別居するときに子供を連れていってもいいの?

関東地方で梅雨が明けたという報道と、九州や関西での大雨被害の報道にギャップを感じます。

 

静岡でも天候不順で急に大雨が降ったかと思うと、太陽が出てきたりしているので日本全体の天候がおかしくなっているように思えます。

 

地球温暖化の影響があるのでしょうか。

 

さて、夫婦が離婚するときには、その前に別居することが多いです。

 

妻が出て行く場合もあれば、夫が出て行く場合もあります。

 

そのときに、勝手に子供を連れて行って良いのか?と悩むことが多いようです。

 

弁護士にアドバイスを求めれば、ほぼ「親権をとりたいのであれば、連れて行くべきです。」と答えるでしょう。

 

それ自体は正しいのですが、連れて出て行ったからといって親権がとれるわけではないことにも注意が必要です。

 

離婚後もどうしても子供と一緒に暮らしたい配偶者は、離婚にあたって親権を取得する必要があります。

 

そして、親権者を判断するにあたって、現在、子供と一緒に暮らしていることは大きな強みです。

 

なぜなら、裁判所で判断されるとき、「子供の生活環境を大きく変えて不安定にしたくない」という要素が入ってくるからです。

 

そのため、弁護士は家を出るときに子供を一緒に連れて行くことをすすめるというわけです。

<designed by いらすとや>

しかし、昨年、子供(保育園児)を連れて出て行った父親に対して、母親からの子の引き渡し請求を認める判決が出されました(東京高等裁判所)。

 

母親も離婚後に子供と一緒に暮らしたかったのでしょう。

 

母親から依頼を受けた弁護士は、離婚調停で話し合いをしたのでは、その間に父親との同居期間が増えて、子供の世話をしたという実績を作られてしまうと判断したのだと思います。

 

そこで、まず、子供を依頼者である母親の元に取り戻す裁判を考えたのでしょう。

 

子供を連れ出した日から28日目に裁判申立がなされている(弁護士が引き受けてからは数日しかなかったかもしれません)ので、緊急で資料を集めて申立をしたことがうかがわれます。

 

このように適切な手段を選択できるか?、事件の先を見て緊急性の程度を判断できるか?に弁護士の腕の差が出ると思います。

 

同業者からみると、この母親側の弁護士の腕が良いことが推測できます。

 

裁判所が、母親による子供の引き渡し請求を認めるか判断するにあたって主に検討した要素は次のとおりです。

 

① 同居中における子供との関わりの程度や養育態度

② 別居に至るにあたって子供の生活に配慮したか?

③ 別居後における子供の世話のしかたや生活環境

④ 子供が同居するのにどちらの親の方が子供の養育に適切か

 

まず、の点については、母親が専業主婦の間は母親が主に子供の世話をしていて、母親が仕事をするようになってからは、両親で協力して子供の世話をしていたと認定しました。

 

父親は、「母親が子供の前で自分に対して暴言を吐いたり暴力を振るったりしていた」と主張しましたが、証拠がないため認められませんでした。

 

やや、母親有利という感じですね。

 

次にの点については、夫婦に喧嘩が絶えないなかで、全く子供についての話し合いもなく子供を連れてアパート暮らしをしたことには問題があるとしています。

 

せめて、前から子供が行ったことがある実家に連れて行ったのであれば、生活の変化についてもそこまで問題視はされなかったでしょう。

 

父親が不利になってきました。

 

更にの点については、父親が子供と同居している間、虐待のような問題はありませんでしたが、近隣の住民から「たびたび子供の泣き声と男性の怒鳴り声が聞こえ、今日も聞こえる」という通報がありました。

 

児童相談所が実際に訪問しましたが、虐待の事実などは認められませんでした。

 

もっとも、児童相談所に通報されていたという事実だけでも、父親に大きなマイナスポイントがついたことが推測されます。

 

最後にの点では、父親には近くに子育てを手伝ってくれる親族がいなくて、離れた所にいる祖父もまだ働いていたので養育の援助は難しい情況でした。

 

これに対して、母親側の両親(子供からみると祖父母)は、子供との関係が良好であり、母親は裁判のときにはその両親のいる実家に戻っていたので、子供をひきとったら実家で両親と生活して、子供に適切な養育環境を用意できるとしました。

 

別居後の子供の生活環境としては、母親に軍配があがりますね。

 

その結果、裁判所は主に4つの要素を考慮して、子供の健全な生育のためには、母親とその実家で暮らすことが望ましいとして、母親からの子の引き渡し請求を認めたわけです。

<designed by いらすとや>

この裁判がある以上、離婚調停や離婚訴訟で戦っても父親が親権をとることは難しいでしょう。

 

つまり、離婚で親権を争う前に勝負はついてしまうということです。

 

事件の先読みができる弁護士かどうかは、依頼する方にとって大きな問題だということですね。

 

これは判断力・洞察力があるかということなので、法律相談でちょっとした日常会話をして弁護士の洞察力・判断力の程度を推測して選ぶのも一つの方法だと思います。

 

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

 

 

離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 離婚のお話 |

スポーツの怪我と犯罪

ロシア・ワールドカップ盛り上がっていますね。

 

私も日本代表を生中継のTVを見て応援していたため、寝不足の日があったりしました。

 

前回の優勝国ドイツが敗退したように、ホスト国以外で予選リーグを突破するのは、どの国にとっても非常に難しいでしょう。

 

素直に、西野監督や選手たちを讃えたいと思います。

 

