離婚するときに忘れがちなこと

今、当事務所は改装工事をしているところです。

 

弁護士の数が増える予定のため、相談室の数を増やして、全て個室としました。

 

来月からは、相談室が全て個室となり、よりご安心してお話できます。

 

さて、日本では離婚の手続夫婦の意思でできるというのはご存知だと思います。

 

特に、裁判所に行かなくても、夫婦が合意さえすれば、市役所に離婚届を提出するだけで離婚は成立します。

離婚届のイラスト

海外では、法律の定める要件を充たさなければ、夫婦の合意があっても離婚できないという国も多いです。

 

それとは異なるため、裁判所や弁護士が関わらなくても構いません。

 

ただ、離婚するにあたっては、主張を漏らさないようにすることが必要です。

 

特に、忘れやすいのが、財産分与年金分割面会交流です。

 

例えば、妻の心理として、離婚するにあたって子供のことを第一に考える方が多いので、子供の親権や養育費は忘れません。

 

また、離婚後の生活のことを考えれば財産分与に気づきますし、傷つけられたという気持ちがあれば、慰謝料も忘れないと思います。

 

もっとも、財産分与の対象にどのような財産が含まれるかということを知らない場合、それを請求し忘れることがあります。

 

例えば、預金、投資信託や不動産について請求しても、生命保険の解約返戻金の分与夫の退職金の分与を忘れてしまうことがあります。

 

また、年金分割の請求も忘れてしまいやすいことです。

 

年金をもらうのは遠い将来のことであっても、その頃に月1万円でも年金が多ければ大分違います。

 

例えば、増えた年金月1万円を65才~85才まで貯金した場合、合計すると240万円の貯金ができるのです。

 

その年齢で240万円も貯金することは普通は無理でしょうし、それだけのお金を使えるというのであれば、生活に少しは余裕ができます。

 

そして、年金分割の請求は、離婚後2年経過するとできなくなってしまうので、離婚するときに主張しておくことが大切です。

 

また、夫が忘れそうなのは、面会交流についての適切な主張です。

 

離婚しても子供に会いたいと思っているけれど、離婚の話し合いで子供と会う条件を定めなかったり、調停で主張を忘れることがあります。

 

また、仮に離婚調停で夫が面会交流を主張しても、妻が「嫌だ」という姿勢を貫けば、話し合いは離婚の条件だけに絞られていってしまいます。

 

そうならないためには、夫から面会交流調停の申立をしておく必要があります。

 

そうすれば、離婚調停とは別事件として面会交流の話し合いをしてもらえますし、もし妻が理不尽な拒絶を続ければ、裁判所が「審判」という形で命令を出してくれます

 

こう考えると、当事者同士で離婚をするにあたっても、離婚の条件が決まったら、それを書き出して弁護士の無料相談で見せると安心だと思います。

 

離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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仮釈放とジョン・レノン射殺事件

ジョン・レノンという名前を聞いたことがある方は多いでしょう。

 

ビートルズのメンバーで、解散後も「イマジン」など有名な曲を世に送り出すとともに、戦争反対や世界平和へのメッセージを送り続けていました。

 

彼が1980年に、ファンと称するマーク・チャップマンに射殺されたことは、世界的なニュースになりました。

 

当時、私は高校生で、ビートルズのファンだったため、夢のように考えていた再結成の可能性が断たれたことに呆然としたことは記憶に残っています。

スタジオのイラスト(音楽)

そのマーク・チャップマンは、第2級謀殺の罪で「懲役20年から終身までの無期」を言い渡されました。

 

現在服役しているところ、最近11回目の仮釈放の申請をしていて、それが先月26日(2020年8月26日)に却下されたそうです。

 

この仮釈放という制度は、日本にもあります。

 

刑務所に入った者に反省の様子があり、社会に戻すことで立ち直れると判断された場合に、刑期の途中でも仮に釈放するという制度です(刑法28条)。

 

無期懲役の刑を受けた者であれば、10年を経過した後、法務省が所管する地方更生保護委員会が判断することになっています。

 

無期懲役で、たった10年で仮釈放されるの?という疑問もありますが、現実の運用は相当厳しいです。

 

