契約の解除について

民法改正(令和2年4月1日施行)

契約の解除を、契約の拘束から解放する手段として広く認めるなどの改正をしています。

 

1 債務不履行による解除の改正(541条~543条)

旧法における解除は、債務者がその責任のある事情(帰責事由)によって債務不履行をしたときに、債権者を履行されない契約の拘束から解放しようとしたものです。

そうであれば、債務不履行があれば、それが天災等の債務者に帰責事由がない場合であっても、債権者を契約から解放することが妥当なため、そのような場合も含めて契約の解除ができることとしました(旧法543条但書を削除)。

もっとも、債権者に責任のある事情があるときに、自ら解除して契約から解放されようとすることまで認める必要がないため、このときには債権者は契約を解除することはできません(543条)。

 

2 催告解除の制限(541条)

債務者のわずかな不注意で契約そのものを解消してしまえたのでは、債務者が予測できない損害を被ります。

債務不履行があってもそれが軽微なときには、債権者は債務者に軽微な部分を約束通り履行させることで問題を解決するのが妥当です。

そのため、債務不履行が「契約及び取引上の社会通念に照らして軽微なであるとき」には、債権者の解除権を制限することとしました。

旧法下での判例の趣旨を条文で明文化したものです。

ここでいう「軽微」は一律に定義することはできず、事案に応じて解釈することになります。

条文上には「契約目的を達成できるか否か」は記載されていませんが、これは「軽微」かどうかを判断する上で解釈上の重要な要素となります。

 

3 無催告解除の規定の具体化(542条)

債権者が債務者に履行を催告しないでも解除できる場合(無催告解除)を明確にするために、以下のとおり条文で類型化をしました。

① 債務の全部の履行が不能なとき

② 債務者が債務全部の履行拒絶の意思を表示したとき

③ 債務の一部不能・拒絶があり、残部だけでは契約目的を達成できないとき。

④ 一定の日時や期間内に履行しなければ契約目的を達成できない(定期行為)の場合。

⑤ 債権者が催告しても、契約目的を達成できるほどの履行の見込がないことが明らかなとき

上記の①~⑤については、債権者が債務者に履行をするよう催告して待っていても無意味であるため、無催告解除を認めるものです。

 

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