さて、スポーツといえば怪我がつきものですよね。

 

野球やサッカー、更に言えばボクシングは怪我することが前提です。

 

でも、普通は人を怪我させたら犯罪です。

 

それが故意なら傷害罪過失なら業務上過失致傷罪になるはずです。

 

野球でデッドボールで怪我をさせたり、サッカーでイエローカードやレッドカードが出るようなプレーで怪我をさせたら、少なくとも過失致傷罪になりそうです。

 

しかし、そんなことを言っていたら激しいボディコンタクトを伴うスポーツが全くできなくなってしまいます。

 

ボクシングにいたっては、それ自体犯罪として禁止されてしまいますよね。

ボクシングの試合のイラスト
<designed by いらすとや>

 

そこで、刑法35条「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」という定めがあります。

 

スポーツに伴って予測できる範囲での怪我については、この刑法35条の「正当な業務」に含まれるため違法性が無く、犯罪とはならないのです。

 

例えば、アメリカンフットボールは激しいボディコンタクトを伴うスポーツですから、プレーでの怪我はつきものでしょう。

 

そのため、ゲームの性質や歴史からみてプレーに付随して起きうる怪我であれば、その怪我が非常に重かったり、不運にも亡くなってしまっても、そのきっかけを作った選手は業務上過失致死傷罪には問われません。

 

しかし、ゲームと関係のないところでの行為で怪我をさせた場合には「正当な業務」とはいえないため刑法35条が適用されずに犯罪が成立します。

 

例えば、日大アメフト部の事件の選手は明らかにプレーが切れたところで危険なタックルをしているので、「正当な業務」とはいえません。

 

そのため、傷害罪実行犯として犯罪が成立するのです。

 

もっとも、犯罪では実行犯が一番悪いと決めつけることはできません。

 

裏に事件の計画を作っていた首謀者がいるケースも多いからです。

部下を操る上司のイラスト
<designed by いらすとや>

 

日大アメフト部の事件では多くの方がそれを理解されていると思います。

 

刑法では、この首謀者を共同正犯という罪名で処罰します。

 

ここでは、怪我をさせることを監督が指示をしていることが証明できれば、「共同正犯」として監督を傷害罪で処罰できるでしょう。

 

もっとも、検察官が証明すべき事実は「監督と選手との間で、人に怪我をさせることの意思連絡」となり、この証明は相当厳しいといえます。

 

監督本人が指示を否定している上、共謀をしているところを撮影した動画などの客観的証拠もないようでは起訴はできないと思います。

 

傷害罪のような強行犯の場合には、最も処罰しやすい実行犯=選手を逮捕して責任を追及するのが通常です。

 

そして、この事件でも選手に「自分が試合に出たいという身勝手な動機で何の罪もない他の選手に不意打ち」したという責任がるという見方もできるでしょう。

 

ただ、この選手の自白から首謀者の可能性が高いとされている監督が処罰できないのに、選手だけ処罰することは社会の納得は得られないですよね。

 

また、今後の選手が立ち直る可能性も考えなければなりません。

 

全く犯罪と関係のないスポーツから、監督や周囲の圧力で学生が突然犯罪に関わってしまったという今回の事件は、他の学生でも起こりうるものだからです。

 

そして、人格が固まっていない年齢であることやこれから判断力を鍛えることができる学生であることから、深く反省して二度とやらないことはより強く期待できるでしょう。

 

その意味では、この選手に傷害罪が成立することは間違いないのですが、不起訴などの軽い処分をして今後の社会貢献に期待するという考え方にも一理あるとは思います。

 

せっかく爽やかなスポーツですから、できるだけ怪我をさせず、怪我をしないに越したことはありません。

 

ワールドカップでも日本代表の選手たちも、怪我なく、決勝トーナメントで感動できる試合をして欲しいですね。

 

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 刑事事件のお話 |

ウソとホントの間

暑くなってきましたね。

 

静岡では6月6日に梅雨入りしたと報道されていますが、雨よりも晴れの日の方が多いので実感がありません。

 

ひとまずは、暑くなっても、雨でも、「スギ花粉がないだけで快適だな」と思うようにしています。

 

さて、マンガやアニメで有名な名探偵コナンで
「真実はいつもひとつ」
という決めゼリフがありますよね。

 

では、人が事件を扱う場合に真実とウソに分けて考えられるのでしょうか。

 

私は、真実とウソの間に広いグレーゾーンがあると思っています。

 

裁判手続で考えてみましょう。

 

裁判所が認定する事実が、(仮に神様がいるとして)神様が見た事実と一致するのであれば、真実は一つと言えるでしょう。

 

しかし、裁判とは、人が人を裁くという性質のものです。

 

そして、裁判手続では明白な証拠は少なく、判決を下す多くの場合には法廷で当事者や証人の話を代理人弁護士や裁判官が聞く機会(尋問手続)を設けます。

 

神様から見た真実を人が追求する場合には、証人には真実を話してもらわなければなりません。

 

でも、この尋問手続きで、多くの裁判官は、当事者や証人に対して
「真実を話して下さい」
とは言いません。

「真実」のイラスト文字
<designed by いらすとや>

 

「記憶に従って、正確に話して下さい」
と言う場合が多いのです。

 

どうしてでしょうか?

