形で戸籍を調べることができます。

 

そして、相続人全員に連絡を取って、話し合いができるか打診することになります。

 

ときどき「いきなり弁護士から連絡があって、相続でお金が入った!」などという話を聞きます。

 

これは先ほどの異母兄弟姉妹の立場からは、そのように受け止められるということになります。

 

遺産分割の話ををする前に、立ち止まって、本当に相続人はこれで間違い無いかと確認することも大切ということですね。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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離婚や相続でもウェブ裁判の試行が始まりました

大雪の予報が最近ありますが、静岡市の市街地ではその気配すらありません。

 

もし、大雪になったら、私も全く慣れていないので、大きく混乱しそうですが。

 

さて、今の時点でも、契約に関することなどを扱う民事訴訟で、インターネットを使った裁判手続が始まっています。

 

私も数件ウェブ裁判をやっていますが、事務所からパソコン画面を通して裁判官、相手弁護士と議論ができるのは便利です。

 

特に、裁判官と次回期日までにどのような準備をするのか確認して、その内容をデータで共有できるのは裁判手続を早く進めるのに役に立つと思います。

 

まだ依頼者の方と一緒にウェブに参加したことはありませんが、遠くの裁判所に行かないで事務所で参加できるという点では、きっと便利でしょう。

 

もっとも、離婚調停遺産分割調停のような家庭裁判所で行われる事件については、一部は電話を使った手続があるものの、ウェブ手続までは行われていませんでした。

 

しかし、家事事件、特に調停こそ、広くウェブ裁判が必要だと思います。

 

例えば、夫の妻に対するDV事件では、夫が裁判所に出頭して、妻がインターネットを通じて弁護士の事務所から参加することで、恐怖を感じにくくなると思います。

 

また、遺産分割調停では、相続人が全国に散らばっていることも多く、それぞれが近くの弁護士に依頼すればウェブを使って調停に参加することができます。

 

2022年2月時点では、東京、大阪、名古屋、福岡での試験的な導入がされることが決まっており、そこで問題点を解消できれば、全国の裁判所で行うことになっています。

 

大きな問題とされているのは、

① 当事者以外の人が画面に見えないところから調停手続を聞いたり指示したりしていないかということです。

 

例えば、離婚調停で相手方の親がこっそり同席して指示を出すことが考えられます。

 

また、遺産分割調停では、相続人の夫や妻が、こっそり同席する危険もあります。

 

ウェブカメラで周囲を確認させるなどの方法をとっているようですが、確認後に死角から入るという可能性もあります。

 

例えば、ウェブカメラで確認するタイミングを、裁判所がランダム(無作為)に決めるなどして、そのような危険を防ぐなど工夫が必要でしょう。

 

次に言われているのは

② 録音・録画の危険です。

 

調停手続は録音・録画が禁止されており、だからこそ、当事者と調停委員が、その場で感じたこと、考えたことを率直に話し合えるのです。

 

それを、録音・録画されて「あの時にこう言った」と細かいところで衝突しだしたら、まとまる調停もまとまらなくなります。

 

そして、調停手続がSNSやYoutubeで世界中に配信されてしまったら、当事者のプライバシーや裁判所の守秘義務が意味のないものになりかねません。

 

使用するパソコンに録音・録画のアプリを入れたり、スマホを見えないこころに置いておけば簡単に録音・録画ができてしまうので、対策は難しいとは思います。

 

場合によっては、事前に説明と宣誓をさせた上で、破った場合には多額の罰金など刑事罰を入れて厳しく規制する方法も必要かもしれません。

 

ウェブ裁判は、利用者にとって便利である反面、利用者のプライバシーなど重要な利益を害する危険もあるため、手探りで初めて行くことになるのでしょうね。

 

「裁判手続で知っておきたいこと」の過去記事はこちらへどうぞ。

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Posted in 裁判手続きで知っておきたいこと |

新年おめでとうございます

新年、おめでとうございます。

所長の谷川です。

昨年も、新型コロナ感染の影響を考えて生活しなければならない1年でしたね。

ここを読まれている皆様の中にも、お辛い思いをされた方もいると思います。

今年こそは、コロナの問題が収束して、感染の心配なく動ける日が来ることを期待しています。

 

