売買の手付の規定について

民法改正(令和2年4月1日施行)

売買の手付けに関する規定を判例・実務に沿って改正しました。

手付(557条1項)

旧法の手付けに関する規定ついて、以下の3点の改正を行いました。

① 手付倍戻しにつき「現実の提供」を明文化

手付けを受け取った契約当事者は、受け取った手付けを含めて、手付けの2倍の額の金額を戻せば契約を解除することができます(手付け倍戻し)。

この解除をするための手付けの返還は、旧法の下でも、相手が受け取ろうと思えば受け取れる状態に置くこと(現実の提供)が必要だとされていました。

改正法は、この実務の運用を明文化したものです。

 

② 履行着手者からの解除を明文化

旧法の条文では、当事者の一方が履行に着手した後は手付け解除ができないとされていました。

この条文通りだと、履行に着手した当事者からの解除もできないことなりますが、旧法下での最高裁の判例は、履行着手者からの解除は認めていました。

この解除権の制限は、履行に着手した者の利益を保護するためのものであるため、その者が構わないという以上、解除を認めるべきだからです。

そこで、条文をこの最高裁の判例に合わせて「相手方が契約の履行に着手した後」のみ解除を制限する形として、履行着手者からの解除を認めることを明文化したものです。

 

③ 履行の着手の存否についての主張立証責任の明文化

手付けを放棄(手付け損)又は倍額を返還(手付け倍戻し)すれば、原則として契約の解除はできます。

この解除の有効性を「履行に着手していた」と主張して争う場合には、争う側が履行に着手していた証拠を提出する責任(立証責任)があることを明文化しました。

 

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