 

これを、証人が法廷で話すことを材料に考えていきましょう。

 

証人が事件に関わってから証言するまでには、以下の過程をたどります。

 

① 見たり聴いたりする
     ↓
② それを記憶して証言の時まで保持する
     ↓
③ 保持した記憶から法廷で言葉で再現する

 

法廷で意図的にウソをつく人は、このの所で、記憶と異なる証言をしているということです。

嘘つきのイラスト
<designed by いらすとや>

 

そのため、「ウソをつかないように」という警告は、「記憶に従って正確に」という言葉になるのです。

 

しかし、真実と違うことを法廷で話してしまうのは、意図的にウソをつく場合に限りません。

 

まず、の段階で見間違い、聞き間違いがありえます。

 

その結果、結果的に法廷で事実と異なることを話してしまうことがあります。

 

次に、の段階で記憶が薄れたり、自分の価値観やものの見方により記憶が偏ることが誰にでもあります。

 

そうなると、当然法廷で証言するときには、本人も意識せずに事件当時に現実に見たことや聞いたこととはずいぶん内容が異なることを話すことになります。

 

更には、自分が記憶したことを、相手の質問や聞きたいことを考慮して、上手に言葉にできる人と苦手な人がありますよね。

 

また、緊張すると、記憶していたこととズレたことを話してしまうことも珍しくありません。

 

つまり、を適切に行えない場合です。

 

ここの部分は、代理人弁護士が、裁判で実際に苦労するところです。

 

事件を引き受けた数年前から一貫して同じことを強く言い続けていて、代理人としても真実だろうと思っていたことを、不利益にもとられかねない微妙なニュアンスで法廷で話してしまうことがあります。

 

 

もし真実と違うことを言ったら、神様が怒る「真実の口」※のようなシステムがあれば、間違いはおきにくいのかもしれません。

真実の口のイラスト
<designed by いらすとや>
※ローマにある石の彫刻。偽りの心で口に手を入れると噛みきられるなどの伝説がある。

 

でも、見間違い、記憶違い、説明下手、緊張が理由で真実と異なることを話してしまっても手を噛みきられてしまうのでは、誰も証言したくないですよね。

 

事件を人が扱う以上、
「人が認識できる真実はひとつとは限らない」
という方が正確かもしれないと思っています。

 

 

「裁判手続で知っておきたいこと」の過去記事はこちらへどうぞ。

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遺言書だけでは足りないかも

先日、5月26日の土曜日に、御前崎港のかつお祭りに行ってきました。

御前崎付近には御前崎港や地頭方港など、美味しい魚が水揚げされるので、イベントもにぎやかでした。

 

大漁旗が盛大に吊されている中に、鰹1尾ごと売っていて、頭をおとしてくれる場所もありました。

さすがに1尾を買っては食べきれないので、切り身を買っていただきました。

 

厚みがあるのに、歯ごたえは柔らかくてとても美味しかったです。

 

さて、今回は相続のお話です。

 

最近では、公正証書遺言を作る方も増えてきています。

 

民法は、自分の財産は自分の意思で自由に管理したり処分したりできるという原則(私的自治の原則)を採用しています。

 

ですから、遺言で自分が亡くなった後の財産の処分を定めれば、民法が定めている法定相続分に優先します。

 

そして、遺言とともに知識も広まっているのが遺留分

 

遺言をもってしても奪えない相続人の取り分です。

 

これは、
配偶者や子供の場合には本来の法定相続分の2分の1で、
親や祖父母が相続人のときには、本来の法定相続分の3分の1
となります。

 

例えば、妻Bと2人の子供C、Dがいる男性Aが、妻Bに全て渡すという遺言を書いたとします。

 

夫       妻
A=======B
    |
    |
    |
 --------
 |          |
 |          |
 C---E      D
   |
   |
   F

 

その場合、子供C、Dの遺留分は本来の法定相続分である4分の1の半分の8分の1ずつということになります。

 

さて、このとき妻Bと子CはAと一緒に暮らしていて、Dとの関係は余り良くなかったとしましょう。

遺産争いのイラスト<designed by いらすとや>

 

この場合、夫であり父であるAの財産が多額だったり、不動産が主だったりすると、Dに遺留分にあたる8分の1を金銭で分けることが難しいかもしれません。

 

そこで、Bがとるべき戦略として使われるのが養子縁組です。

 

養子縁組とは、市役所などに養親になる人と養子になる人が署名をして養子縁組届を出すことで成立します。

 

この養子縁組で出来た親子関係を「法定血族」と呼んで、実際の血の繋がった自然血族の子と全く同じように相続でも扱われます

 

事例で考えてみましょう。

 

例えば、Cが結婚していて妻Eと子供Fがいたとしましす。

 

ここで、BがEとFとを自分の養子にするという対策をここでは取ることになります。

 

これにより、Dの遺留分を削れるわけです。

 

子供の遺留分は簡単な式にすると

遺産の額×1/2÷子供の数×1/2

となります。

 

そのため、子供の数が増えると自動的に他の子の遺留分が減る関係になるのです。

 

今回の事例でも、EとFが養子縁組をしていないときには、子供の数は2人でしたからDの遺留分は8分の1でした。

 

ここに、EとFという養子が2人増えたことで、Dの遺留分は

1/2÷4×1/2=1/16

つまり16分の1となります。

 

遺産が多額な場合、渡したくない遺留分を半分に減らせるということは大きな魅力です。

 

もっとも、Dからしてみたら、自分の遺留分を削るためだけの養子縁組だとすれば文句を言いたいことでしょう。

 

実際、養子縁組は遺留分を減らすためだけにしたのでは無効で、実質的な親子関係を築く意思が養親と養子の両方になければいけません。

 

もっとも、遺留分を減らすためだったのか?それとも、本当に親子関係を築くつもりだったのか?は意思の問題のため証明が簡単ではありません。

 

裁判になったときには、例えば
縁組した相手が身内か全く知らない人か?
縁組が死亡直前ではなかったか?
縁組のときに養親(事例ではA)の判断能力に問題はなかったか?
養子縁組をした人数が多すぎないか?
など客観的な事情から判断していくことになるでしょう。

 

なお、これは相続する権利のお話で、相続税の節税と考えたときには、また別の制約がありますので、そのあたりは税理士にご相談ください。

 

いずれにせよ余り露骨な相続対策をしてしまうと、法律でも認められないということですね。

 

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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宴会で暴行があると会社に責任が?

