【法学部講義4】裁判員になってしまったらどうすれば良い?

1 くじで裁判員・補充裁判員に選ばれた後どうなるの?

→ 裁判所で手続や義務などについて説明をしてくれる。

 

2 裁判を行うのは地方裁判所の事件

→ 簡易裁判所や控訴した高等裁判所、上告した最高裁判所では行わない。

 

3 何か費用はもらえるの?

→ 交通費や日当(報酬ではない)、遠隔地の場合の宿泊料などの費用をもらえる。

 

4 裁判員裁判では何日拘束されるの?

→ 被告人が自白している場合(自白事件)~平均2.7回(日)

→ 被告人が否認している場合(否認事件)~平均4.8回(日)

 

5 どんな事件の審理を担当するの?

→ 法定刑に死刑、無期懲役を含む犯罪 e.g.殺人(死刑、無期又は5年以上の懲役)

→ 死刑、無期、短期1年以上の犯罪で故意の犯罪行為によって被害者を死亡させたもの e.g.傷害致死(3年以上の有期懲役)

 

6 どんな服装で行ったらいいの?

→ 裁判員は法服は着ない

 

7 法廷に入ったらまずはどうすれば良い?

→ 座る位置は、裁判官を挟んで3人ずつ、裁判員の後ろには3人ずつ補充裁判員が座る。

 

8 忘れてはいけない2つの原則

(1)無罪推定の原則
→ まずは、被告人は無罪と推定して、それでも有罪と言い切れるだけの証拠があるのかを検討していくという考え。

(2)証拠裁判主義
→ 「何となくあやしい」は絶対ダメ。証拠からしっかりと判断する。

 

9 自白の信用性に注意

→ 警察署や検察庁では自白しているのに、法廷で無罪を主張するケースも珍しくない。

 

10 被害者や遺族も法廷に居る可能性があることを忘れずに

→ 被害者や遺族が傍聴席に居るのは珍しくないので注意が必要。

 

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【法学部講義3】ある日、裁判所から裁判員候補者になったとの手紙が・・・

1 普通の裁判と裁判員裁判

→ 裁判員裁判の対象は地方裁判所で審理する重大な刑事事件だけ。

→ 重大な事件とは、例えば殺人罪・強盗致傷罪・現住建造物放火罪など

 

2 選任手続の始まり

→ 事件が起きる前から、裁判員選任の準備は始まっている。

→ 毎年12月頃に、送られてくる通知書と調査票がポイント

 

3 通知書と調査票

(1) 「通知書」って何を通知するの?

→ 「大きな事件が起こったら来年1年間裁判員候補者として裁判所に来てもらうかも知れませんよ」という連絡。

(2)「調査票」で聞くことは?

→ 聞くポイントは3つ。

① 就職禁止事由にあたるか?

② 1年を通じての辞退希望の有無と理由

③ 裁判員になれない特定の月がある場合,その辞退希望の有無と理由。

(3)「調査票」を無視して返送しなかったら?

 

4 裁判所が都合の良い人を選んで通知書等を送ってるんじゃないの?

→ 裁判所の判断で選ぶことは無く、市町村や裁判所・検察官・弁護士が関与しつつ最終的にはくじ引き。

 

5 裁判員候補者に選ばれた後の1年間はどう過ごす?

→ 候補者になったことを「公」にしてはいけない。

 

6 裁判所に呼び出されたらどんな質問をされるの?

→ 面接で、事前に提出した調査票・質問票の内容や事件に関するその段階での知識の程度、意見があればその内容など、様々な質問がされる。

 

7 質問後に裁判員はどうやって選ぶの?

→ 一定の手続をふんだあとで、くじ引きをする。

 

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【法学部講義2】あなたも突然「犯人」扱い?

1 取り調べられるケース

→ 逮捕される場合と任意同行(出頭)

 

2 被疑者(容疑者)取調べと参考人取り調べ

→ 被疑者には黙秘権があるが、参考人には黙秘権はない。

 

3 弁護士と弁護人

→ 弁護士は資格の名前=税理士・公認会計士

→ 刑事事件で裁判で職務を行う弁護士を手続上は「弁護人」と呼ぶ。

→ なお、民事訴訟で裁判で職務を行う弁護士は「原告代理人」「被告代理人」と呼ぶ。

 

4 警察の出頭要請を拒否すると逮捕される?

