契約の効力について~同時履行の抗弁権・危険負担など

民法改正(令和2年4月1日施行)

同時履行の抗弁権、危険負担、第三者のためにする契約について、取引実務に合うように条文の内容を変えました。

1 同時履行の抗弁権の修正(533条)

同時履行の対象となる債務に双務契約に基づいて発生した債務に加えて、「債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。」ことを明文化しました。

その結果、契約不適合の場合の損害賠償請求もこの「債務の履行に代わる損害賠償の債務」の一環として当然に含まれます。

そのため、旧法の瑕疵担保責任の損害賠償債務について533条を準用する規定(旧法571条)が必要なくなったため、これを削除しました。

 

2 危険負担規定の改正(536条)

双務契約の一方の債務が消滅しても、他方の債務は残るという債権者主義には不合理な取り扱いという批判もありました。

そこで、債権者主義を定めていた旧法の規定(旧534条、旧535条1項・2項)を削除して、債務者主義に統一しました。

その上で法的構成に変更を加えて、旧法では危険負担を反対給付債務の消滅としていたところを、反対給付債務の履行拒絶権としました。

もし、双務契約における当事者の一方が債務を消滅させたいときには、新法の解除規定によることが予定されることになったため、整合性を持たせることにしたものです。

 

3 第三者のためにする契約の改正(537条・538条)

契約の時に、権利を取得する第三者が①存在しなかったり、②特定していない場合でも、第三者のためにする契約は効力を生じることを規定しました(537条2項)。

そのため、①胎児や設立中の法人も「第三者」となりますし、②懸賞論文の受賞者も「第三者」となります。

第三者のためにする契約を締結した後でも、契約当事者は債務不履行があれば原則として契約を解除することができます。

もっとも、第三者の権利が発生した後はその利益保護を考慮する必要があるため、債権者は第三者の承諾を得なければ解除できくなります(538条2項)。

 

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