特に,平成16年の刑法改正で有期懲役の最長期間が30年に延長されてからは(刑法14条)、それより短い期間で無期懲役囚を仮釈放することがしにくくなったようです。

 

確かに、無期懲役囚の方が有期懲役囚よりも早く釈放されるという運用は、社会の理解を得られにくいとは思います。

 

そこで、その頃からは、実質的には服役後30年経過してから審理が行われる運用となり、仮釈放が認められるとしても、その率は極めて低いです。

 

更に、数字に表れない部分として、例えば40才以上で服役した無期懲役囚は、仮釈放の審理が行われる前に刑務所内で亡くなってることが多いでしょう。

 

そのため、無期懲役で服役して仮釈放を受けられるのは、多くの監督者の目から30年間以上見て、共通して反省の情が認められる人に限定されているということです。

 

仮釈放を認めて社会内で早期に更正させた方が本人や社会のためというケースもありますし、仮釈放中に重大な犯罪を犯したケースもあります。

 

人の心理や変化が完全には分からないことから、「もしも、仮釈放して重大犯罪を犯してしまったら?」という心配が厳しい判断につながっているのでしょう。

 

「仮釈放は甘くない。」

 

これだけは、厳然たる事実と言えるのでしょう。

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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コロナを理由に解雇できる?

うすぐ9月ですが、暑い日が続きますね。

 

マスクをしている時間が長い夏なので、熱中症にはお気をつけください。

 

さて、コロナウィルスによる仕事への影響が様々な業種で出ています。

 

ハローワークでも、ソーシャルディスタンスを取りつつ求人票を取得するのが大変だという話をよく聞きます。

 

おそらく、コロナによる売上激減により従業員の解雇をせざるを得ない企業も増えてきているでしょう。

 

そんな中、今月の21日(令和2年8月21日)に、コロナを理由とする解雇の有効性について仙台地方裁判所が判断を下しました。

 

タクシー会社を解雇された従業員(運転手)が、仮処分という緊急の申立をしたものです。

タクシーに乗る人のイラスト(女性)

会社を解雇された場合、それを無効として争うことはできますが、本格的な裁判を起こした場合、時間がかかりますよね。

 

解雇された従業員は、その前に賃金(給料)を支払ってもらわないと生活に困ります。

 

そこで、従業員が解雇の無効を主張する場合には、本来の裁判を起こす前に、迅速に決定を出してもらえる仮処分という申立をしていくのがセオリーです。

 

今回も、従業員の解雇が無効であることを前提に、

① 従業員としての地位があることの確認

② 賃金の支払いを求める

仮処分の申立をしました。

 

裁判所の決定の内容は、まだ裁判データベースにされていないので、新聞記事から推測するしかないのですが、次のとおりだと思われます。

 

従業員の解雇は自由にできるものではなく、労働契約法16条により解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には無効となります。

 

そこで、「客観的に合理的な理由」があるのか?が争点となったのだと思います。

 

今回は、会社がコロナウィルス感染の影響により業績が悪化して、経営を維持していくためには、人件費削減のため従業員の解雇が必要だと判断したのでしょう。

 

確かに、タクシー業界は、夜の飲み会、イベント、観光がコロナによる打撃を受けると、それがそのまま影響して苦しくなってしまうでしょう。

 

しかし、コロナ不況で再就職が難しい中で解雇されてしまうと従業員は大きな不利益を被ります。

 

そこで、裁判所は、解雇という最終手段を回避するだけの措置をタクシー会社が講じていたかを検討しました。

 

そして、まず、従業員を解雇ではなく、在宅を指示して休業手当を支払う方法があったと考えました。

 

もっとも、その休業手当を会社が支払う体力がなければ、やはり解雇は避けられません。

 

そこで、本件ではタクシー会社が雇用調整助成金を受け取ることができるケースであり、これを申請すれば休業手当の大半を補填できるとしました。

 

ですから、解雇をしなくても、運転手を休業させれば足りるとして「客観的に合理的な理由」がないとしたのだと思われます。

 

なお、この裁判所の決定から「コロナを理由とする解雇は無効」という一般的な判断をすることはできません。

 

