遺産分割の話し合いは誰とする?

この3月一杯をもって、弁護士会の副会長の任務も終わり、一段落です。

 

弁護士になって初めて、数十年前のサラリーマン時代の異動の感覚を思い出しています。

 

さて、今回は遺産分割の始まりのときに注意すべきことをお話します。

 

遺産分割は亡くなった方の遺産について、話し合いで分ける手続です。

 

ですから、遺産分割の当事者各相続人となります。

 

当たり前のようですが、時々、その相続人が不明なことがあります。

 

よくあるのは、高齢の兄弟姉妹の間で相続が起きた場合です。

 

兄弟姉妹だけならお互いに存在を知っていそうですが、相続人が高齢の場合、亡くなられた方は戦前、昭和初期の生まれということも珍しくありません。

 

その頃は、今よりも社会が大ざっぱで、戸籍もいいかげん・・・というか、記載ミスがあったりします。

 

そして、「戸籍をさかのぼると異母兄弟姉妹がいた!」ということも時折あるのです。

 

例えば、父親が結婚しないである女性との間に子どもを設け(今でいう不倫ですね)、認知はしたけれど、妻や子には言わなかったというケースです。

 

これをしっかり調べないで遺産分割協議書を作ってしまうと、後で相続人全員の合意がないとして無効となりかねません。

 

弁護士は遺産分割事件をお引き受けした場合には、そのようなことがないように職務上請求という形で戸籍を調べることができます。

 

そして、相続人全員に連絡を取って、話し合いができるか打診することになります。

 

ときどき「いきなり弁護士から連絡があって、相続でお金が入った!」などという話を聞きます。

 

これは先ほどの異母兄弟姉妹の立場からは、そのように受け止められるということになります。

 

遺産分割の話ををする前に、立ち止まって、本当に相続人はこれで間違い無いかと確認することも大切ということですね。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 相続のお話 |

離婚や相続でもウェブ裁判の試行が始まりました

大雪の予報が最近ありますが、静岡市の市街地ではその気配すらありません。

 

もし、大雪になったら、私も全く慣れていないので、大きく混乱しそうですが。

 

さて、今の時点でも、契約に関することなどを扱う民事訴訟で、インターネットを使った裁判手続が始まっています。

 

私も数件ウェブ裁判をやっていますが、事務所からパソコン画面を通して裁判官、相手弁護士と議論ができるのは便利です。

 

特に、裁判官と次回期日までにどのような準備をするのか確認して、その内容をデータで共有できるのは裁判手続を早く進めるのに役に立つと思います。

 

まだ依頼者の方と一緒にウェブに参加したことはありませんが、遠くの裁判所に行かないで事務所で参加できるという点では、きっと便利でしょう。

 

もっとも、離婚調停遺産分割調停のような家庭裁判所で行われる事件については、一部は電話を使った手続があるものの、ウェブ手続までは行われていませんでした。

 

しかし、家事事件、特に調停こそ、広くウェブ裁判が必要だと思います。

 

例えば、夫の妻に対するDV事件では、夫が裁判所に出頭して、妻がインターネットを通じて弁護士の事務所から参加することで、恐怖を感じにくくなると思います。

 

また、遺産分割調停では、相続人が全国に散らばっていることも多く、それぞれが近くの弁護士に依頼すればウェブを使って調停に参加することができます。

 

2022年2月時点では、東京、大阪、名古屋、福岡での試験的な導入がされることが決まっており、そこで問題点を解消できれば、全国の裁判所で行うことになっています。

 

大きな問題とされているのは、

① 当事者以外の人が画面に見えないところから調停手続を聞いたり指示したりしていないかということです。

 

例えば、離婚調停で相手方の親がこっそり同席して指示を出すことが考えられます。

 

また、遺産分割調停では、相続人の夫や妻が、こっそり同席する危険もあります。

 

ウェブカメラで周囲を確認させるなどの方法をとっているようですが、確認後に死角から入るという可能性もあります。

 

例えば、ウェブカメラで確認するタイミングを、裁判所がランダム(無作為)に決めるなどして、そのような危険を防ぐなど工夫が必要でしょう。

 

次に言われているのは

② 録音・録画の危険です。

 

