無効と取消の規定を修正

民法改正(令和2年4月1日施行)

無効と取消に関する規定が改正されました。

 

1 原状回復義務(121条の2)

(1)1項

・最初から無効な法律行為や取り消しにより無効とみなされた行為については、旧法では不当利得の規定によることになっていました。

・しかし、それによると、売買契約で売主も買主も無効の原因を知らずに物を購入した場合に規定上、不公平な結果となります。

・例えば、ミネラルウォーターの売買の場合、買主がミネラルウォーターを全部飲んでしまえば返さなくて良いの対し、売主は代金を返さなければならないということになるのです。

・そこで、無効な行為により債務が履行された場合(先ほどの例では、ミネラルウォーターの引渡と代金の支払い)には、お互いにそれを返し合うという原状回復義務の条項を新設しました。

 

(2)2項

・贈与のような無償行為の場合は、無効だから消費してしまった物を返せというのには無理があります。

例えば、未成年からミネラルウォーターをもらって飲んだときに、後で取り消されてミネラルウォーターの代金分を返すというのは、常識とは反します。

・そこで、ミネラルウォーターをもらった(贈与)人は、現に利益が存する範囲での返還で足るとして、飲んでしまったら返さなくて良いことになりました。
 

(3)3項

・また、意思能力が無かったり、行為能力が制限されている人(成年被後見人、被保佐人、被補助人)については、無効や取り消しにより不利益を受けないよう保護する必要があります。

・そこで、意思無能力者及び制限行為能力者は、無効や取り消しにより返還をしなければならない場合でも、現存利益の返還で足りることとしました。

 

2 追認の要件(124条)

・取り消しができる行為を追認する要件として、旧法では「取消の原因状況の消滅」のみを規定していました。

・しかし、判例は、「追認をする者が取消権を有することを知っていること」も要件としていたため、これを条文に明示しました。

 

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