私の方は、昨年4月から静岡県弁護士会の副会長の任につき、忙しい1年ではありました。

しかし、弁護士会という組織全体のことを会長や他の役員の方々と議論していると、今までにない発想も多く、人としても弁護士としても有意義な経験でした。

今年の3月一杯で副会長の任期も終わるので、その経験を生かして、より一層、皆様のお役に立ちたいと思っております。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

「ご報告や雑感」のブログ過去記事についてはこちらへどうぞ。

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Posted in ご報告や雑感 |

ネットでの中傷対策は侮辱罪で

8月も終わりになりつつあっても、秋の気配はまだまだですね。

 

この地球温暖化が今のペースで続くと、100年たたないうちに気温上昇・熱波・気候激変・海水面の上昇などによって、地球は人が住めない星になるという記事を読みました。

 

予測の正確性は置いても、今の幼い子どもたちに良い未来を残していきたいものです。

 

さて、近年、インターネットの中傷による被害が相次いでいます。

 

中傷により死を選ぶという悲惨な事件が起きたり、心に大きな傷を負ったりするケースは確実に増えていると感じます。

 

かといって、どこかの国のようにインターネットの表現そのものに規制をかけたのでは、私たちが自由に表現したり、必要な情報を得ることが難しくなります。

 

そんな中、法務省は侮辱罪の厳罰化を法制審議会に諮問していくとのことです。

 

インターネットで人を悪く言うことについては、名誉毀損罪でも処罰されます。

 

ただ、ネットの場合、短文で投稿されることもあり、抽象的な批難、例えば「キモい」という言葉なども多いです。

 

この場合、具体的な事実を示していないので名誉毀損罪には該当しません。

 

そこで、そのような場合にも処罰できる「侮辱罪」という犯罪が定められているのですが、その刑罰は「拘留(30日未満)又は科料(1万円未満)」と非常に軽いです。

 

軽いが故に時効期間も短く、1年間となっています。

 

そのため、刑を「1年以下の懲役・禁錮」と「30万円の罰金」と重くして、時効期間も3年と長くなる改正案となっているようです。

 

このようなネットでの中傷は、被害者に対して、多数の人が攻撃的な侮辱をしているケースもあると思います。

 

その場合、共犯として扱うのか、一人一人単独犯として扱うのかは、おそらく事件の性質によるのでしょう。

 

多数の人の連続的な侮辱的投稿で被害者が大きな傷を負った場合には、立件はされそうです。

 

これを共犯として立件した場合、他の人の投稿をどれだけ読んで意思を共同していたか?という「共謀」の点は争いになりそうです。

 

刑事事件で加害者を特定できれば、被害者や遺族から刑罰とは別に、民事で損害賠償請求もやりやすくなるでしょう。

 

なお、この改正案のように刑罰による規制は、事後規制といって、表現行為を事前にはストップせず、表現した後での処罰となります。

 

その意味では表現に対する規制の程度は緩いものではあります。

 

もっとも、「侮辱」にあたるか否かというのは、表現の内容によって判断されるものですから、時の政府(警察)が介入し過ぎることにも問題はあります。

 

政策や与党に対する批判を警察が取り締まるようになったら、それはそれで危険でしょう。

 

処罰するには、単なる言葉だけでなく前後の文脈から解釈したり、加害者と被害者の関係性や被害の実質的な程度を見ながら検討する必要はあると思います。

 

その点では、個人の権利の対立を調整していく裁判所の役割が、更に大切になると言えますね。

 

インターネットと法律の過去記事はこちらをご参照ください。

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Posted in インターネットと法律 |

熱海市伊豆山での土砂災害等への支援

静岡県弁護士会からの被災者支援情報のお知らせです。

令和3年7月3日に発生した静岡県熱海市の伊豆山での土砂災害等により、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

静岡県弁護士会では以下の対応により被災者の皆様のお役に立つよう活動をしています。

 