調停手続は録音・録画が禁止されており、だからこそ、当事者と調停委員が、その場で感じたこと、考えたことを率直に話し合えるのです。

 

それを、録音・録画されて「あの時にこう言った」と細かいところで衝突しだしたら、まとまる調停もまとまらなくなります。

 

そして、調停手続がSNSやYoutubeで世界中に配信されてしまったら、当事者のプライバシーや裁判所の守秘義務が意味のないものになりかねません。

 

使用するパソコンに録音・録画のアプリを入れたり、スマホを見えないこころに置いておけば簡単に録音・録画ができてしまうので、対策は難しいとは思います。

 

場合によっては、事前に説明と宣誓をさせた上で、破った場合には多額の罰金など刑事罰を入れて厳しく規制する方法も必要かもしれません。

 

ウェブ裁判は、利用者にとって便利である反面、利用者のプライバシーなど重要な利益を害する危険もあるため、手探りで初めて行くことになるのでしょうね。

 

「裁判手続で知っておきたいこと」の過去記事はこちらへどうぞ。

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新年おめでとうございます

新年、おめでとうございます。

所長の谷川です。

昨年も、新型コロナ感染の影響を考えて生活しなければならない1年でしたね。

ここを読まれている皆様の中にも、お辛い思いをされた方もいると思います。

今年こそは、コロナの問題が収束して、感染の心配なく動ける日が来ることを期待しています。

 

私の方は、昨年4月から静岡県弁護士会の副会長の任につき、忙しい1年ではありました。

しかし、弁護士会という組織全体のことを会長や他の役員の方々と議論していると、今までにない発想も多く、人としても弁護士としても有意義な経験でした。

今年の3月一杯で副会長の任期も終わるので、その経験を生かして、より一層、皆様のお役に立ちたいと思っております。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

「ご報告や雑感」のブログ過去記事についてはこちらへどうぞ。

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ネットでの中傷対策は侮辱罪で

8月も終わりになりつつあっても、秋の気配はまだまだですね。

 

この地球温暖化が今のペースで続くと、100年たたないうちに気温上昇・熱波・気候激変・海水面の上昇などによって、地球は人が住めない星になるという記事を読みました。

 

予測の正確性は置いても、今の幼い子どもたちに良い未来を残していきたいものです。

 

さて、近年、インターネットの中傷による被害が相次いでいます。

 

中傷により死を選ぶという悲惨な事件が起きたり、心に大きな傷を負ったりするケースは確実に増えていると感じます。

 

かといって、どこかの国のようにインターネットの表現そのものに規制をかけたのでは、私たちが自由に表現したり、必要な情報を得ることが難しくなります。

 

そんな中、法務省は侮辱罪の厳罰化を法制審議会に諮問していくとのことです。

 

インターネットで人を悪く言うことについては、名誉毀損罪でも処罰されます。

 

ただ、ネットの場合、短文で投稿されることもあり、抽象的な批難、例えば「キモい」という言葉なども多いです。

 

この場合、具体的な事実を示していないので名誉毀損罪には該当しません。

 

そこで、そのような場合にも処罰できる「侮辱罪」という犯罪が定められているのですが、その刑罰は「拘留(30日未満)又は科料(1万円未満)」と非常に軽いです。

 

軽いが故に時効期間も短く、1年間となっています。

 

そのため、刑を「1年以下の懲役・禁錮」と「30万円の罰金」と重くして、時効期間も3年と長くなる改正案となっているようです。

 

このようなネットでの中傷は、被害者に対して、多数の人が攻撃的な侮辱をしているケースもあると思います。

 

その場合、共犯として扱うのか、一人一人単独犯として扱うのかは、おそらく事件の性質によるのでしょう。

 

多数の人の連続的な侮辱的投稿で被害者が大きな傷を負った場合には、立件はされそうです。

 

これを共犯として立件した場合、他の人の投稿をどれだけ読んで意思を共同していたか?という「共謀」の点は争いになりそうです。

 

刑事事件で加害者を特定できれば、被害者や遺族から刑罰とは別に、民事で損害賠償請求もやりやすくなるでしょう。

 

なお、この改正案のように刑罰による規制は、事後規制といって、表現行為を事前にはストップせず、表現した後での処罰となります。

 

その意味では表現に対する規制の程度は緩いものではあります。

 

