遺産を分ける前に預金の一部を払い戻す方法|花みずき法律事務所

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遺産を分ける前に預金の一部を払い戻す方法

生活費など、どうしてもお金が必要なとき、遺産の中の預金から払い戻しはできますか?

弁護士からのアドバイス

遺産分割における預貯金の取り扱いは?

預貯金は、銀行に払い戻しを請求する権利であり、土地や建物と違って分割は可能です。

例えば、親の300万円の預貯金を、2人の子供が相続したときには、数字上では150万円ずつ分割することは可能です。

でも、各相続人が勝手に払い戻しをできるとした場合、遺産分割での話し合いが上手く出来なくなる危険があります。

例えば、遺産分割で土地の代わりにお金を取得しようとしていたのに、他の相続人が預金の払い戻しを受けてしまうと、預金(お金)で取得する分を調整することができなくなってしまいます。

そこで、平成28年に最高裁は、預貯金も遺産分割の対象となるため、話し合いで分割内容を決めるまでは、原則として、個々の相続人が自分の相続分だけを勝手に払い戻すことはできない、という取り扱いとしました。

 

一部払い戻しはできないの?

しかし、相続人の中には、被相続人(亡くなった方)から扶養されていて、すぐにお金が必要な場合があります。

その場合に、他の相続人の反対で、遺産分割全体の内容が決まらないと預金を引き出せないのではとても困ります。

例えば、父親から学費を出してもらっていた大学生の二男が、すぐに大学に学費の納入をしないといけないのに、長男の反対のために預金の払い戻しを受けられないというような場合です。

そこで、令和元年7月1日からは、預貯金について、他の相続人の同意がなくても、預貯金の一部について払い戻しを受けられることとしました(民法909条の2)。

 

払い戻し額に上限はあるの?

とはいえ、預金の払い戻しを自由にさせてしまうと、先ほどご説明したように、遺産を分ける話し合いのときに、取り分をお金で調整することが難しくなってしまいます。

そこで、各相続人が単独で払い戻しできる金額について、民法と法務省令により上限を設けています

その上限は以下のとおり計算します。

① 各預貯金額の3分の1に各相続人の法定相続分を乗じた金額

② 同一の金融機関において150万円以下であること

 

具体例で見てみましょう。

父親が死亡して、相続人は長男と二男の2人だとしましょう。

遺産としての預金が1200万円あり、二男が大学の学費のために緊急でお金が必要だったとします。

 

そこで①を基準に計算すると、次のとおりとなります。

1200万円×1/3×1/2(法定相続分)=200万円

でも、この預金が一つの金融機関、例えば三菱UFJ銀行だけにあった場合には、同一の金融機関の上限150万円を超えてしまいます。

 

そこで、この場合には

② 上限の150万円までに限って、二男は単独で(長男の反対があっても)払い戻しを請求することができることになります。

 

 

金融機関での手続

実際に、払い戻しを請求するときには、自分が相続人であること、その法定相続分を金融機関に証明する必要があります。

金融機関ごとに、求められる資料は異なるとは思いますが、少なくとも「被相続人(亡くなった方)が、生まれてから亡くなるまでの戸籍事項証明書」の提出は必要となるでしょう。

提出を求められることが予測される資料としては次のようなものがあります。
 

① 被相続人(亡くなった方)が、生まれてから亡くなるまでの戸籍事項証明書

② 相続人全員の戸籍事項証明書

③ 預金の払い戻しを請求する方の印鑑証明書と実印

④ 本人確認資料(例えば、運転免許証)

 

払い戻しに行く前に、具体的に何が必要かを金融機関に問い合わせておくと、二度手間にならず良さそうです。

 

施行された日

2019(令和元)年7月1日以降相続が開始、つまり被相続人が亡くなった場合に、この規定が適用されます。

また、仮に相続が始まった日(死亡日)が令和元年7月1日より前の場合でも、払い戻しが基準日以降であれば、この制度が適用されるとされています。

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