暖かい、というか暑くなってきましたね。

 

5月といえば初鰹。

 

漁港で有名な焼津(やいづ)で「春の鰹三昧」というイベントが行われています。

 

県外の方もご覧いただいているようなので、JR焼津駅の位置関係を説明すると、新幹線が停まるJR静岡駅から東海道本線で西に3駅(約12分)です。

 

静岡からは近いので、先日、私も行って鰹づくしのランチを食べてきました。

焼津駅の近くでも色々な店が開いているので、鰹が好きな方はよかったら。

 

なお、鰹三昧メニューは、1日の食数に限りがあるそうなので、早い時間帯に行かれることをお勧めします。

 

さて、今年の1月に東京地裁で、会社の忘年会で従業員Aが、他の従業員Bを殴る蹴るなどして肋骨を折るなどのケガをさせた事件について判決が出ました。

 

当然、Aは傷害罪になりますし、Bに対してケガをさせたことについて損害賠償責任を負います。

 

ここで、問題になったのは、Bが会社にも損害賠償請求をしたことです。

 

民法では「使用者責任」といって、従業員が業務に関連して第三者に損害を与えた場合には、その従業員だけでなく会社や個人事業主(使用者)も被害者に対して直接、損害賠償の責任を負うことが定められています。

 

過去の裁判であった典型的な事件としては、

①会社の自動車で営業をしているときに交通事故を起こしてしまった場合

②業務でフォークリフトを運転していて同僚を跳ねてしまった場合

などがあります。

 

どうして使用者が責任を負うのかという主な理由としては、

① 大きな事故になった場合に、加害者に損害賠償できるだけの資産がないと被害者が賠償を受けられないので、それを救済する必要があること

② 使用者は従業員を使って利益を上げているのだから、その業務に伴って人に被害を生じた場合には使用者も責任を負うべきこと

があげられます。

 

そして、この使用者責任には「事業の執行について」という要件がありますから、宴会が会社の事業の執行と言えるのかは問題になります。

忘年会のイラスト「サラリーマンの飲み会」

<designed by いらすとや>

 

従来から、裁判例では、この「事業の執行について」という要件を厳密に業務に限定せず、使用者(会社)の活動が社会的に広げられたと認められるものを含めています。

 

例えば、会社の自動車を自由に運転できる従業員が、その自動車を勤務時間外に私用で運転して事故を起こしても、会社に責任を認めているのです。

 

かといって、純粋なプライベートまで会社の責任としたのでは、会社は怖くて従業員を雇えません。

 

そこで、「事業の執行について」の範囲を適切に決める必要が出てくるのです。

 

今回の東京地裁の判決は、ギリギリの事案だと思われます。

 

会社の忘年会で起きた事件だったのですが、一次会ではなく、二次会で起きたのものです。

 

二次会で、従業員AがBに仕事ぶりを注意したところ、Bが「めんどくせえ」と言ったところから、Aが怒ってBに暴行をしてしまいました。

 

このような二次会での従業員同士のトラブルに会社が責任を負うのは重いように感じますが、この事件には特殊性がありました。

 

従業員Bは、上司から念を押されて全員出席と聞いて忘年会に出席することにしたこと、そして、一次会が、深夜から開かれ、二次会が電車がなくなった午前2時30分から開かれたことです。

 

一次会は、会社の上司が段取りをつけるということで会社の懇親会という性質を持っています。

 

そして、一次会の開始が遅くて、終電が無い時間に終わった場合、自力で帰ることは難しいことも多いでしょう。

終電を逃したサラリーマンのイラスト

<designed by いらすとや>

 

もっとも、一次会でタクシーなどで帰った従業員がいれば、二次会は自由参加ということになりそうですが、この事案では二次会も全員参加だったようです。

 

この二次会の「全員参加」というのがたまたまそうなったのか、半強制的な雰囲気だったのかは、争いになりそうなポイントです。

 

会社側からすれば、従業員が仕事上でのミスで損害を生じるのであれば予測できますが、従業員同士のトラブルは予測しにくいでしょうね。

 

ただ、歓送迎会、忘年会など会社が企画する懇親会の性質を持つ場合には、そこでの従業員の行動についても監督義務があると見られることが多いようです。

 

最高裁では歓送迎会から職場に戻る途中に交通事故死をした場合に、業務上の災害と認めています。

 

これらから考えると、会社や個人事業主の方(使用者)としては、歓送迎会や忘年会など懇親会の性質をもつ飲み会を一次会にしっかりと区切るよう注意すべきことになります。

 

被害者側だったら、加害者が会社の懇親会で飲んでいたかどうかは、損害賠償請求をするにあたっては、とても重要な事実になってきます。

 