例えば、雇用調整助成金の申請が認められなかったり、従業員の給与が高くて休業手当の大半を助成金で補填できなければ判断も変わり得ます。

 

更に、それに加えて、会社が破綻寸前と認められる会計帳簿を証拠として出してきたようなケースであれば、解雇は有効となることもあります。

 

解雇された従業員から見ると、雇用調整助成金を会社が申請できるか、勤務先の会社の経営がどれだけ危ないかを確認して争うことになるでしょう。

 

会社側からみると、雇用調整助成金を受給してもマイナスが大きく重なって破綻しかねないような場合であれば、解雇をせざるを得ないことになるでしょう。

 

いずれにせよ、コロナ感染を抑制できて、人が行き交うようになって、会社も従業員も安心できるようになるのが一番いいことですよね。

 

労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。

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給与ファクタリングは危険がいっぱい

静岡市もコロナウィルスのクラスターが起きたり、新規感染が報告されたりして注意が必要となってきています。

 

当事務所の弁護士は仕事以外では遠方に出かけないよう注意しており、相談室も窓を開けて換気を良くして、ご相談の度に消毒をするようにしていますので、ご安心ください。

 

さて、ファクタリングという言葉をご存知でしょうか。

 

企業から売掛金(未回収の代金債権など)を買い取って、それを管理して回収する金融サービスのことです。

 

例えば、中小企業A会社がトヨタ自動車から注文を受けて自動車の特殊なネジを作っていたとしましょう。

 

A会社が今回のコロナウィルス不況で、自動車が売れずにネジの注文が減ってしまったとしましょう。

 

それでもA会社は、従業員の給与を支払わなければなりませんし、工場の家賃や高圧電気の電気料、機械や事務機器の維持費などを支払わなければなりません。

 

しかし、それを支払うための売上が入ってこないのですから、まずは銀行などの金融機関からお金を借りるよう努力するでしょう。

 

しかし、売上が良い企業には安心して融資ができても、売上が減った企業には融資をしてくれないのが金融機関です。

 

「雨の日に雨傘を奪い取り、晴れた日に雨傘を貸しに来る」と半沢直樹の原作者の池井戸潤氏が書いていたような記憶も・・・

 

しかし、A会社には「倍返し」なんかしている余裕はありません。

 

どこからかお金を調達しなければならないのです。

 

そこで、A社はトヨタ自動車に納品したネジの代金200万円(売掛金)がまだ支払われていないことに着目します。

 

このネジの代金の支払い期限は来月なので、トヨタ自動車に請求しても支払ってくれません(信用を失うのが怖いのでそれすら言えないでしょう)。

 

そこで、この200万円のネジ代金という売掛金をファクタリング会社に売却して現金化するのです。

 

ファクタリング会社は、利益を得なければならないので、売掛金を回収するための手数料を取ります。

 

手数料はファクタリング会社によって異なりますが、例えば10%だとすれば手数料20万円を控除した180万円をA会社はファクタリング会社から受け取れます。

 

よくよく考えれば、1ヶ月早く金銭を得るために10%の手数料を払うのですから、年利に換算すれば120%になり超高金利です。

 

ですから、ファクタリングをするということは、会社が金融機関で借りられず、代表者が消費者金融からも借りられない状況にあることが多いのです。

お金をせびる人のイラスト(男性から男性)

そのため、多くは、A会社とファクタリング会社との2社の間で契約がなされ、売掛金の債務者であるトヨタ自動車には秘密にします。

 

このように、ファクタリングというのは、これまでは会社の最後の資金調達の方法として使われていました。

 

ところが、最近、このファクタリングを個人にも使えるようにした給与ファクタリングが問題となっています。

 

今月の19日(令和2年8月19日)、大阪府警は、給与ファクタリングをしていた業者を逮捕しました。

 

金融庁は、ファクタリングは、売掛金債権の譲渡であり、お金を貸すわけではないので貸金業法出資法という貸金の厳しい法律の制限を受けないとしています。

 

ファクタリングの実質は売掛債権を担保とした短期間の融資なのですが、社会の必要性から厳しい制限をかけないようにしているのでしょう。

 

