経過措置規定~施行日前であっても新法が適用されるもの

民法改正(令和2年4月1日施行)

新法の施行日よりも前に結ばれた契約であっても、新法が適用される場合について定めています。

 

1 時効の中断・停止(時効の更新・完成猶予)の規定

時効の中断(更新)・停止(完成猶予)の原因となる事由の発生時点を基準時とします。

 

2 法定利率の規定

利息が発生した時点、遅滞が生じた時点を基準とします。

例えば、旧法時に利息が発生すれば、新法施行後も5%が適用されることになります。

逆に、旧法時に発生した債務でも利息発生や遅滞が令和2年4月1日以降であれば、新法を基準とした利率が適用されます。

中間利息の控除(新法417条の2・同722条1項)は、中間利息の控除の対象となる損害賠償請求権が生じた時点を新法適用の基準時とします。

 

3 弁済の充当に関する規定

債務発生時ではなく、弁済時を基準とします。

相殺による充当の場合にも、弁済の場合と合わせて、相殺の意思表示の時点を基準とします。

 

4 定型約款に関する経過措置

施行日前に締結された定型取引に係る契約につても新法を適用します。但し、旧法の規定によって生じた効力は妨げられません。

この例外として、施行日の前日前に、契約当事者の一方が反対の意思表示をした場合には旧法が適用されます。

 

5 賃借人による妨害停止等の請求をする場合

賃貸借契約が施行日以前にされた場合でも、施行日以降に第三者から妨害等を受けて権利行使する場合には新法を適用します。

 

6 不法行為による損害賠償請求の場合

施行日に20年の除斥期間が経過していなければ新法を適用して、その20年については消滅時効期間として取り扱います。

消滅時効として扱えば、更新・完成猶予が認められて、被害者の損害賠償請求権が維持しやすくなるため、被害者保護のために定められました。

同様に、人の生命・身体の侵害による不法行為の主観的起算点からの消滅時効についても、新法の施行日に3年の時効が完成していなければ、より期間が長い新法を適用して5年とします。

 

7 代理行為に関する規定

改正法の施行日前に代理権の発生原因が生じた場合には、旧法を適用します。

 

8 債権者代位・詐害行為取消権に関する規定

被代位債権の発生時を基準とします。

仮に、代位行為が新法施行後だったとしても、被代位債権の発生時が令和2年3月31日以前だった場合には、旧法を適用します。

詐害行為が行われた時点を基準とします。これは、取消権者や転得者が複数存在する場合にも、一律に詐害行為時を基準として、規律を明確にしたものです。

 

9 差押えを受けた債権を受動債権とする相殺の場合

自働債権が生じた原因が施行日前であれば旧法を、施行日後であれば新法を適用します。

これによって、相殺をしようとする者が適用法令を予測して行動することができるようになるからです。

 

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