→ 正当な理由なき出頭拒否を理由に逮捕できるのは,30万円以下

→ もっとも実務上は,警察からの任意出頭要請に応じなかった場合には、逃亡又は罪証隠 滅のおそれがあるとして、疑いの内容によっては逮捕状が発布される

 

5 私も皆さんも常に逮捕の危険がある

→ 交通事故・痴漢冤罪・夫婦喧嘩・変なバイト(知らないうちに受け子の共犯に)に要注意。

 

6 逮捕の種類

→ 令状主義が原則。裁判官が令状を発布(令状当番)

→ 例外としての現行犯、準現行犯、緊急逮捕

 

7 逮捕されてしまったら

→ 報道は「容疑者」だが、法律上の正式な名称は「被疑者」

→ 「当番弁護」、「被疑者国選」とは?

 

8 取り調べはすぐに始まる

→ 逮捕の瞬間から取り調べは始まっている。

→ どうして、犯行をやっていない人が自白してしまうのか?

 

9 マスコミ報道にご用心

→ 逮捕・勾留ではどのルートから報道されることになる?

→ 報道で世間が持つ印象と、実際の事件の内容とのギャップ

 

10 逮捕の後には「勾留(こうりゅう)」が待っている

→ 裁判官の行う「勾留質問」とは?

→ 勾留期間はどれくらい?と面会がどの程度できる?

 

11 保釈って何?

→ 保釈の意味と保釈されるための要件

→ 保釈金の意味と相場

 

12 起訴されたらおしまい?

→ 起訴されると呼び名が「被疑者」から「被告人」に⇔民事の「被告」と区別

→ 起訴するかどうかは検察官の判断で決まる(起訴独占主義)

→ 起訴=有罪か?最近の刑事裁判の傾向は?

 

13 弁護人も利用されない注意が必要

→ 被疑者・被告人の変な依頼には常に注意が必要。

 

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【法学部講義1】弁護士・検察官・裁判官って何をやる仕事なの?

1 法曹って何?

→ 弁護士・検察官・裁判官の3者を指して法曹3者と言う。

→ いずれの仕事も、「司法試験」という同じ試験に合格し,その後「司法研修所刑」で 学んで、通称「2回試験」という最終国家試験に合格することが必要。

 

2 検察官の仕事は?

→ 検察官はHERO?

 
→ 身柄事件と在宅事件

 

3 裁判官の仕事内容は?

→ 司法権を担う役割

→ 民事事件と刑事事件の裁判

→ 裁判所書記官の役割とは?

 

4 弁護士の仕事内容は?

→ 民事事件での仕事と刑事事件での仕事の違い。

→ 「国選弁護人」とは?⇔「国選弁護士」という資格は無いことに注意

→ 弁護士の仕事は危険?~刑事事件より民事事件の方が危険かも?

→ 弁護士は儲かる仕事?

 

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宅地建物取引士の法定講習の講師をして

「宅地建物取引士」って聞いたことありますか?

 

実は、今まで「宅地建物取引主任者」=宅建免許と呼ばれていた資格を、今年(2015年)の4月から大幅に変更して、「宅地建物取引士」としたんです。

 

監督官庁としては、「宅地建物取引士」を士業の一つと位置付けて、試験の比重も法律科目を重視した上で、より信用性と倫理観を持って仕事をしてほしいという考えのようです。

 

宅地建物取引士の試験自体は今年が初めてです。

 

ただ、講習会でのカリキュラムについて

① 私が担当する「紛争事例と関係法令及び実務上の留意事項の講義時間が1時間30分から2時間に延長されたこと

② 「宅地建物取引士使命役割」という科目が新しく講習科目に加えられたこと

から推測できます。

 

この更新のための法定講習は、5年ごとに受けることが必要です。

 