もっとも、「侮辱」にあたるか否かというのは、表現の内容によって判断されるものですから、時の政府(警察)が介入し過ぎることにも問題はあります。

 

政策や与党に対する批判を警察が取り締まるようになったら、それはそれで危険でしょう。

 

処罰するには、単なる言葉だけでなく前後の文脈から解釈したり、加害者と被害者の関係性や被害の実質的な程度を見ながら検討する必要はあると思います。

 

その点では、個人の権利の対立を調整していく裁判所の役割が、更に大切になると言えますね。

 

インターネットと法律の過去記事はこちらをご参照ください。

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熱海市伊豆山での土砂災害等への支援

静岡県弁護士会からの被災者支援情報のお知らせです。

令和3年7月3日に発生した静岡県熱海市の伊豆山での土砂災害等により、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

静岡県弁護士会では以下の対応により被災者の皆様のお役に立つよう活動をしています。

 

1 YouTubeチャンネルでのご説明

以下をクリックして、YouTubeチャンネルを見ていただくと、今後利用できる可能性のある被災者支援制度や罹災証明書等について、重要なポイントをご説明しています。

https://youtu.be/TsOThc-cVdc

当会の災害支援のスペシャリストによる説明であるため、非常に参考になると思います。

 

2 土砂災害・浸水何でも無料電話相談

  令和3年7月5日(月)~

  電話受付:055-931-1848

  受付時間:平日 午前9時~17時(12時~13時を除く)
         ※ 土日祝日はお休みです。

※ 電話受付の後、担当の弁護士が、折り返しのお電話をして、相談に応じます。

 

3 熱海豪雨災害の現地での相談会(延長)

熱海市での豪雨災害についての相談会を延長して行います。

熱海市総合福祉センターにおいて,各専門家による生活なんでも相談会(無料相談)を行っています。

例えば

・り災証明書を申請したい。

・利用できる支援金はある?

・住まいの改修は?

・事業の経営が苦しい。

・生活の再建をどうしたらよいか分からない。

様々なお悩みに、建築、不動産、法律、税金その他各種専門家が、お話を伺います。

また、支援制度などの分かりやすい資料も配付しています。

日時:令和3年8月11日(水)~8月31日(火)の間(日祝休み)
   平日:午前9時~午後4時
   土曜日:午前9時~12時(午前中のみ)
   日祝日:お休み
   

場所:熱海市総合福祉センター3階(静岡県熱海市中央町1番26号)
   ※熱海市役所のすぐ裏手の建物となります。

相談料:無料です。

担当専門家:弁護士・司法書士・行政書士・建築士・税理士・公認会計士・
      不動産鑑定士・土地家屋調査士・社会保険労務士・技術士

主催:静岡県災害対策士業連絡会

※新型コロナウィルス感染防止のためマスクのご着用をお願いいたします。
 会場での検温・手指の消毒に、ご協力お願いいたします。


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法テラスを利用する条件

投稿を怠けている間に、梅雨入りしてしまいました。

 

とはいえ、夏日があったり、大雨があったりで季節感が狂いそうです。

 

さて、法テラスという名前を聞いたことがあるでしょうか?

 

正式には、日本司法支援センターという名前で、国が設立した法的トラブルの解決を助ける機関です。

 

法テラスという愛称は「法で社会を明るく照らしたい」「みんながくつろげる陽当たりのよいテラスのような場所にしたい」という理由でつけたとのことです。

 

民事事件での法テラスの大事な役割として、民事法律扶助という制度があります。

 

つまり、お金がなくて弁護士を依頼できない人のために、無利息で弁護士費用を貸してくれるという制度です。

 

借りた費用は、月々5000円を最低額として分割払いしていくことができます。

 

この法テラスを利用した場合、どの弁護士でも選べるわけではありません。

 

法テラスが決める費用は通常の弁護士費用よりも大分安いため、その安い費用でも引き受けるという弁護士だけが対応することになります。

 

弁護士は自由業ですから、法テラスへの登録をするかどうかも自由です。

 

そのため、法テラスを利用したいと考えている方は、

①弁護士を選べないことを前提に法テラスの法律相談を予約するか

②事前に訪問する法律事務所で法テラスに対応しているか確認する

必要があります(私の事務所の弁護士は全員対応しています。)。

 