1 YouTubeチャンネルでのご説明

以下をクリックして、YouTubeチャンネルを見ていただくと、今後利用できる可能性のある被災者支援制度や罹災証明書等について、重要なポイントをご説明しています。

https://youtu.be/TsOThc-cVdc

当会の災害支援のスペシャリストによる説明であるため、非常に参考になると思います。

 

2 土砂災害・浸水何でも無料電話相談

  令和3年7月5日(月)~

  電話受付:055-931-1848

  受付時間:平日 午前9時~17時(12時~13時を除く)
         ※ 土日祝日はお休みです。

※ 電話受付の後、担当の弁護士が、折り返しのお電話をして、相談に応じます。

 

3 熱海豪雨災害の現地での相談会(延長)

熱海市での豪雨災害についての相談会を延長して行います。

熱海市総合福祉センターにおいて,各専門家による生活なんでも相談会(無料相談)を行っています。

例えば

・り災証明書を申請したい。

・利用できる支援金はある?

・住まいの改修は?

・事業の経営が苦しい。

・生活の再建をどうしたらよいか分からない。

様々なお悩みに、建築、不動産、法律、税金その他各種専門家が、お話を伺います。

また、支援制度などの分かりやすい資料も配付しています。

日時:令和3年8月11日(水)~8月31日(火)の間(日祝休み)
   平日:午前9時~午後4時
   土曜日:午前9時~12時(午前中のみ)
   日祝日:お休み
   

場所:熱海市総合福祉センター3階(静岡県熱海市中央町1番26号)
   ※熱海市役所のすぐ裏手の建物となります。

相談料:無料です。

担当専門家:弁護士・司法書士・行政書士・建築士・税理士・公認会計士・
      不動産鑑定士・土地家屋調査士・社会保険労務士・技術士

主催:静岡県災害対策士業連絡会

※新型コロナウィルス感染防止のためマスクのご着用をお願いいたします。
 会場での検温・手指の消毒に、ご協力お願いいたします。

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法テラスを利用する条件

投稿を怠けている間に、梅雨入りしてしまいました。

 

とはいえ、夏日があったり、大雨があったりで季節感が狂いそうです。

 

さて、法テラスという名前を聞いたことがあるでしょうか?

 

正式には、日本司法支援センターという名前で、国が設立した法的トラブルの解決を助ける機関です。

 

法テラスという愛称は「法で社会を明るく照らしたい」「みんながくつろげる陽当たりのよいテラスのような場所にしたい」という理由でつけたとのことです。

 

民事事件での法テラスの大事な役割として、民事法律扶助という制度があります。

 

つまり、お金がなくて弁護士を依頼できない人のために、無利息で弁護士費用を貸してくれるという制度です。

 

借りた費用は、月々5000円を最低額として分割払いしていくことができます。

 

この法テラスを利用した場合、どの弁護士でも選べるわけではありません。

 

法テラスが決める費用は通常の弁護士費用よりも大分安いため、その安い費用でも引き受けるという弁護士だけが対応することになります。

 

弁護士は自由業ですから、法テラスへの登録をするかどうかも自由です。

 

そのため、法テラスを利用したいと考えている方は、

①弁護士を選べないことを前提に法テラスの法律相談を予約するか

②事前に訪問する法律事務所で法テラスに対応しているか確認する

必要があります(私の事務所の弁護士は全員対応しています。)。

 

これを聞くと、法テラスを利用すれば良いことばかりのように感じますが、難点はいくつかあります。

 

1つ目は、法テラスが定める条件が厳しいことです。

 

収入や資産が少ない人を助けるための機関ですから、それなりの収入や資産がある方は利用できません。

 

例えば、一人でアパートに住んでいる場合、静岡県では、ざっくりと22万3000円以下の手取りでなければなりません。

 

これは、賞与(ボーナス)も含んでの金額ですから、年間の手取り額が267万6000円以下であることが必要となります。

 

結婚している方の場合には基準額は上がりますが、配偶者の収入も考慮することになるので、条件はあまり変わりません。

 

これに対して、お子さんがいる場合には、扶養していることは確実なため、法テラスを利用できる可能性は大きくなります。

 

他にも考慮する条件は色々ありますが、ひとまずは、手取り収入が相当少ない方のための制度ということになります。

 