その法定講習はほぼ1日かけて行われ、典型的なスケジュールと科目は、次のように組まれています。

 

・9:30~11:30   紛争事例と関係法令及び実務上の留意事項

・11:40~12:40  改正税制の主要な改正点と実務上の留意事項

・13:30~14:10  宅地建物取引士の使命と役割

・14:20~15:50  改正法令の主要な改正点と実務上の留意事項

・16:00~16:30  受講者参加型講義

 

この講習は、静岡県から委託を受けて、「公益社団法人 全日本不動産協会」と「公益社団法人 宅地建物取引業協会」の2団体が開催しています。

 

回数は、年に4~5回で、県内各地で実施しています。

 

私は、前者の「公益社団法人 全日本不動産協会」で、法律科目の講師を約5~6年前(2015年4月現在)から行っています。

 

講義内容としては、不動産に関するトラブルの解決方法法律について、できるだけ分かりやすく、楽しくお話しするよう心がけています。

 

ただ、受講する方の中には、不動産業を長年経営している方も多いので、不動産取引実務と異なることを言ってしまうと、信用を失ってしまうので、しっかりと準備はしていかなければなりません。

 

ただ、私が裁判所から「破産管財人」という社長に代わって会社を清算する仕事を数多く引き受けているため、自分で不動産を売ることも多いんですね。

 

その仕事が、講義をする時に、とても役に立っています。

 

私が法定講習をやる中で、目標は二つあります。

 

1 講習受講者を絶対に眠らせないこと

 

2 私が講義を終えたときに、受講者の方々から自然に拍手が出るような講義をすること

 

です。

 

受講者を眠らせないためには、不動産の取引の仲介や売買、賃貸する時に、ミスをするとどれくらい商売に影響するか、どれくらいの損害賠償の義務を負うかをリアルに話します。

 

たとえば、「不動産業者の方が、仲介に失敗しただけで、いきなり1億円の支払いを判決で命じられたケースがあります」などと言って、目をさましてもらうんですね。

 

ちょっと、脅しっぽいかもしれませんね。

 

また、「拍手」をいただけたかどうかは、その日の自分の講義内容が聞いている方にとって役に立ったかどうかのバロメーターとして大切だと思っています。

 

最初の頃には、拍手をいただけないこともありましたが、少しずついただける回数は増えてきて、今ではほとんどの場合に拍手をいただけるようになりました。

 

私の経験だと、不動産業者の方の食いつきが良いのは、

① 業者間売買や仲介の時に、業者の責任が問われた裁判例のお話し

② 裁判例で指摘されている業者の説明義務などの注意事項のお話し

③ 民法改正見込み(2015年4月時点)で、不動産の賃貸・売買に関連する分野のご説明

などでしょうか。

 

せっかく講義をするのですから、出席された業者の方には、講義を楽しむとともに、「ここへ来てトクした!」と思っていただきたいのです。

 

この講義の場も、不動産業者の方の信頼もいただきつつ、自分の勉強にもなる貴重な場だと、私は考えています。

 

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弁護士なのにどうして講師なんてしているの?№1~学生時代・サラリーマン時代

私は高校3年生の進路指導の時に、「文学部で国文学を学びたい」と強く希望しました。

 

幼稚園の頃からフィクションからノンフィクションまでジャンルを問わず本を読んでいました。

 

その中でも、私は、芥川龍之介や太宰治などの繊細で、孤独な雰囲気が大好きだったからです(変人と言われてもしょうがありませんね・・・)。

 

ところが、担任の先生(政治経済を専門に教えていた先生です)と両親から、猛反対されました。

 

「文学なんかでメシが食えるか!」

 

まさに正論です。

 

それでも、私がどうしても折れようとしなかったところ、父親から最後通告を受けました。

 

「文学部へ行くんだったら学費も仕送りも出さない。」

 

そこで、さすがに頑固な私も、「高校3年生の信用ではアパートすら借りられないだろうし、今から奨学金を申し込んでも相当に難しいだろう」と考えました。

 

そこで、やむを得ず、現実的には経済学部か法学部を選択せざるを得なかったのです。

 