これを聞くと、法テラスを利用すれば良いことばかりのように感じますが、難点はいくつかあります。

 

1つ目は、法テラスが定める条件が厳しいことです。

 

収入や資産が少ない人を助けるための機関ですから、それなりの収入や資産がある方は利用できません。

 

例えば、一人でアパートに住んでいる場合、静岡県では、ざっくりと22万3000円以下の手取りでなければなりません。

 

これは、賞与(ボーナス)も含んでの金額ですから、年間の手取り額が267万6000円以下であることが必要となります。

 

結婚している方の場合には基準額は上がりますが、配偶者の収入も考慮することになるので、条件はあまり変わりません。

 

これに対して、お子さんがいる場合には、扶養していることは確実なため、法テラスを利用できる可能性は大きくなります。

 

他にも考慮する条件は色々ありますが、ひとまずは、手取り収入が相当少ない方のための制度ということになります。

 

2つ目は、申請に給与明細書や源泉徴収票、世帯全員の住民票など提出書類が色々とあって、手続が大変なことです。

 

先ほどの、収入に関する条件(資力要件と呼んでいます)をチェックするためには、どうしても必要となるのですね。

 

3つ目は、弁護士と法テラスと依頼者の三者契約になるので、契約の内容が明確になる反面、依頼した弁護士と柔軟に契約内容を変えることができないことです。

 

ある事件を法テラスを通じて弁護士に依頼した場合、事件を進めて行くうちに追加で頼みたいことが起きたら、再度、法テラスへ申請する必要があります。

 

弁護士は法テラスが決めた以上の弁護士費用をもらってはいけないので、勝手に追加費用をいただいて柔軟に対応することはできません。

 

このような難点はあっても、預貯金がほとんどなくて、収入も本当に少ないけれど、借金や離婚など法的トラブルでお悩みの場合には有効な制度です。

 

法テラスと契約をしている弁護士を事前に調べて、直接、事務所に訪問すれば、一定の範囲の中で自分で弁護士を選ぶこともできます

 

法テラス静岡では、登録している弁護士の名簿を公開しているので、その名簿の中から選んで事務所に連絡すれば確実です。

 

他の地域でも同様のサービスがあるでしょうから、「法テラス+地名」で検索していただいて、事務所を選んで相談に行かれることも良いかと思います。

 

「日常生活の法律問題」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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特別養子縁組のあっせんは問題あり?

暖かい日が増えて、春の雰囲気が出てきましたね。

 

弁護士の谷川です。私の事務所の近くのお堀沿いの桜も花が咲き始めて、今週末あたりが満開になりそうです。

 

さて、最近のニュースで、特別養子縁組のあっせんを長年行ってきた民間団体が、突然の事業停止をしたことが報じられていました。

 

特別養子縁組とは、一般の養子縁組よりも様々な点で実子に近い取り扱いをしようとする制度です。

 

例えば、虐待を受けていたり、経済的な問題から、実の親と暮らせないことが生まれてから早い段階で分かっているケースが典型的と言われています。

 

例えば、養子の年齢が6才未満であることが必要であったり、戸籍の続柄に「養子」ではなく「長男」などと実子と同じ記載がされたりします。

 

実の親との法律的な関係も、養子縁組とともになくなるため、実の親を扶養する義務もなく、相続も生じません。

 

そのため、実の親からの援助がなくなる分、養親についても厳しく判断していきます。

 

養親のいずれかの年齢が25才以上であることが必要だったり、家庭裁判所がチェックをして許可をすることが必要だったりします。

 

このように、実子に近い制度であるため、養親の方も迎え入れるにあたって、愛情を注ぐ覚悟をしているでしょう。

 

実親ではなく養親であることを子どもに伝えるのか?

もし伝えるとしたら、子どもが何才になったときに話すべきか?

受け入れてからも大きな悩みはあろうかと思います。

 

子どもに養親であることを伝えたとき、子どもからは

① 自分の実親がどのような人か?

② どのような事情で特別養子縁組となったのか?

