保証契約No.4~保証意思宣明公正証書の新設

民法改正(令和2年4月1日施行)

一定の保証契約について「保証意思宣明公正証書」によることが必要であることを定めました。

 

1 原則

以下の要件を充たす保証契約については、公正証書により契約をしないと原則として保証契約は無効となります。

 

① 主債務が事業のために負担した貸金等債務であること

この「事業のために」にあたるかは、借主が貸金等債務を負担した時点を基準として客観的事情から判断することになります。

例えば、事業資金目的で銀行から借入をした金銭を、実際には子供の教育費に使ってしまったとしても「事業のために」に当てはまります。

これに対して、奨学金、居住用不動産購入目的で借入をした金銭を、実際には事業資金として使用しても「事業のために」とは言えません。

貸金等債務を負担した時点を基準とするため、その後の使途は影響を与えないということになります。

 

② 保証人が個人であること

 

③ 公正証書は保証契約締結日の前1ヵ月以内に作成すること

事前の作成時期が無制限に認められるわけではないことに注意が必要です。

例えば、保証契約書の日付が4月2日となる場合には、3月2日~4月1日までの間に公正証書を作成することが必要となります。

 

2 例外(465条の9)

以下の①~④の場合には、保証意思宣明公正証書の作成は例外的に不要です。

 

① 法人たる主債務者の理事、取締役、執行役またはこれらに準ずる者

・「取締役」には、社外取締役も含まれます。

・法人を法律上又は事実上代行するだけの者は含まれません。

・株式会社の監査役、法人の監事・評議員等を含まない。

・下記④の個人事業主が主債務者となる場合とは異なり、事業に従事している配偶者は含まれません。つまり、公正証書の作成が必要となります。

 

② 株式会社における以下の者

ア 総株主の議決権の過半数を有する者

イ 親会社の議決権の過半数を有する者

ウ 親会社A+親会社の過半数株主Bのもつ株式が、総株主の議決権の過半数にあたる場合のB

上記ア~ウのいずれの場合でも、株主として会社を実質的に支配していることは要件となっていません。

 

③ 株式会社以外の法人で上記に準ずる者

 

④ 主債務者が個人である場合における以下の者

ア 主債務者と共同して事業を行う者

事業の遂行に関与する権利を有し、利益配分など事業の成功・失敗に直接の利害関係を有する者をいいます。

単なる事業承継予定者というだけでは「共同して事業を行う者」には含まれません。

 

イ 主債務者が行う事業に現に従事している主債務者の配偶者

事業に現に従事している配偶者か否かは、保証契約の締結時を基準に判断します。

保証契約の締結に際して一時だけ従事した者や書類上だけの専従者はここに含まれません。

籍を入れていない事実婚の配偶者は、このでの「配偶者」に含まれません。

 

3 公正証書作成手続(465条の6)

 

① 公証人による保証意思の確認

公証人は、公正証書を作成するにあたって、保証人が自分の責任をしっかりと認識して保証契約をしているかチェックします。

まず、保証契約のリスク、例えば、居住用不動産の競売、給与・預金の差し押さえの可能性などを保証人が理解しているのかを見極めます。

次に、保証人が、主債務者の資力等の情報提供義務に基づく事実(主債務者の財産の状況)を認識・理解しているかを見極めます。

更に、保証人になろうとした経緯に不自然な点がないか(保証人の真意でないのに保証契約を結ばされたり、欺されていたりしないか)を確認します。

公証人は、以上のチェックをした上で、保証人の保証意思が確認できないときには公正証書の作成を拒絶する義務があります。

公証人に、保証人になる人が深刻な不利益を受けないか保護する役割を与えたことになります。

 

② 保証人予定者から公証人への法定事項の口授

保証人予定者は、例えば、主債務の債権者と債務者が誰か、主債務の元本、利息、違約金、損害賠償等の内容はどのようなものか、保証人に全額弁償責任があることを口頭で言わせて、その内容を理解できているか確認します。

 

③ 公証人による口授の筆記

公証人は、口頭で保証人が法定事項を言ったことを筆記して記録します。

 

④ 公証人から保証人予定者への読み聞かせ又は閲覧

公証人は、その筆記事項を保証人予定者に読み聞かせたり、見せたりして内容に間違いがないか確認させます。

 

⑤ 保証人予定者の署名・押印等

ここまでの手続により保証人予定者は保証契約の内容を理解しているはずであるため、その確認のために署名・押印等を行います。

 

⑥ 公証人の法定の方式によった旨の付記と署名・押印

公証人は、法律に定めるやりかたで公正証書を作成したことを付記して、署名・押印をします。

 

4 公正証書の法的性質

この保証意思宣明公正証書は、保証意思の事前確認であるため、保証契約の成立のためには別途、書面により保証契約を締結することが必要です。

そのため、この公正証書には、執行認諾文言を付すことはできず、債務名義とはなりません。

 

5 求償債務の個人保証の場合にも公正証書が必要(465条の8)

事業のために負担した貸金等債務を保証した場合の保証人の債務者に対する求償権について保証をするときにも、債務者が個人であれば保証意思宣明公正証書を作成することが必要です。

例えば、信用保証協会の債務者に対する求償権債権の個人保証人になる場合には、事前に保証意思宣明公正証書を作成する必要があります。

 

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