もう、文学部でなければ学部などどこでもよかったので、担任の先生と両親が学部を決めました。

 

それが、当時「潰しがきく法学部」だったわけです。

 

担任の先生が法学部出身だったことも関係したのだとは思います。

 

私は、学校の勉強というものに目的意識を感じていなかったので、勉強の場は授業と無理矢理、通わされた英語と数学の塾だけでした。

 

ほとんどの時間は、(こっそり)好きな本を読むか、ギターで曲をコピーしたり、作詞・作曲や小説を書いたりしていました。

 

そのため、塾に行かされていた英語と数学、子供時代からの読書で対応できた国語の3科目だけは成績が、そこそこ良かったのですが、他の科目は惨憺(さんたん)たる有様でした。

 

特に、記憶する時間を必要とする世界史・日本史などの成績はひどかったことを覚えています。

 

一応、国立大学も受験しましたが、合格するはずもなく、英語・数学・国語で勝負できる私立大学に絞らざるを得ませんでした。

 

「どうせ、文学を勉強できないんだから、大学なんてどこでも良い」と考えていたので、3つくらい受験して、たまたま合格した大学に入学したのです。

 

ところが、大学に入って音楽のサークルで自分たちで作詞作曲をしたり、文学部のゼミに参加したりすると、大学が楽しくてたまらなくなりました。

 

大学では、学部を問わずに集まったサークルの友達と、酒を飲みながら音楽や本についての議論を一晩中したりしました。

 

また、ヘタクソながら音楽のライブをやったり、仕送りだけでは生活できなかったので、数多くのアルバイトを経験しました。

 

授業は、出席をとる授業以外は、自分が学びたいと思う授業にだけ出るという自由(いいかげん)な生活をしていました。

 

若さ故だとは思いますが、「あんなバカな生活は二度とできないな」と卒業するときに思った記憶があります。

 

その結果、私の成績は、文学部で履修できる科目はすべてA評価をいただいたものの、法律科目のほとんどはC(合格ギリギリ)という成績でした。

 

その成績を引っ提げて、企業の就職活動をすると、面接官から「キミ、大学の法学部で一体何をやっていたの?」と、すべての面接が圧迫面接となってしまいました。

 

当然ですよね。

 

もちろん、大手の民間企業には、どこにも就職できませんでした。

 

そこで、私は「今の自分をもっとも高く評価してくれるところはどこだろう?」と大学4年生の4月になって考えました。

 

さすがに「作家になる」というのは、余りにもリスキーで選択肢から早々に外しました。

 

そこで、試験の一発勝負で就職させてくれる公務員という仕事が、一番自分を公平に評価してくれるのではないかと考えたのです(当時は、面接では5%程度しか落ちませんでした。)。

 

国家公務員のうちキャリア(国家一種)は、自分の大学からして非現実的です。

 

かといって、国家二種というと広範囲で転勤があります。

 

また、地元の市役所も検討しましたが、私の年度にはその市役所では募集ゼロだったので、受験できませんでした。

 

そこで、当時住んでいた東京都庁と実家のある静岡県庁を比較して、どちらかというと入るのがやさしそうな静岡県庁を選んだわけです。

 

そこから試験までの2カ月半は、実務教育出版の公務員テキストを購入し、図書館に毎日通って猛勉強をしました。

 

友人からは、あまりの生活の変わりように「谷川は頭がおかしくなった。」と言われました。

 

試験を受けた後の感触は非常に悪かったのですが、結果的に静岡県庁に合格できました。

 

理由は、おそらくですが、

本を大量に読んでいたことにより知識・理解力・判断力・想像力が自然についていたこと

文系の中では数学を得意とする方だったこと

から、「判断推理」「数的推理」という得点が難しい科目で高得点をとれたことだったのだと思われます。

 

そういう意味では、高校時代に数学の塾に通わせた両親のおかげもあったわけですね。

 

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弁護士なのにどうして講師なんてしているの?№2~サラリーマンから弁護士・講師への道

県庁で最初に入った部署が、本庁の福祉を取りまとめる課(主管課と呼んでいました。)でした。

 