もちろん、こんなトラブルなど起きず、お酒を飲むときには楽しく飲んで、安全に帰宅するのが従業員も会社もハッピーなのは間違いないでしょうね。

 

 

労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。

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因果関係で逃げる

今年の2月に水俣病を描いた名著「苦界浄土」の著者である石牟礼道子氏が亡くなったということで、改めて読み直す機会がありました。

 

皆さんも、水俣病(熊本県水俣市)と言えば、日本四大公害被害の一つとしてご存じでしょう。

 

つまり、現在では

工場が港に高濃度の有機水銀を排出
       ↓
魚介類や海藻類が有機水銀を吸収して蓄積
       ↓
この魚介・海藻類を食べた人の身体に有機水銀が蓄積
       ↓
脳や重要な臓器に重大な障害が出て人が水俣病で死亡・後遺症発症

という関係は当たり前の知識として教えられているわけです。

工場のイラスト<designed by いらすとや>

 

当時の昭和30年代には、医学・科学の研究が今ほど進んでいないこともあって、企業側はこのような関係=因果関係を認めようとせず、被害が止まりませんでした。

 

きっと、裁判を起こしたとしても、因果関係が認められることは当時では難しかったと思います。

 

訴えを起こす原告側の代理人になった弁護士からすると、この「因果関係」というのは大きなハードルになります。

 

「因果関係」とは、簡単に言うと、社会生活上の経験からみると、通常その行為からその結果が発生することが相当だとみられる関係をいいます。

 

そして、その判断はあくまで法的な判断のため、医学・科学の知識を補助的に使ったとしても、最終的には裁判所の判断に委ねられることになります。

 

ですから、原告側の弁護士は、裁判官に因果関係をみとめてもらうために様々な証拠を提出していくことになります。

 

これに対して、被告側の弁護士は「その程度の証拠では社会経験上から見ても関連性はない」と因果関係を争います。

 

被告側の弁護士になると、裁判に専門的知識が必要だったり、内容が複雑になればなるほど、「因果関係がない」という所を強く主張するようになります。

 

なぜなら、原告の証明が難しい上、裁判官にも因果関係を認めるには心理的ハードルがあると考えているからです。

 

判決を出す以上、民事事件であっても可能な限り真実に近く、先例として意味のあるものにしなければいけません。

 

ですから、判断するときに法律以外の知識が必要であればあるほど、裁判官は頭を悩ますことになります。

 

例えば、水俣病の因果関係の判断には医学・化学の知識が必須なのに、その専門家でない人が判断するのですから、ハードルが低いわけがありません。

 

それを見越して、被告側の弁護士は「因果関係に逃げる」という手法を取るということになります。

 

もちろん、言いがかりのように全く因果関係が認められないものは論外ですが、裁判になる以上微妙なものが多いのも確かです。

 

今月の27日に四国の高松地方裁判所で出された判決もその手続の中で因果関係が問題となりました。

 

これは、大手ホームセンターのコメリで家具(カラーボックス)を6個買った女性が、家具に含まれるホルムアルデヒドにより体調を崩して被害を受けたとして損害賠償請求をしたものです。

 

これに対して、被告側は、同種の板を使った家具類は約192万台あるが、異変を訴えた顧客は他に一人もいないして、因果関係を争いました。

 

つまり、その女性は別の要素もあって体調不良を起こした可能性もあり、社会経験上からも、そのカラーボックスの成分だけを原因とするのはおかしいという理由です。

 

確かに、人の体調不良は睡眠不足、ストレスなど様々な理由が合わさって生じることが多いため、絶対にカラーボックスが原因と断定するのは難しいでしょう。

 

もっとも、この事件では、二つの点で因果関係を認めやすい事情がありました。

 カラーボックスの板の接着剤から国の指針値を上回るホルムアルデヒドが検出されたこと

 この女性について医師が化学物質過敏症と診断をしたこと

です。

 

高松地方裁判所は、この事情から因果関係を認めて470万円の支払を認める判決を言い渡しました。

 

しかし、これはあくまで化学物質過敏症の女性が原告だったから因果関係が認められたもので、誰が裁判を起こしても認められるというものではありません。

免疫力の弱い人のイラスト <designed by いらすとや>

 

今後、控訴するかどうかは、原告側は悩んでいると思います。

 

控訴審での結論が読めない上に、マスコミに取り上げられるだけで売上に響きそうだからです。

 

さて、最後にちょっと怖いお話を。

 

WHOの下部機関である国際がん研究機関によると、ホルムアルデヒドはタバコの喫煙と同じ「発がん性がある」第1グループに入っています。

 

締め切った部屋でホルムアルデヒドを含む家具を使い続けることは喫煙をしているのと同程度のリスクが生じるという研究結果です。

 

ちなみに、送電線や建物内の電源などからの低周波電場は発がん性は不明とされているのに対して、アルコール飲料はタバコやホルムアルデヒドと同じグループです。

 

電磁波に心配するより、お酒・タバコ・ホルムアルデヒドを含む可能性のある家具(合板で作られた大量の接着剤を使用している安い家具)に注意した方が良いというのが現在の研究結果のようです。

 

しかし、このグループ1であっても、裁判で発がん性との因果関係が現時点の医学や科学では証明することはできないでしょう。

 

この因果関係が明確に証明できるようになったら、健康被害が生じることに対する同意をレジで取られてからお酒を買うことになるかもしれませんね。

 

知った方が良いのか悪いのか、お酒が好きな(強くはありませんが)私には分かりません・・・

 

 

 

「裁判手続で知っておきたいこと」の過去記事はこちらへどうぞ。

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土地から健康被害が生ずる場合の責任は?