しかし、これが会社勤めの人の給与を譲り受けて手数料を取るという形になると、勤務先に知られたくないという心理を逆手にとって極めて厳しい条件でのファクタリングや取り立てが行われる危険性が高いです。

 

現に、今回逮捕されたケースでは、年利に換算すると625%~1660%の利息になっていました。

 

年利1000%を超えるなど、まさにヤミ金と同じような利息です。

 

そこで、実質はヤミ金業者と同じ事をしている点に着目して、貸金業法と出資法が適用されるとして、これらの法律違反を理由に逮捕をしたわけです。

 

ここも法律的にはグレーな部分であり、将来的には「給与ファクタリング」を法律で禁止するか、手数料に上限を定める必要があるように思えます。

 

働いている人にとっては、給与は生きるための生命線ですから、ファクタリング(給与債権の譲渡)をしてしまうと生活が破綻するリスクが極めて高いからです。

 

ひとまず、友人や同僚から給与ファクタリングの話を聞くことがあったら、「止めた方がいい」とアドバイスしてやっていただければと思います。

 

借金問題ご解決方法についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 債務整理、自己破産、個人再生など借金問題のお話 |

判決日は忘れやすい?

お盆休み、どのように過ごされましたか。

 

全国でコロナウィルスでの発症が報道されるので、気をつかわれた方も多いのではないかと思います。

 

さて、映画やドラマなどで判決の言い渡しはクライマックスですよね。

 

「被告は、原告に対して1億円を支払え」

とか

「被告人は無罪」「被告人を死刑に処する」

などという判決は重大な結論ですから、当然、当事者や弁護士・検察官にとって非常に大切のものです。

裁判の紙を持つ人のイラスト(女性・無罪)

しかし、民事訴訟の多くは、判決日には誰も出頭せず、当事者席には誰も座っていない況で裁判官が判決主文(判決の結論部分)を言い渡します。

 

例外は、弁護団が組まれているような社会的に意義のある判決の場合です。

 

この場合は、判決の場を通して社会に訴えかけたいことがありますし、テレビカメラが入ることで更にその効果があるからです。

 

これに対して、刑事事件は、弁護人も検察官も必ず出頭します。

 

刑事訴訟法では、一定の重い事件(死刑または無期、3年超の懲役が定められた犯罪)を審理するときには、弁護人が出頭しないと審理できないと定めています(必要的弁護事件)。

 

これを裏返すと、軽い犯罪の場合や「審理」ではなく「判決言渡」だけの場合には弁護人の出頭は不要とも読めます。

 

しかし、実務上は、弁護人も必ず判決言渡には出頭して判決内容を確認します。

 

場合によっては、期限内に控訴しなければならないこともありますから、早めに知っておく必要があるからです。

 

検察官の場合は、刑事事件では判決言渡に常に出頭しなければなりません。

 

こう見ると刑事事件では判決日も出頭するので、出頭を忘れることはなさそうです。

 

でも、実は弁護士や検察官の仕事に力を入れる割合としては「判決言渡」よりも「審理」の方がずっと重いのです。

 

弁護士は、民事でも刑事でも、精一杯法廷で証人尋問などを行うと、「あとは結果を待つだけ」という気持ちになります。

 

例えて言うのであれば、「陸上競技でゴールした後、自分のタイムや順位を確認するのを待つ」という感じでしょうか。

 

そのため、判決日を忘れやすい傾向があるのは事実です。

 

それは検察官も同じようで、今月(令和2年8月)、検察官が窃盗事件の判決日に出頭しなかったことがあったようです。

 

弁護人も平成29年に、やはり刑事事件の判決日に出頭しなかったことが報道されていました。

 

やってはいけないミスではあるのですが、判決日だけを忘れやすいという傾向は仕事の性質上あることは事実です。

 

もっとも、ほとんどの弁護士や検察官は、手帳やgoogleカレンダーなどへの記入を工夫して、忘れないようにしていますのでその点はご安心を。

 