そこでの仕事は、とても厳しい面もありましたが、やりがいもありました。

 

もちろん、宮仕えのサラリーマンですから、多くのサラリーマンと同様に、仕事のやりがいと同じかそれ以上に、不本意だったり、つらかったりすることが多くあったのも確かです(でも、「仕事」ってそういうものですよね?)。

 

4月1日に初出勤すると、約半日で「引き継ぎ」なるものが終わり、前任者は熱海へと旅立っていきました。

 

そのころは、一つの係に電話は一つしかありませんでしたから、電話をとるのは新人の仕事です。

 

静岡県内の全市町村や厚生省(当時)からバンバン問い合わせの電話がかかってきます。

 

そして、本庁では自分の担当していている事業については、自分が静岡県で一番詳しいのが当たり前なのです。

 

昨日まで大学を卒業したばかりだった私に、厚生省の担当者は「静岡県の事情はどうなんですか?」と確認を求めてきます。

 

市町村からは、困った案件について「県はどう考えるのか。ご指導いただきたい。」と求められます。

 

「静岡県」というレッテルが突然、私に貼られてしまった訳です。

 

 

こんな時に、もし「仕事」から逃げてしまうと、どこまでも「仕事」が追いかけてきて自分を苦しめる敵になることは直感的に感じていました。

 

そこで、やむを得ず、「仕事に必要な努力は何か?」を分析して、その努力で局面を打開するしかありませんでした。

 

とはいえ、本庁では、4月のはじめのころは、失敗ばかりして仕事のできる上司たち(本庁の主管課にはそういう人たちが集まっています。)に厳しく叱られました。

 

「この失敗は大問題だ。どうするんだ!」と厳しく叱られることも日常的にありました。

 

私が起案する書面は、原型をとどめないほど真っ赤にペンで手直しされて突き返されました。

 

しかし、「逃げることだけはしない」と誓った私は、「絶対に仕事で認めさせてやる!」と心に秘めて、土日返上で(自宅で)自分の担当事業を勉強し続けました。

 

すると、3カ月たったころには、係長から「谷川さんは、新人類じゃなくて、俺と同じ旧人類だな。」とありがたいのかわからない言葉をもらいました。

 

いつの時代も、新人が入ってくると「今どきの若者は理解できない」といろいろなネーミングがされますよね。

 

私の時代は、それが「新人類」という言葉だった訳です。

 

逆に、上司の中には、私がいつも感情を表に出さず、他人に頼らず、自分で分析して仕事をする姿を見て、「若者らしくない!」=「可愛げがない」と悪評価をする人もいました。

 

私自身も、自分の仕事を遂行する能力には自信を持っていましたが、「将来、管理職となって部下をまとめていくという仕事には向いていないのではないか」と自己分析していました。

 

そんな私が仕事をする中で、最も自分の能力を生かせると感じたのは、

① 本庁では、事業がどのような法律や要綱に基づいて行われるのか市町村担当者に説明をするとき

② 税金の仕事をしていた時には、どうして税金を払わなければいけないのか、その計算はどのような根拠に基づくのか事業者の方に説明をするとき

③ 港の管理をしていた時には、港で仕事をする会社に、新規事業の説明をしたり、港湾に関する法律や条例の説明をしたりするとき

でした。

こういうとき、私が説明をすると、相手の顔色が明るくなって「分かりやすかった。ありがとう。」と言ってもらえる回数が、他の人のケースより多いのが感じられたからです。

 

そして、私が静岡県職員として説明をしている根拠は、あんなに興味がなかった「法律」だったのです。

 

そこで、私は「法律を使って人にアドバイスしたり、助けたりすることは、ひょっとしたら自分の能力を最大限に生かせることなのではないか?」と思い始めたのです。

 

そこから、私が「弁護士になること」「法律を使ってできるだけ多くの人にアドバイスすること」への挑戦が始まったのです。

 

ですから、私にとって、講師として法律を教えることは、弁護士の仕事をすることと全く同じ動機に基づくものです。

 

だからこそ、現在も色々なところで法律を教えていますし、今後も「法律をわかりやすく伝える」ことに挑戦していきたいと思っているのです。

 

