セクハラ発言で出勤停止?

最近は、静岡では暖かい日が続いています。

 

スギ花粉も少し楽になったように思えます。

 

さて、ご依頼者やご相談者の方からアンケートを取り始めたというお話を前回しました。

 

既に、事務所ホームページ上にはアップしています。

 

その中で、ご相談者の方から、良いとも悪いともとれる改善点の指摘をいただきました。

 

要約すると、「相手が強く出た時に、口調が優しすぎて相手に伝わらないのでは無いか?」という声でしょうか(ホームページの「相談者の声」参照)。

 

確かに、私は日常生活でも大声を出して怒ることは全く有りません。

 


そもそも、「頭がカーッとなる」という感覚が理解できないので、冷静過ぎるのかもしれませんね。

 

ですから、初めてお会いした方からは、そのように受け止められることにも、うなずける点はあります(親族や親しい友人の評価は「頑固者!」ですが・・・)。

 

もっとも、、相談室で弁護士と二人きりで、弁護士から大きな声で対応されたら、怖い思いをさせてしまうのではないかと個人的には思っています。

 

他の依頼者の方からは、「穏やかな雰囲気で、自分の意見を言いやすい」「ほっとした」というご意見もいただいているので、長所と短所は一体という所なのでしょうね。

 

私としては、「穏やかさ」と、「きっちりと主張すべきことを主張すること」とは両立できるものだと思っています。

 

さて、「セクハラ」という言葉。

 

定着してきましたが、男性からは非常にあいまいで、不公平な概念に感じられるのではないでしょうか。

 

つまり、AさんとBさんが同じ言葉を女性に言っても、「Aさんなら許容範囲だけど、Bさんだとセクハラ」ということが、起こりうるからなんでしょう。

 

男性としては普段の生活からAさんを目指すしか無いと思います。

 

もっとも、誰が言っても、女性という性に関して、ほとんどの女性が不快感を持つ言葉はあります。

 

それが、最高裁まで争われて、今年の2月26日に判決が出ました。

 

事実関係としてはこうです。

 

舞台はとあるアミューズメント施設でのお話。

 

メインの被害者となった女性は、派遣社員Aさん(当時約30才)です。

 

セクハラを理由に、会社から懲戒されたX1さんとX2さんは、正職員の課長代理でした。

 

懲戒内容は、

X1さんは、出勤停止30日間

X2さんは、出勤停止10日間

です。

 

言葉だけのセクハラにしては相当重い処分です。

 

そこで、X1さんと、X2さんは、懲戒権の濫用で、当該処分は無効だと争いました。

 

しかし、X1さんと、X2さんの発言は、ここに掲載するのも少しはばかられるほどひどいものです。

 

判決書に書かれていたとおりに抜粋して書いていきますね。

 

X1さんは、Aさんが1人で勤務している所に来て、

 

「俺のん、でかくて太いらしいねん。やっぱり若い子はその方がいいんかなあ」

と言ったり、

 

不貞相手が車で迎えに来ていたという話しをする中で、「この前、カー何々してん。」と言い、Aさんに「何々」のところをわざと言わせようとするように話をもちかけました。

 

他にも、いくつか卑猥な発言をAさんの前でしています。

 

さらに、X2さんは、Aさんに対し、

 

「いくつになったん」

「もうそんな歳になったん。結婚もせんでこんな所で何してんの。親泣くで。」

 

「30才は、22~23才の子から見たら、おばさんやで。」

「もうお局さんやで。怖がられてるんちゃうん。」

 

「30才になっても親のすねかじりながらのうのうと生きていけるから、仕事やめられていいなあ。うらやましいわ。」

 

「お給料全部使うやろ。足りんやろ。夜の仕事とかせえへんのか。時給いいで。したらええやん。」

 

などと言いました。

 

その結果、Aさんはその施設での勤務を辞めることになりました。

 

その施設の従業員の過半数は女性で、来所者も約6割が女性という性質上、会社もこのようなX1さんとX2さんの発言を許すことができませんでした。

 

そこで、言葉だけのセクハラにしては、相当重い処分を下したんですね。

 

高等裁判所の判決では、

 

① Aさんから明確な拒否の姿勢が示されないことから、そのような発言も世間

 話として許されていると誤信していたこと

 

② X1さんやX2さんが、懲戒を受ける前に、事前の警告や注意を会社から受けていなかったこと

 

を考慮すると、10日間~30日間の出勤停止までの処分は重すぎるとして、懲戒処分権利濫用として無効としました。

 

しかし、最高裁では

 

① Aさんが内心で著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも、職場の人間関係の悪化を等を心配して、加害者に対する抗議や抵抗、会社への申告を差し控えることも少なくない

 

② 管理職にあるX1、X2は、セクハラの防止やこれに対して会社が厳しく懲戒するという方針を当然に認識すべきであった

 

として、高等裁判所の判断を否定して、懲戒処分有効としました。

 

確かに、「従業員にも、お客さんにも女性の方が多いアミューズメント施設」という会社の性質を考えると、女性へのセクハラに対しては厳しい姿勢をとる必要があるでしょう。

 

また、今回のセクハラ発言は、社会人としての常識的な日常会話の範囲を超えているように思えます。

 

私も、このケースでの最高裁の判断は適切だという考えです。

 

皆さんの感覚では、どうでしょう?

 

労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 労働事件のお話

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