契約の成立について

民法改正(令和2年4月1日施行)

契約の成立について、これまでの裁判実務や社会通念を条文に生かすように改正しました。

 

1 契約自由の原則規定の新設(521条・522条2項)

契約自由の原則を規定しました。

私たち、契約をする当事者は、法令の制限内で自由に契約内容を設定することができます(521条)。

また、契約は原則として法律の定める要式に従う必要はなく(不要式行為)書面・口頭など自由な方式で締結することができます(522条2項)。

これは、旧法の下でも認められていた原理原則を、条文で明文化したものです。

 

2 契約の原則的成立要件の規定

契約が申込と承諾により成立することを明文化しました(522条1項)。

申込の撤回が許されていない場合(承諾の期間を定めてした申込など)であっても、申込者が「撤回権する場合がある」などと撤回権の留保をしている場合であれば、申し込みの撤回は可能です(523条1項但書、525条1項但書)。

 

3 対話者間の申込・承諾に関する規定の新設

対話者間での契約の申込・承諾について、常識に適した規定を新設しました。

対話者間で期間を定めないでした申込は、会話継続中は何時でも撤回が可能です(525条)。

原則として、承諾なしに対話が終了すると申込は効力を失います(525条3項本文)。

但し、その場合でも、申込者が効力を失わない旨表示したときは、終了後も効力を有し(525条但書)、相当期間は撤回をすることができません(525条1項)。

 

4 申込者死亡等の場合の意思表示の効果(526条)

申込者が申込の通知を発した後に死亡(意思能力喪失・制限)した場合にも申込自体は有効に行われています。

そこで、以下の場合に限って申込が効力こととしました。

つまり
① 申込者が死亡したときは効力を失う旨表示していたとき
② 相手が承諾の通知を発する前に死亡を知ったとき
には、相手は申込が有効だと信頼する関係にありませんから、その申込は効力を生じないこととしました。

 

5 隔地者間の申込・承諾の到達主義

旧法では、承諾の意思表示の効力は発進のときに生じるという発信主義を採用していました(旧526条1項)。

この規定には合理性に疑いがあったため、これを削除し、承諾の意思表示も相手に到達したときに効力が生じるという到達主義の原則(97条1項)によることとしました。

 

6 承諾の通知がない場合の意思実現による契約成立

契約の中には、申込者の意思表示又は取引上の慣行で承諾の通知が不要とされている場合があります。

この場合には、契約の履行に着手するなどの承諾の意思表示と認めるべき事実があったとき(意思実現行為があったとき)に契約は成立します。

 

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