【離婚の理由】 度を過ぎた宗教活動を理由に離婚できるの?
夫又は妻の宗教活動が常識の範囲を超えて、家族に迷惑をかけているのですが、それを理由に離婚できるのでしょうか。
弁護士からのアドバイス
たとえば、妻がある宗教に入信して、小学生の子供を連れて、時には学校を休ませてまでして布教活動を一生懸命行っていたとします。
夫としては、その宗教の価値が理解できず、夫婦の間で喧嘩が絶えません。
このような場合に、強制的に裁判で離婚できるのでしょうか。
1 信教の自由との関係
信教の自由は、憲法で認められた正当な権利です。
そして、夫婦は対等であるとともに、それぞれ独立した人格を持った人間ですから、それぞれが信仰をする自由があります。
ですから、夫婦は互いに信仰や宗教活動についても許し合うことが求められ、信仰自体を理由として離婚が認められることはありません。
2 宗教活動が離婚原因となる場合
信仰の自由が保障されているからといって、夫婦間で宗教活動全てが無制約に認められるというわけではありません。
夫婦には相互に協力・扶助をして家庭を維持していく義務があります。
ですから、例えば妻が、宗教活動に過度に入り込んで、家庭内の家事を放棄して、子供を学校へも行かせずに布教活動に連れ出し、家事にも子供の教育にも支障を来したとします。
ここでは、宗教の種類・教義とは関係のないこと、つまり「家庭や子供の教育をかえりみない態度」によって夫婦関係に修復できないほどの傷が生じていると言えます。
従って、この場合には信教の自由に立ち入ることなく判断ができ、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、裁判での離婚が認められます。
どのような場合に裁判離婚が認められるかは個別に判断するしかありません。
その判断基準としては、信者である配偶者の宗教活動の程度、信仰に基づく行動の内容、夫婦生活や子供に対する影響の程度などが考慮されることになります。
3 親権について
離婚が認められる場合でも、親権は別の問題であることに注意する必要があります。
宗教の内容や活動方法にもよりますが、子供が小学生以下で判断能力に乏しい場合には、母親と同居していれば、母親に親権が認められることが多いです。
その宗教の教義に嫌悪感を持っている夫は、つい、当然に自分の方が父親として適切であり、親権者となれると思いがちです。
確かに、子供が十分な判断能力を有しており、父親と同居していて、父親との生活を望んでいるような場合には、父親に親権が認められたケースもあります。
しかし、幼い子供の多くは母親と同居していることが多く、母親の監護(かんご)が必要ですから、母親が親権者となる場合が多いのです。
宗教活動それ自体が明らかに違法であり、母親がそれをしていれば、子供の親権者として適切ではないと言えるでしょうが、そのようなケースは少ないと思われます。
ですから、父親側としては、この点も十分に考えて、離婚の請求をしていく必要があります。
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