「裁判手続で知っておきたいこと」の過去記事はこちらへどうぞ。

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カテゴリー: 裁判手続きで知っておきたいこと |

リツイートにご注意を

お盆休みに入られた方も多いのではないでしょうか。

今年は、コロナウィルス感染防止のため移動の自粛を求めている都道府県もあり、帰省する人が少ないようですね。

感染を気にしないで行動できる日が早く来ると良いと思います。

 

さて、令和2年7月21日に最高裁がリツイートについて注目の判決を下しました。

 

ツイッターでのリツイートによる著作人格権の侵害を認定したものとして、ニュースなどでも話題になりました。

 

ツイッターは、短文の投稿を自分の投稿ページに気軽に書き込みできるということで多くの人が利用していますね。

 

ツイッター社の青い鳥のマークは、PCやスマホを利用する方はよく見るのではないでしょうか。

青い鳥のイラスト

この事案は、そのツイッターにプロの写真家が写真を載せるとき、写真の上部に「転載禁止」、下部に写真家の氏名を入れた写真を、誰かがリツイート(他人のツイート内容を自分のページで再掲載)した事件です。

 

リツイートしたときに上下がトリミング(削除)されて、転載禁止の文字も氏名も削除されてしまいました。

 

そこで、写真を掲載(ツイート)した人が、自分の写真の氏名表示を勝手にトリミング(削除)されない権利(著作人格権)を侵害されたとして、ツイート社に発信者情報開示を求めたものです。

 

発信者情報開示とは、「ツイッター社が保管しているリツイートした人との契約情報(名前、電話番号又はメールアドレスなど)を明らかにするよう求める手続」です。

 

そこから、リツイートした人の情報を辿って、損害賠償の請求などをすることになります。

 

写真の氏名部分のトリミング(削除)はツイッター社のソフトが自動的にしたもので、リツイートした人は意識していないかもしれません。

 

でも、最高裁は著作人格権を侵害したのはリツイートした人だとしました。

 

トリミングは自動的に行われるもので、リツイートがなければ作動しない付随的なものなので、リツイートした人がトリミング機能を使ったという認定なのだと思います。

 

ただ、先ほどご説明したとおり、これはツイッター社に発信者情報開示、つまりリツイートした人の契約者情報を開示すべきことを認めた判決です。

 

プロの写真家の人からのリツイートした人に対する損害賠償請求が認められるかは、別の問題です。

 

今回の判決に基づく発信者情報開示請求により、プロの写真家の人は発信者を特定できるでしょう。

 

その後に、更に、損害賠償請求をしていくか検討することになるのでしょうが、仮にそこまで請求した場合には、様々な争点が予想されそうです。

 

例えば、

・リツイートが社会一般で気軽に行われていることをどう評価するか?

・リツイートによる表現の自由を萎縮させることにならいか?

・リツイートした人に過失があったと言えるか?

など様々なハードルがあると思います。

 

今回のリツイートが、損害賠償請求を認めるほど違法性がある行為か?については、皆さんも色々な意見があろうかと思います。

 

そのような問題意識が、裁判になった場合には、法律の解釈論として争われることになるでしょう。

 

ただ、これからは、プロの写真家の写真のように、写真それ自体の価値が高いものについては、リツイート前に「転載禁止」の文字が入っているかを注意した方が良いのでしょうね。

 

インターネットと法律の過去記事はこちらをご参照ください。

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カテゴリー: インターネットと法律 |

破産者情報サイトに停止命令

報道によると、今日、東海地方の梅雨明けとなったということなので、静岡も梅雨明けということでしょう。

 

空には入道雲。確かに夏の風景が始まりました。

 

今年は、コロナウィルスの蔓延で本来の夏休みのように楽しめませんが、感染リスクを減らしながら心と体を休めさせる機会を持ちたいものですね。

 

さて、先月、7月29日に政府の個人情報保護委員会は、破産した人の氏名や住所など個人情報を、本人の同意なくインターネットの情報サイトにのせた2業者に対して、停止命令を出しました。

 

以前も、破産者マップという破産したり、個人再生したりした人の住所地に炎のマークを表記する地図がネットに出されて、問題になりました。

 

このような掲載者は、官報(国が発行する情報公開の情報)から破産・個人再生した人を探して、情報を取得しています。

 