という質問は必ずあるでしょう。

 

は自分のルーツを知りたいという人の根本的な欲求でしょう。

また、も、やむを得ない事情があったことを確認したいという気持ちから知りたいと思うでしょう。

 

このような情報を一番多く握る立場にあるのが、実親と養親を繋いで特別養子縁組を成立させたあっせん団体です。

 

そのため、あっせん団体は、特別養子縁組後もサポートできる体制でなければなりません。

 

ところが、これまで法的な保護が不足していたため、様々な問題が起きていました。

 

今回の団体は、情報の管理が不十分だったり高額なあっせん手数料(230万円~270万円など)や寄付金名目で多額の現金を取得するなどの問題があったそうです。

 

そこで、行政指導だけでなく、養子縁組あっせん法を制定して、3年ほど前から規制が厳しくなっています。

 

特別養子縁組のあっせんは、人の幸福の手助けにもなりますが、一歩間違うと人身売買と同じことにもなりかねません。

 

これからも、法律や行政を通じて適切な制度を作っていって欲しいものです。

 

「日常生活の法律問題」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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弁護士、転ばぬ先の杖?

緊急事態宣言の効果もあって、全国的に感染者数は減ってきていますね。

 

これからのワクチン接種がどのようになっていくのかは、先行しているイスラエルの情報などを見ながら手探りということにはなるのでしょう。

 

飲食・観光・イベント業関係などの業界、非正規雇用など社会的・経済的に弱い立場の方々に重い被害が生じていますね。

 

早期の対策と収束を願ってやみません。

 

さて、第一法規という法律の専門書を発行している出版社が「弁護士 転ばぬ先の経営失敗談」(編著:弁護士 北 周士)という本を出しています。

 

出版は今から5年ほど前ですが、最近になって読む機会がありました。

 

つい忘れがちなことや再確認させられることもあって、とても参考になりました。

 

依頼者の方との関係では、「事案の進捗はこまめに伝える」「何か変だと思ったら受任しない」という項目が印象的でした。

 

「こまめに伝える」大切さは、弁護士業界の研修でも良く言われます。

 

連絡が取れない、打合せができない、というような苦情が相当数あるからだと思います。

 

事案がどのように進んでいるのかは、依頼者の方の気持ちの安定のためには必要なことです。

 

更に、それだけでなく弁護士のためにも必要です。

 

弁護士がどのようなことをしているのか、そのつど知っていただくことで、依頼者の方が解決内容や弁護士報酬について納得できるということです。

 

弁護士が依頼者との良い信頼関係を築くための必須の要素ということでしょう。

 

また、「何か変だ」と思う事案として、交通事故事案で休業損害証明書を偽造されたという事案が紹介されていました。

 

依頼者が、実際は無職だったのに「働いていたのに給与が出なかった(有給をとった)」と嘘をつきました。

 

そして、会社が発行する証明書を偽造したということです。

 

市役所などが発行する所得証明書など、しっかりとした根拠があれば良いのですが、それが無い場合もあります。

 

例えば、勤務先が個人企業で税金の申告をしっかりとしていないというようなケースです。

 

交通事故の被害者がしっかりと働いていれば、勤務先がルーズで書類がないという理由で、休業損害を請求できないというのはおかしいですよね。

 

そのため、過去の裁判例でも、税金の申告の資料がなくても、損害が実際に生じていればこれを認めた事案も多々あります。

 

そのため、今回の事案でも同じケースだと考えて引き受けることはあり得ます。

 

結局、弁護士が、その仕事や社会的な経験・知識に基づいて、合理的な事情があるのか判断するしかないことになります。

 

独立・開業当初は、経験が浅かったり、仕事がすくなかったりで、欺されやすい要素があるので特に狙われやすいようです。

 

おそらく、似たようなトラブルは、他の業界で独立・開業する場合にもあるのでしょう。

 

これから、独立・開業する可能性のある方々は、お気をつけ下さい。

 

「弁護士のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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緊急事態宣言と裁判

コロナウィルス感染の増大を防止するために、一都三県で緊急事態宣言が出ましたね。

 

飲食店など一定の職種に限っての時短営業など、春先の緊急事態宣言よりも緩やかな内容となっているようです。

 

経済の維持と医療崩壊防止のバランスを考えたものでしょう。

 

春先は全国的に裁判所の期日が約1ヶ月間取り消されました。

 

一見、1か月間、裁判をやらないだけなので、大きな影響はないように見えます。

 