静岡では春らしい陽気になってきましたが、昼と夜の気温差が大きく感じられます。

 

おそらく、全国的にそのような気候だと思いますので、体調には十分お気をつけ下さい。

 

さて、フッ素というと皆さんどのようなイメージを持たれるでしょうか?

 

歯磨きに含まれている成分とか、化学記号を連想したりされるかもしれません。

 

詳しい方は、健康被害を起こすリスクのある有害物質という認識を持たれているかもしれません。

 

歯磨きに含まれるような微量のフッ素は直接健康被害はないとされていますが、濃度が大きい場合には中毒症状や健康被害が起きることも指摘されています。

 

そのため、環境省では土壌汚染の原因物質としてフッ素も含めています。

 

土地の売買では、土壌汚染が問題となることが多いのですが、今回ご紹介する最高裁の判例ではフッ素による土壌汚染が問題となったものです。

 

買主は、フッ素工場の跡地を買い取りました。

              <designed by いらすとや>

フッ素工場の跡地ですから、当然、土壌にフッ素が含まれていることは予測できますよね。

 

ところが、この売買契約をした平成3年当時は、フッ素についての環境基準が公に決められていませんでした。

 

ですから、買主は特にフッ素の汚染除去などをせずに土地を転売できるつもりで買い受けました。

 

その後、平成15年2月にフッ素が有害物質として規定されました。

 

おそらく、専門家でない限り、早い方でも高濃度フッ素を健康被害のリスクと認識し始めたのはその頃からではないでしょうか。

 

もっとも、フッ素については、PCBや有機リンのように少しでも入っていたら土壌汚染になるのではなく、一定の濃度以上の場合には土壌汚染となるという規制です。

 

その意味ではフッ素は猛毒というわけではありませんが、一定以上の濃度を持つと汚染が広がるのを防ぐ工事などをしなければなりません。

 

この事案では、土地の汚染が最もひどい箇所では基準値の1,200倍のフッ素が検出されました。

 

このような土壌汚染を除去したり、汚染漏れの防止の工事をすると、その費用が莫大になることが多いのです。

 

そこで、買主は、売主に対して土壌汚染を土地の瑕疵(かし)=欠陥だとして、4億円を超える損害賠償請求をしました。

 

しかし、売買契約時にはフッ素について人の健康被害を引き起こす危険があるとは一般には認識されていないので、売主は土地に欠陥などないと考えて売ったわけです。

 

そこで、売買契約後に有害物質であることが分かって法規制された物質についてまで、売主は損害賠償責任を負うかが問題となりました。

 

最高裁まで争われましたが、結局は否定されました。

 

その最大の理由は、もし売買契約後に生じた瑕疵=欠陥についてまで売主に責任を負わせると、売主は永遠に責任を免れないことになりかねないということです。

 

例えば、フッ素以外の物質で健康被害を生ずるものの中には、まだ科学的にも社会的にも明らかになっていないものもあると思います。

              <designed by いらすとや>

10年後に健康被害が判明する物質についてまで、今の土地を売る人に責任を負わせてしまうと、土地売買自体が成り立ちません。

 

そのため、土地を売るときに健康被害が判明している物質についてだけ、売主に責任を負わせようとしたものです。

 

とはいえ、土地を住居として買う場合には、後で健康被害が分かったのではたまらないという気持ちもありますよね。

 

私の経験から見ると、売主が工場・作業場・廃棄物置場にしていた土地について土壌汚染が問題となるケースが多いようです。

 

もし、土地を購入されることがあったら、以前、その土地が何に使われていたか確認してから決めた方が良いかもしれませんね。

 

 

不動産トラブルの基本知識についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 不動産のトラブル |

ながらスマホでの運転は重い罪?

桜が満開をそろそろ終えることですね。

 

静岡市内では満開だったり、葉桜になりかけたりしています。

 

静岡祭りと桜がちょうど重なったこともあって、今年は桜を楽しめた方も多かったのではないでしょうか。

 

さて、自動車の運転中にスマートホンの操作をしてはいけないことはご存じだと思います。

 

運転中にやってはいけないことは他にもありますね。

 

脇見、カーナビの操作、TVを観るなどです。

 

今月の19日に滋賀県の大津地方裁判所で、ながらスマホで事故を起こした事件についての判決が出ました。

携帯電話を使いながら運転をしている人のイラスト

              <designed by いらすとや>

 

 

事件の内容は、大型トラックの運転手が、高速道路を運転中に、スマートホンのアプリを操作したり、車内に落としたスマホを拾うなどしました。

 

スマホを使うときって、うっかり落としたりしますよね?

 

この運転手も車内に落としたスマホをあわてて拾おうとしたようです。

 

「スマホをちょっと操作して落として拾う」だけの時間ってどれくらいだと思いますか?