2つ目は、申請に給与明細書や源泉徴収票、世帯全員の住民票など提出書類が色々とあって、手続が大変なことです。

 

先ほどの、収入に関する条件(資力要件と呼んでいます)をチェックするためには、どうしても必要となるのですね。

 

3つ目は、弁護士と法テラスと依頼者の三者契約になるので、契約の内容が明確になる反面、依頼した弁護士と柔軟に契約内容を変えることができないことです。

 

ある事件を法テラスを通じて弁護士に依頼した場合、事件を進めて行くうちに追加で頼みたいことが起きたら、再度、法テラスへ申請する必要があります。

 

弁護士は法テラスが決めた以上の弁護士費用をもらってはいけないので、勝手に追加費用をいただいて柔軟に対応することはできません。

 

このような難点はあっても、預貯金がほとんどなくて、収入も本当に少ないけれど、借金や離婚など法的トラブルでお悩みの場合には有効な制度です。

 

法テラスと契約をしている弁護士を事前に調べて、直接、事務所に訪問すれば、一定の範囲の中で自分で弁護士を選ぶこともできます

 

法テラス静岡では、登録している弁護士の名簿を公開しているので、その名簿の中から選んで事務所に連絡すれば確実です。

 

他の地域でも同様のサービスがあるでしょうから、「法テラス+地名」で検索していただいて、事務所を選んで相談に行かれることも良いかと思います。

 

「日常生活の法律問題」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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特別養子縁組のあっせんは問題あり?

暖かい日が増えて、春の雰囲気が出てきましたね。

 

弁護士の谷川です。私の事務所の近くのお堀沿いの桜も花が咲き始めて、今週末あたりが満開になりそうです。

 

さて、最近のニュースで、特別養子縁組のあっせんを長年行ってきた民間団体が、突然の事業停止をしたことが報じられていました。

 

特別養子縁組とは、一般の養子縁組よりも様々な点で実子に近い取り扱いをしようとする制度です。

 

例えば、虐待を受けていたり、経済的な問題から、実の親と暮らせないことが生まれてから早い段階で分かっているケースが典型的と言われています。

 

例えば、養子の年齢が6才未満であることが必要であったり、戸籍の続柄に「養子」ではなく「長男」などと実子と同じ記載がされたりします。

 

実の親との法律的な関係も、養子縁組とともになくなるため、実の親を扶養する義務もなく、相続も生じません。

 

そのため、実の親からの援助がなくなる分、養親についても厳しく判断していきます。

 

養親のいずれかの年齢が25才以上であることが必要だったり、家庭裁判所がチェックをして許可をすることが必要だったりします。

 

このように、実子に近い制度であるため、養親の方も迎え入れるにあたって、愛情を注ぐ覚悟をしているでしょう。

 

実親ではなく養親であることを子どもに伝えるのか?

もし伝えるとしたら、子どもが何才になったときに話すべきか?

受け入れてからも大きな悩みはあろうかと思います。

 

子どもに養親であることを伝えたとき、子どもからは

① 自分の実親がどのような人か?

② どのような事情で特別養子縁組となったのか?

という質問は必ずあるでしょう。

 

は自分のルーツを知りたいという人の根本的な欲求でしょう。

また、も、やむを得ない事情があったことを確認したいという気持ちから知りたいと思うでしょう。

 

このような情報を一番多く握る立場にあるのが、実親と養親を繋いで特別養子縁組を成立させたあっせん団体です。

 

そのため、あっせん団体は、特別養子縁組後もサポートできる体制でなければなりません。

 

ところが、これまで法的な保護が不足していたため、様々な問題が起きていました。

 

今回の団体は、情報の管理が不十分だったり高額なあっせん手数料(230万円~270万円など)や寄付金名目で多額の現金を取得するなどの問題があったそうです。

 

そこで、行政指導だけでなく、養子縁組あっせん法を制定して、3年ほど前から規制が厳しくなっています。

 

特別養子縁組のあっせんは、人の幸福の手助けにもなりますが、一歩間違うと人身売買と同じことにもなりかねません。

 

これからも、法律や行政を通じて適切な制度を作っていって欲しいものです。

 

「日常生活の法律問題」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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