確かに、営業そのものが停止されたり、時短される飲食業と比べると影響は少ないでしょう。

 

ただ、この期日の取消の負担は、私たち法曹関係者には遅れて大きな負担となってきます。

 

なぜなら、期日が取り消されて裁判が止まっている間も、新たなご相談があり、裁判所に訴訟や調停の申立をしていくからです。

 

裁判、調停、自己破産、個人再生などの申立の中には、緊急性が高いものがあります。

 

早く進められれば良いのですが、裁判所での手続は、オンラインやテレワークで出来ないことが多く、結局全ての事件が遅れていくことになります。

 

その春先の遅れが、最近になって、やっと取り戻せそうになってきたところです。

 

もし、全国に緊急事態宣言が広がって、また期日が取り消されたら今度は取り戻すのに1年くらいはかかりそうです。

 

医療崩壊ほど直接命に関わる問題ではありませんが、やはり人と人との紛争や自己破産は、間接的には生死に関わることもあります。

 

全国に緊急事態宣言が広がっても、このような春先の苦い経験を味わっているので、裁判の期日取消まではされないのではないかと予想されます。

 

実際、緊急事態宣言が出されている、東京地裁などで期日を取り消したという話は今のところ聞いていません。

 

影響が少ないように見える裁判手続においても、実は、緊急事態宣言は重い負担となっています。

 

裁判所の手続といっても、普通の民事裁判では弁護士だけが出頭することが多いので、感染リスクは少ないと思われます。

 

ただ、ご本人が出頭されるときには、それぞれの弁護士が発熱などの体調不良がないか、ていねいにお聞きしています。

 

調停手続では、狭い待合室に長時間大人数が待っていることはリスクが大きいでしょう。

 

そのため、現在は、待合室の数を増やしたり、2時間の枠で行っている調停を短めにするなどして、感染防止を図っています。

 

当事務所でも、相談が終わる度に机を除菌したり、プラズマクラスター機能のある空気清浄機を置いたり、換気扇を1日中回し続けたりなど、感染防止の対策をとっています。

 

コロナ感染防止を徹底しつつ、経済を止めてしまわないように、それぞれが耐えて頑張っていきたいものですね。

 

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民法改正の講師をして

急に寒くなってきましたね。

 

日本海側では大雪のようですが、静岡では晴れの日が続いています。

 

私は「朝の気温が5℃!」と寒がっていますが、全国の気温を見ると静岡は本州で一番暖かいようなので、文句は言えません・・・

 

今年の4月1日から民法の債権法の分野の改正法が適用されるようになりました。

 

全日本不動産協会(静岡県本部)が宅地建物取引士の資格を持つ方々へ法定講習をしており、民法改正も講習を行う予定でした。

 

宅地建物取引士は、宅地又は建物の取引の専門家として売買契約や賃貸借契約のときに重要事項を説明するなどの業務を行う資格です。

 

重要な業務を行うことから、民法や宅地建物取引業法などにも精通している必要があるため、法定講習を開くということです。

 

ところが、今年は、コロナウィルス感染防止のために一時講習の開催をストップしていました。

 

ただ、民法改正は非常に重要なため、感染防止の対策をとって行うことになりました。

 

そのため、講師の私(谷川)の前に透明なアクリル板を立てて飛沫防止対策をとって講習を行いました。

 

下の写真だと透明度が高くて、良く見ないと分からないかもしれません。

 

まず、静岡市の会場の写真です。

会場は、静岡県男女共同参画センター「あざれあ」のホール。

 

密にならないために、100人の受講者のために、300人入る会場を用意していただきました。

 

画面右側の幕の裏から出ていくのが、いつもと違って新鮮でした。

 

こちらが沼津会場の写真。

沼津駅前のプラザヴェルデのホールで行いました。

 

そして、浜松会場。

浜松駅前のアクトシティ浜松のホールで行いました。

 

改正の内容としては、例えば、今年の3月31日までは「瑕疵担保責任」と言われていたものが「契約不適合責任」と言葉も法的性質が変わっています。

 

売主の責任を判断するときの基準や責任の範囲が大きく変わっため、皆さん真剣に聞いていただけました。

 

「パネルを外して受講される方に臨場感を感じていただける日が、できるだけ早く来ると良いな」と改めて思わされました。

 

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