 

この事件では約10秒間でした。

 

もし、高速道路を時速100kmで走っていた場合、その自動車は10秒間で約278m走ります。

 

つまり、普通自動車でも約1トン、大型トラックだったら約8~25トンもの重さのものが、時速100kmで278m無人運転になるということです。

 

今回の大型トラックの総重量が20トンだとすれば、普通自動車20台がまとめて時速100kmで無人運転をして、追突事故を引き起こしたことになります。

 

この大型トラックが渋滞中の自動車の列に追突したことで5人が死傷してしまいました。

 

こう考えると、スマホに限らず、自動車のながら運転というのは恐ろしいことだと感じますよね。

 

警察や検察官も当然、重く受け止めて、禁錮2年求刑を求めました。

 

「禁錮(きんこ)」というのは、「懲役(ちょうえき)」と同じように刑務所に入れられますが、懲役のように刑務所内で働く刑務作業が無い刑を言います。

 

もっとも、何年も働かないのは人間にとって苦痛のようで、ほとんどの禁固刑を受けた人は志願して刑務作業に加わるようです。

 

検察官が裁判所に求める刑罰(求刑)は通常は重めにしますので、実際に言い渡される刑は求刑よりも軽いことがほとんどです。

 

例えば、禁錮2年の求刑だったら、判決は禁錮1年8月などが予想される判決です。

 

この事件を担当した弁護人も当然そのような判決を予測していたでしょう。

 

ところが、大津地裁では、検察官の求刑の禁錮2年よりも更に重い禁錮2年8月を言い渡しました。

 

これは、時々あるとはいえ珍しい判決です。

 

ちなみに、私が刑事弁護人になった事件では求刑以上に重い判決を受けたことは一度も有りません。

 

それだけ、この事件で裁判所はながらスマホでの運転を重く見たのでしょう。

 

これは、昨今の運転状況に裁判所も危機感を持っているのだろうと思います。

スマートフォン禁止のマーク              <designed by いらすとや>

人間の感覚というのは恐ろしいもので、危険だと思うことがやり続けるうちにどんどん鈍っていきます。

 

・赤信号で止まっているからスマホを操作しても良いだろう。
         ↓
・運転中でも安全な道路なら良いだろう。
         ↓
・高速道路は一般道より注意を落としても危険はないだろう。
         ↓
・10秒間くらいのながらスマホに危険を感じなくなる。

 

このように危機意識が下がって、自分の中での自動車運転の注意義務を落としていくリスクは、この事件の運転手に限らず誰にでも当てはまりそうです。

 

そういう意味で、この判決では
「求刑以上の判決を下すことで、マスコミなどに社会問題として取り上げてもらい、今後のながらスマホでの事故を減らして欲しい」
という意識が裁判官にあったのかもしれません。

 

私たちも気をつけたいですね。

 

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 刑事事件のお話 |

訴訟最終告知の葉書でビックリ

暖かい日が増えて、桜の開花が気象庁で宣言されましたね。

 

静岡市も暖かいので、私の事務所の近くの神社では既に桜の花が開いています。

 

さて、色々な詐欺の中で訴訟を起こすという最終通告を葉書などで行って、電話をかけさせようとする詐欺。

 

私の自宅にも葉書が来ました。

 

写真を載せておきますね。

 

法律の実務家から見るとツッコミ所が多すぎますし、修正点をブログで指摘すると、それが悪用されても困るので一部だけ取り上げますね。

 

まず、タイトルにある「訴訟最終告知」という言葉が、法律実務に存在しなので、それ自体がウソです。

 

 

また、「管理番号(わ)315」というのは、訴訟上ありえない言葉です。

 

「管理番号」というのが存在しないことの他に、「(わ)」というのは、検察官に起訴されなければつかない事件番号なのです。

 

いきなり葉書でくるような代物ではありません。

 

でも、日本語的には「訴訟」とか「最終告知」とか書いてあると、裁判に縁の無い人は、ビックリして電話をかけて確認したくなっても不思議ではありません。

               <Designed by いらすとや>

 

それが詐欺師の狙いなのです。

 

そして、受付が「法務省管理局 民間訴訟告知センター」となっています。

 

裁判所という司法機関と法務省という行政機関が一つになってしまっています。

 

よくよく考えれば、司法、行政は、立法とともに三権分立で分けられていたはずですよね?

 

冷静に考えれば、何かおかしいな?という感覚は持っていただけるのではないでしょうか。

 

こういう葉書やメールが来たときには、時折、記載されている電話番号に事務所からかけてみます。

 

最近は忙しくて、そんな時間をとることはできないのですが過去の経験をお話しますね。

 

こんなやりとりになります。

 

私:「訴訟最終告知って葉書が来たのですが、そちらが担当ですか?」

相手:「はい。そうです。」

私:「これはどういうことでしょうか?」

相手:「お客様。最近、インターネットで何か良く確認しないでクリックしたことはなかったでしょうか?」

私:「(ビックリした感じで)あったかもしれません!」

相手「その会社から裁判が起こされていて、取り下げの期限が迫っています。」

私:「一体、どうしたらいいのでしょうか?」

相手:「取り下げには、保証金の支払いが必要です。お客様のご住所はどちらになりますか?」

私:「静岡市葵区鷹匠・・・(法律事務所の住所)です。困りました。どうすればいいのですか?」

相手:「今から言う住所にレターパックという方法で30万円を送って下さい。そうすれば、訴訟の取り下げが認められます。住所は、東京都新宿区・・・郵便局留め」

私:「(不審そうに)郵便局留めってどうしてですか?しっかりと送るので、そちらの住所を教えて下さい。」

相手:「いえ、今言った住所で届くので。」

(もう話しても情報を得られないと分かるので、突っ込んでみます)