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日本エクステリア協会の講演をして

講座_01先日(2015年4月)、「日本エクステリア建設業協会」の総会に伴って行われる講演の講師をやらせていただきました。

 

この協会は、外構工事を行っている会社が、情報交換によるより良い工事の実現や取引の円滑化などを目的に結成されたものだそうです。

 

私も、宅建士(宅建免許)の資格更新の法定講習の講師をしていることから、不動産についてはある程度分かっているつもりでした。

 

しかし、外構工事やその製品の製作を行う会社の法的問題となると、視点が全く異なりました。

 

外構工事というのは、建物の周囲の土地、例えば駐車場やフェンスなどの工事をすることです。

 

土地の欠陥自体については、不動産の取引において重要なことなので、いろいろなケースについて裁判例を知っていました。

 

でも、外構工事の場合には、工事それ自体の欠陥が争われるという点では、むしろ欠陥建築訴訟のケースに似た面があります。

 

また、フェンスやブロック塀を境界に建てる場合には、境界をどのように定めるのか、隣家と話がまとまらない場合にはどうするのかなど、特殊な問題があります。

 

更には、クーリングオフの適用範囲が問題となる点では、私が消費者側で悪徳リフォーム業者と争ったときの知識が役に立ったりします。

 

講義をやらせていただくと、ただ法律を知っているだけではダメで、その業界の慣習や考え方、将来の営業についても十分に知識を得なければ良い講義ができないことを感じました。

 

幸い、各会社の方々からは、ご好評をいただき、またどこかで講義(講演)をすることになりそうです。

 

その時のためにと、懇親会では色々な会社の方々と、雑談の他にも、お仕事の話を突っ込んで聞かせてもらい、その情報から次回にはより良い講義ができると感じました。

 

訴訟・講義を問わず、「弁護士はどんな分野にも興味をもって接しなければならないな」と改めて感じさせられました。

 

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大学の講師をしてみて~市民と裁判

私は、ときおり大学の法学部で教えています。

 

大学生が社会人になる前に知っておくと、被害にあわなかったり、役に立ったりする法律知識を教えるのが目的です。

 

特に、講義内容が、法律の知識を事前に必要とするものではないため、大学生に限らず、社会人としての法的知識や予防法務の知識をつける講義としても使える内容にもなっています。

 

講義の回数はだいたい15回程度で、最終回に論述テストを行って採点をしています。

 

そして、教える私だけが評価をするのは不公平なので、生徒にも私が聞きたい授業の印象についてアンケートをとるようにしています。

 

アンケートでは、

「3色のマーカーを使ってホワイトボードに字や図を書く時には、色ごとに意味づけをしてほしい。」

「ホワイトボードの文字が、小さいのでもっと大きく書いてほしい」

というような要望が、今年の講義の改善につながっています。

 

また、学生からも成績をもらうということで、A(優)、B(良)、C(可)、D(不可)での採点を無記名でしてもらうよう大学の事務室に依頼しました。

 

昨年は、35人の学生が、アンケート用紙を事務局の回収簿BOXに入れてくれました。

 

評価内容としては、3名がB(良)、32名がA(優)をつけてくれました。

 

私の学生時代の成績よりもずっと良い成績なのでうれしいですね。

 

それで良い気分になって、今年も頑張っているということです。

 

確かに、疲れている時には、最初の数分くらいは講義のテンションを上げるのに苦労しますが、話し始めると意外とノリノリで楽しくなってしまうのが、私のクセです。

 

このクセを良い方向に利用して、できるだけ多くの学生に、楽しく、分かりやすい法律実務の知識を学んでもらおうと努力しています。

 

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弁護士としての特長を講師で出したい!

