弁護のゴールデンルール

私は今年の1月から新静岡セノバ(静岡市葵区鷹匠1丁目1番1号 )の5階にある「朝日テレビカルチャー 静岡スクール」で講義をしています。

 

月に1回、第4土曜日の午前10時~12時までの2時間、講義とも雑談ともいえるお話しをしています。

 

講義のタイトルは

知っていてよかった!「大人のための楽しい法律」

です。

現在は人数が少ないため、私から役立ちそうなお話しをしながら、好きな時にご質問を挟んでいただいて、それに答える形で話を広げていっています。

 

今だったら、大阪の交通事故のお話しとか、時事的なご質問が多いようです。

 

日常用語で法律のお話しをするトレーニングができるという点で、私にとっても非常に勉強になっています。

 

さて、司法試験を受かった人は、全国から司法研修所という所に全員入って研修を受けます。

 

私も十数年前になりますが、司法研修所に入りました。

 

その時にまず勧められた本の一つが「弁護のゴールデンルール」という本です。

 

イギリスとアメリカ(カリフォルニア)の弁護士資格を持つ著者が2000年に書いた名著です。

 

149ページという薄い本なのですが、内容は示唆に富んでいます。

 

今回は、そのゴールデンルールの中で分かりやすいものをご紹介しようと思います。

 

ルール① ちゃんとした服装をしなさい。

 

一般市民が裁判に参加する陪審員制度をとっているイギリスやアメリカでは当然だとしても、これは日本にも当てはまります。

 

別におしゃれをしていくとか、高価な服装をするという意味ではありません。

 

弁護士であれ、証人であれ、その人の社会的立場や収入に応じたきちんとした服装をした方が良いということです。

 

「人間、服装ではなく、中身だ」というご意見もあるでしょう。

 

確かにそうなのですが、法廷で1度しか会わない人に、自分がだらしない服装をしていて「仕事には誠実な人間」ということを分かってもらうには、尋問時間の1~2時間では不可能でしょう。

 

もともと、法廷という厳粛な場に、社会人としての大人が敢えて崩れた服装で行く必要はないと思います。

 

ルール② 弁護士らしく振舞ってはいけない。

 

法律相談などでは法律用語を説明抜きで使ってはいけないことはもちろんですが、それは法廷でも同じようです。

 

例えば、法廷で敵にあたる被告に反対尋問をするときですら、法律用語を使うことは避けるべきです。

 

私が反対尋問で、鋭く「それは債務不履行ではないですか?」と攻撃したとしましょう。

 

被告は「債務不履行って何ですか?」と答えるに決まっています。

 

そうすると、通常与えられている30分~40分の中から数分使って「債務不履行」の講義をする必要が出てきてしまいます。

 

最初から、「あなたは、この契約書で約束した期日までにお金をはらっていませんね」と言えば1回の質問と回答で次に進めます。

 

ルール③ あくまで真実にこだわれ

 

私が修習生の時にこれを読んだ時は、「何を当然なことを言っているんだ」と思いました。

 

しかし、弁護士には大きな誘惑が2つあります。

 

① 訴訟で勝ちたい

② 相手に証拠がなければ、真実を無視しても裁判官は真実を認定できない

そして、依頼者の方の中にはウソを法廷で言っても良いから勝ちたいという方もいます。

 

弁護士がこの誘惑から逃れるためには、かなりの自制が必要です。

 

しかし、この本ではこう言っています。

 

「陪審(裁判官)というものが作り上げる複合的な精神は、不誠実さに対して信じがたいほどの嗅覚を持っている」

 

つまり真実に反する主張や証拠を出していると、必ずどこかでばれますし、ばれた時の依頼者や弁護士に対するダメージは計り知れないというのです。

 

どんなジャンルの本でも名著は、読み返す度に新しい発見があると言いますが、この本もその中の一つでしょう。

 

改めて読み返して、反省と自制を感じさせられました。

 

「弁護士のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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