私:「お金を払えば訴訟って取り下げが認められるのでしょうか?」

相手:「はい。そのようになっています。」

私:「裁判所に、私から何か書類の提出はいらないのでしょうか?」

相手:「・・・いらないと思います。」

私:「『執行官による執行証書の交付』って書いてありますが、これはどういいう意味ですか?」

相手「それは執行官が書類を渡すっていうことです。」

私:「執行官って何をする人ですか?裁判官とどう違うんですか?」

相手:「・・・」

私:「私の所には訴状も、判決書も送達されてきていないのですが、それでどうやって執行できるのでしょうか?」

相手:「・・・担当の者に改めてお電話をさせるようにいたします。失礼します。」

 

もちろん二度と電話がかかってくることはありません。

 

つまり、上の会話の前半部分で引っかかる人からはお金をとり、途中から不信感を出して追及する人は、そこで切り上げるという方法をとっているのでしょう。

 

ちなみに、裁判所から初めて届くのは訴状で、しっかりと封筒などに「静岡地方裁判所」とか、「東京簡易裁判所」と裁判所の名前が書かれ、その裁判所の電話番号も書かれています。

 

このような裁判所から正式な形で送達された訴状支払督促を放置しておくと大変なことになるのは事実です。

 

ですから、もし裁判に関する通知を受け取ったら、書いてある住所や電話番号をインターネットの検索エンジンに打ち込んでみて、裁判所の公式ホームページの住所や電話番号と一致するか確認すると良いと思います。

 

もっとも、「お金を裁判所や法務省に払えば裁判が終わる」という制度は日本にはありませんので、くれぐれもご注意を。

 

消費者被害の一般的なご説明についてはこちら

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カテゴリー: 消費者の被害 |

ドライブレコーダーと証拠

最近、花粉が飛び散り始めましたね。

 

花粉症の私にとっては辛い時期です。

 

毎年、この時期には「今年こそ、舌下免疫療法(舌の裏に薬を垂らして治療する方法)をやろう」と思うのですが、5月になると楽になって忘れてしまいます。

 

まさに、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とのことわざ通りです。

 

さて、今年になって思い立って、私の自動車にドライブレコーダーを着けました。

 

オートバックスで購入した15,000円くらいのものです。

 

やはり、交通事故の事件の依頼者の方の話を聞いていると、ドライブレコーダーがあったら良かったのにと思うことが多いです。

 

自分自身がいくら法令を守って運転していても、相手の運転手が例えば一旦停止を守らなければ交通事故は避けようがありません。

車の交通事故のイラスト(男性)               <Designed by いらすとや>

 

そんな時に、ドライブレコーダーがあれば、事故の過失割合で余計な紛争を避けることができます。

 

交通事故の過失割合は、過去の裁判例を整理した本「別冊判例タイムズ」を基準にして細かく整理されています。

 

そのため、ドライブレコーダーに事故の映像が残っていれば、別冊判例タイムズの交通事故図面と照らし合わせて基本的な過失割合をすぐに出せます。

 

これを使えば、保険会社や弁護士からの提案について、裁判まで争わなくてもすむでしょう。

 

最近の衝突防止システムなど安全支援機能がついている自動車には、ドライブレコーダーも一緒に装備されているものが多いです。

 

さて、そのドライブレコーダー、私は最近つけたばかりだったので、初めて知ったのですが、衝突時以外の記録も自動的に残っています。

 

ドライブレコーダー本体からマイクロSDカードを取り出して、PCで見たところ、自動車が衝撃を感じた時以外の記録も残っていました。

 

例えば、今週、沼津駅北口のプラザヴェルデに講義に行ったところ、

① 事務所の駐車場でエンジンをかけてから出発までの動画

② 国道を通っている動画

③ 東名高速道路を走っている動画

④ サービスエリアに駐車・発車した時の動画

⑤ 沼津インターを降りた直後の動画

⑥ プラザヴェルデの駐車場に駐めた時の動画

が保存されていました。

 

つまり、後からドライブレコーダーを見れば、私がどのような経路で静岡市内の事務所から沼津市の施設に行ったのかがほぼ分かってしまうのです。

 

さて、ここでピンと来た方もいると思います。

 

そうです。これは不貞行為の証拠としても使えるのです。

浮気現場を見つけた人のイラスト(女性)              <Designed by いらすとや>

 

妻が夫の不貞行為を疑ったとき、こっそりとドライブレコーダーの動画をコピーして保管しておけば、場合によって裁判で証拠となります。

 

例えば、ラブホテルに入った画像があれば、少なくとも夫が誰か別の女性と不貞行為をしたことが証明できるでしょう。

 

また、夫が不貞相手のマンションの駐車場に駐車して一泊する一連の動画が入っていれば、そのマンションに住む女性との不貞行為を強く推測させる証拠になります。

 

私がドライブレコーダーを買ったとき、オートバックスの方に
「記録のゴミが溜まるので、月1回くらいはマイクロSDカードをフォーマットしてください」
と言われました。

 

その意味が、再生してみて初めて分かりました。

 

どうして再生することにしたのかというと、実は交通事故にあったからです。

 

私が止まっていた所に軽くぶつけられた物損で、相手も10対0の責任を認めてくれたのでドライブレコーダーが活躍する場面はありませんでした。

 

そして、後からマイクロSDカードを見てみると、走行経路はしっかりと動画がありましたが、肝心の衝突時の記録がありませんでした。

 

衝突がどうも軽すぎたようです。

 

良かったのか、悪かったのか・・・

 

何はともあれ、皆さんも交通事故にはお気を付け下さい。

 

 

「裁判手続で知っておきたいこと」の過去記事はこちらへどうぞ。

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