弁護士になる前の司法修習(研修期間)や弁護士になったばかりに、先輩から「自分の特長を出していくことが大事だ」とアドバイスされました。

 

複数の先輩弁護士から言われた共通のことなので、おそらく弁護士の世界では大切なことだとは理解できました。

 

たとえば、「重大犯罪の刑事事件の経験が豊富」「企業の再生ならおまかせ」「犯罪被害者の援助なら何でもできる」などでしょう。

 

しかし、私が弁護士をやり始めたころは、「自分の特長」を何にするかが全く決まりませんでした。

 

そこで、私は、いろいろなビジネス書、他分野の専門家の本、自分の挫折や欠点をどう成功に変えたのかの経験が書いてある本を読んでみました。

 

そうして共通する考え方で自分に当てはまるものを集めると

 

「他の人から何気なく評価された言葉を探す。それが自分では気づかない自分のストロングポイントだ」

 

という結論になりました。

 

たとえば、サッカー日本代表の福西選手の本では、自分がプロサッカー選手の中ではスピードが無いことを自覚して、ストロングポイントを探していました。

 

そして、彼が試合を振り返ると、相手選手からボールを奪ったときに

 

「届くのかよ!」

 

と相手選手が声を上げるのを聞いたことを思い出しました。

 

そこで、自分が日本人の中では、黒人選手のような膝関節の柔らかさや伸びがあることや、体が当たった時に自分の軸がずれない体の強さがあることに気づいたんですね。

 

それを自分に当てはめて、考えてみました。

 

そうすると、司法試験の受験勉強をしていた時に、公務員試験の対策をする予備校で法律を教える講師をしていたことにヒントを見つけました。

 

その予備校では生徒からの講師評価アンケートに基づいて、時給を決めたり講師を変えたりしていたんですね。

 

私が、民法の講義を初めてやった年の終わりに、事務局から「民法でこのアンケート結果は前代未聞です!」とほめられました。

 

その結果、私の時給はどんどん上がっていきました。

 

いつの間にか、私の講義は、新人講師の研修用のものとなり、ガイダンスでは、その予備校の「看板講師」と紹介されるようになっていました。

 

そういえば、県庁でサラリーマンをやっていた時代も、本庁で予算獲得のために財政課に施行法律や事業内容を説明する時にも、「説明がわかりやすいから」と上司の代わりに呼ばれることも多々ありました。

 

そうすると、

 

「ひょっとしたら、私は法律をわかりやすく、専門家でない人に説明することに向いているのではないか?」

 

と思うようになりました。

 

そして、もともと私は他の人に「何か大事だと思うこと」を分かってもらうように説明するという行為自体が大好きです。

 

ここまでくれば、弁護士としての私のストロングポイントの一つに、

 

① 相談者の方に事件をどう法律で解決するかわかりやすく説明すること

 

② 専門家でない方々に分かりやすく法律の話をすること

 

が当てはまるのではないかと判断できます。

 

そこで、私は、法律相談で分かりやすく説明することや、色々なところで講義をすることで、自分の特長を出したいと思うようになったのでした

 

現在では、

① 「常葉大学法学部法律学科」の講師

 

これは、大学生に実務としての法律を知ってもらうために、「市民と裁判」というタイトルで裁判員裁判から消費者問題まで、学生が知っておくといつか役にたつと思うテーマを講義しています。

 

もちろん、正式な単位の講義ですからテストもありますし、成績もつけます。

 

問題作成の時には、「誰でも一定のことは書けるけれど、しっかりと差がつく問題」を作るよう毎年苦労しています。

 

初々しい若者を相手に講義することで、私にとってはリフレッシュの時間にもなっています。

 

② 「宅地建物取引士」の免許更新の法定講習の講師

 

これは、昔は「宅建免許」と呼ばれていましたが、平成27年度から「宅地建物取引士(宅建士)」という名称に変わりました。

 

より法律的な知識をしっかりしてもらおうという意図があるようで、私の法律や実務のトラブル解決事例の講義時間が昨年度までは1時間30分だったのですが、2時間に増えました。

 

これは年間5回ほど、不動産業者の方を対象に静岡市内と沼津市内で講義をやっており、もう6年目になっています。

 

さすがに、この法定講習を受けないと免許が消えてしまうため、運営も厳格ですし、出席者の方々も真剣です。

 

民法も改正されて、不動産関係の法律も変わったので、また勉強して教えていきたいと思います。

 

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