この情報の取得それ自体は、国の発行するものを見ただけなので、違法ではありません。

 

しかし、国が官報で情報提供しているのは、利害関係人に告知するためです。

 

例えば、会社が破産を申し立てる直前は取引先や細かな機械類などの資産を整理する余裕がありません。

 

そのため、破産申立をしたときに、

・本来は届け出なければならない取引先である債権者を漏らしたり、

・取引先から預かった物(商品や機械など)やリース物件の所有者への通知が出来なかったり

することもあります。

 

そこで、そのような利害関係を有する人に情報を提供するために、官報で破産したことやその会社名などを知らせているのです。

 

つまり、国としては、利害関係を持っている人が自分のために情報を使う限度で利用を認めています。

 

ところが、破産した人の個人情報をまとめたサイトを作る人たちは、自分自身が利害関係はありません。

 

おそらく、アクセスの多いサイト(しかもアクセスする人の類型を把握しやすいサイト)を作ることで、広告料収入を稼ぐことなどが目的でしょう。

 

広告が掲載されていない場合には、もっと違法な形で情報を売っている可能性もあります。

 

これを本人の同意なく行うことは、本人のプライバシーや生活を著しく害するものといえます。

 

本来、破産手続は、破産する人の財産の清算とともに、経済的な立て直し重要な目的の一つとしています。

 

それが、破産した人を簡単に把握できるサイトを作ったのでは、破産が終わっても就職や起業に悪影響が出てしまいます。

 

今回は、それを個人情報保護法という少し趣旨の異なる法律を使って、保護しようとしたものです。

 

このような違法なまとめサイトを作る業者は、海外のサーバーを使っているため、その特定が難しいです。

 

そこで、政府の委員会は、業者には公示送達という特別な方法で停止を通知するとともに、インターネット検索会社に対し、検索結果にサイトが表示されない措置をとるよう要請しました。

 

ひとまず、検索結果にサイトが表れなければ、URLをダイレクトで入力できなければたどり着けません。

 

結局、ほとんどの人が見ることができないので、効果は大きいでしょう。

 

2020年8月27日までに、業者がサイトの停止に応じない場合には刑事告発も予定しているそうです。

 

インターネットは、思わぬ形で他人の人生を台無しにしてしまうので、使う方も注意が必要ですね。

 

借金問題ご解決方法についてはこちらをご参照ください。

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判決書の美学

最高裁が、令和2年7月20日付けで、参院選の買収事件の疑いで起訴された河井案里(かわい・あんり)議員の保釈について、特別抗告を棄却する決定をしました。

 

通常は、議員が逃亡するようなおそれは少ないと思われますし、これまで保釈が認められていた事案のように思えます。

 

ひょっとしたら、カルロス・ゴーンの逃走事件が間接的に影響しているのかもしれませんね。

 

さて、このように裁判所の判決や決定が下されると、判決書決定書という書面が作られます。

 

弁護士が自分の担当した事件でこれを受け取ると、隅から隅までしっかりと読みます。

 

「おお、そんなところ気づいていなかったよ」「さすが」とか、「えっ!それはないだろ!」とか独り言を言いながら読むのです(私だけ?)。

 

また、それとは別に、お引き受けした事件と関連する判決書を、専門のデータベースから読むこともあります。

 

やはり、裁判官によって個性があり、事実の認定の仕方や論理の運び方はそれぞれです。

 

例えば、業務上横領事件について、原告側になると、横領した事実の証明のために、すごく細かい書面(領収書やレシート数百枚とか)を提出します。

 

そして、その使用した日時、金額、使途などから横領の事実を証明するわけです。

 

これに対して、判決書では、原告代理人と議論するように、1枚1枚について認めたり、排斥したりしていきます。

 

主張する弁護士は、依頼者、多くは会社や税理士・公認会計士から詳しい事情を聞いて主張していきます。

 

これに対して、裁判官は提出された証拠だけから判断していくわけです。

 

私が、裁判官だったら、そのような主張について排斥したり認めたりする決断をするには相当の勇気がいると思います。

 

当然、担当弁護士が、会計の専門家に自分の判決書を見せることを想定しているからです。

 

そこに果敢に踏み込んで判断している判決書を読むと、裁判官の職務への矜持を感じます。

 

また、傷害事件で慰謝料請求をするときに、刑事記録、例えば警察官の調書が証拠として提出されることがあります。

 

通常、警察官の調書の内容を、裁判官が認めないことって考えられないですよね?

 

でも、以外と、刑事と民事とは別として、「供述の前後を見ると、供述者が警察官に迎合して供述した可能性も捨てきれない」として、事実を認めるだけの証明力を否定している判決書もあります。

 

これも、刑事事件の内容を直接知らないけれど、調書全体の流れや不自然さから警察の調書の信用性を否定するには、勇気が必要でしょう。

 

逆に、「常識に反するのでは・・・」と思う判決書もありますが、このような場合には、事件を担当した個々の弁護士が控訴や上告をして再度審理することを求めていくことになります。

 

難しくて読みにくく感じる判決書ですが、その裏には美学があったり、非常識があったりと色々なのですね。

 

「裁判手続で知っておきたいこと」の過去記事はこちらへどうぞ。

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京都アニメーション事件から1年

今月の18日で、京都アニメーション放火殺人事件が1年を迎えました。

 

事件現場で追悼式が行われたとのことです。

 

犠牲者の方々やご遺族には慎んでお悔やみ申し上げます。

 

「聲の形」というマンガ(作者:大今良時さん)に感銘を覚えていたので、京都アニメーション(京アニ)で映画化されたときには、映画館へ行きました。

 

原作はマンガという紙を通して表現し、映画はアニメーション・台詞・音楽という形で表現するという大きな違いがありますよね。

 

でも、私の心の中に生じた感動は、まったく同種のものでした。

 

京アニの方々が、原作を深く読み込んで解釈し、それをどう表現するかを、努力と才能をフルに使って製作したことが伝わってきました。

 

さて、この京アニの事件、刑法の犯罪類型で言うと「現住建造物放火」「殺人」の疑いで捜査されています。

 

まず、放火罪は、大きく次の3つに分けることができます。

① 現住建造物等放火罪

② 非現住建造物等放火罪

③ 建造物等以外放火罪

 

このうち、①の「現住建造物」とは、「現に人が住居に使用し」ている建物「現に人がいる建物」を言います。

 

そのため、①は人の生命身体に大きな危険を及ぼす行為であるため、ほかの②③と比べて非常に重い刑が定められています。

 

①が「死刑、無期懲役、5年以上の有期懲役」のいずれかなのに対し、②は「2年以上の有期懲役」、③は「1年以上10年以下の有期懲役」です。

 

このように「死刑」「無期懲役」が定められているのは①だけです。

 

今回の事件で放火されたのは、仕事をする建物ですから「住居」ではありません。

 

しかし、多くの人が建物の中に居たので「現に人がいる建物」として、重い①の現住建造物放火罪が適用されるのです。

 

①の「現住建造物等放火罪」だけでも死刑まで定められていますが、更にこれに加えて「殺人罪」も一緒に容疑に入っています。

 

この最も大きな理由は、犯罪の実態にあった事実を認定して、適切な量刑を判断するためでしょう。

 

ここで問題になりそうなのは、殺人の故意、つまり殺意です。

 

殺意は、「自分の行為によって人が死亡することの認識」だけでなく、「人が死んでもかまわない」という積極的な意思も必要です。

 

人がいる建物に放火をする場合、それ自体が危険な行為ですから、「人が死亡することの認識」は常識的に否定できないでしょう。

 

ただ、「建物に火をつけたけれど、建物の中の人は十分逃げられると思っていた」という場合、人が死んでもかまわないとまでは思っていません。

 

この場合、被疑者の心中は神様でなければ分かりませんので、客観的な証拠から殺意の有無を判断していくことになります。

 

例えば、平屋建ての建物に新聞紙で火をつけたけれど、その建物は外に出られる裏口や窓がいくつかあったとします。

 

この場合は、どうでしょう?

 

実は、これだけでは殺意は不明です。

 

大事な要素がいくつも抜けているからです。

 

例えば、火をつけた時間、放火の方法などです。

 

もし、家の中にいるのが高齢者で朝5時に起きて、夜9時には寝ているとしましょう。

 

そのことを被疑者が知っていて、昼の12時に火をつけた場合には殺意を否定する方向で考えます。

 

ただ、その場合でも、家の周囲にくまなくガソリンをまいて火をつければ、有毒ガスや酸欠で動けなくなって死亡する危険が高いので、やはり殺意は認められる方向になります。

 

これを京アニの事件でみると、被疑者は、3階建て(写真から見る限り)の建物の1階に大量のガソリンをまいています。

 

ガソリンの火のまわりの早さや、有毒ガスが2階、3階に上がっていくことからは殺意が認められる可能性は高いように思えます。

 

ただ、これらの事実は、新聞などで報道されていることなので、実際には裁判になったときに被疑者が認めるか否定するかを前提に考えていかなければなりません。

 

被疑者は、重度の火傷で死亡寸前だったところを、医療スタッフの懸命な治療で一命をとりとめたと報道されています。

 

また、被疑者は、治療への驚きと感謝を述べるとともに、医療スタッフからの「罪に向き合うべき」との言葉には耳を傾けているようです。

 

一方的に死なれてしまうよりも、被告人が罪と向き合って真摯な態度をとることが、遺族のため、そして模倣犯を今後出さないために大切なのでしょう。

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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あおり運転は犯罪になる?

新型コロナウィルスの影響で、公共交通機関を避けて自動車で移動される方もいるのではないでしょうか。

 

実は、道路交通法が改正されて、令和2(2020)年6月30日から、危険なあおり運転「妨害運転罪」として処罰することとなりました。

 

これまでは、あおり運転というだけで処罰することはできないため、刑法の暴行罪などで処罰するしかありませんでした。

 

暴行罪というと、直接、暴力を振るうというイメージがあると思います。

 

確かに、あおり運転をしただけでは、被害者に怖い思いはさせていても、直接に物理的な力が加えられたわけではありません。

 

でも、過去の裁判例では、「有形力を行使する」ことを広く暴行罪に入れてきました。

 

例えば、被害者を怖がらせようと狭い部屋で日本刀で振り回したり、石を投げつけたりする行為を暴行罪として処罰してきました。

 

でも、お互いに自動車に乗っている間では、狭い部屋で日本刀を振り回されるような有形力の行使と同じといえるか疑問があります。

 

人を処罰する法律は、それだけ重大な結果を生じるので、その条文は明確でないといけません(罪刑法定主義)。

 

そこから考えると、暴行罪であおり運転を処罰することは、余り好ましいものではありません。

 

そこで、道路交通法を改正して、妨害運転罪を新設し、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金という罰則を定めたのです。

 

ただ、あおり運転とか妨害運転とか言っても、それは被害者の感じ方によって変わってしまう曖昧なものになります。

 

そのため、できるだけ明確にするために、10個の運転に分けて規定しています(道路交通法17条の2の2、11号)。

 

以下の行為を他の自動車の通行を妨害する目的でした場合です。

1 対向車線など車線をはみだして運転を妨害する行為

2 急ブレーキをかける行為

3 車間距離を極端に短く詰める行為

4 急に進路変更を行う行為

5 危険な方法で追い越しをする行為

6 激しいパッシングをしつこくする行為

7 大きな音でしつこくクラクションを鳴らし続ける行為

8 幅寄せをしたり自動車を左右に蛇行させる行為

9 高速道路で低い速度で走行する行為

10 高速道路で停車したり、駐車したりする行為

 

いずれも危険な行為ですが、上の9番や10番のように、周囲の自動車が時速100km程度で走っている中で、低速走行や停車で前方をふさぐことは生死に直結する危険な行為だと思います。

 

その結果、人を死傷させれば、更に重い犯罪として処罰されることになります。

 

あおり運転にあわないためには、ドライブレコーダーをつけていることが周囲に分かるように、車の後ろにステッカーを貼るなどして予防するのも良いかもしれませんね。

 

今日も、安全運転で行きましょう。

 

交通事故の民事事件の基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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