「性格や価値観がイヤ!」で離婚は有り?

「生理的にイヤ」

 

男性としては、女性に最も言われたくない言葉ですよね。

 

ただ、少なくとも離婚訴訟まで来ている夫婦の場合、妻の方はほとんどの方がそのような状態になっています。

 

でも、妻が夫を本当に嫌っていても、

 

「性格の不一致で普通の夫婦喧嘩の範囲で言い争う生活が続いている」

 

というだけでは、裁判まで戦って離婚を勝ち取ることは難しいです。

 

裁判まで争うということは、夫は別れたくない訳です。

 

それを無理矢理別れさせるには、相当の理由が必要なんですね。

 

では、どの程度の性格の不一致があれば、裁判で争って離婚が認められるのでしょうか。

 

これは、「性格の不一致」という離婚事由が法律では定められていないため、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるかどうかで判断します。

 

そこで、夫婦の間にどのような価値観の違いがあったか、別居期間はどれくらいか、別居期間の夫婦の関係などから、「本当に修復不可能な程度に破綻しているか」を客観的事実から判断していくことになります。

 

別居期間が約2年で、性格の不一致での離婚が認められなかった東京地裁の判決には次のようなものがあります。

 

夫も妻も内科研修医の時に知り合い、夫は夫と妻の収入を一つの口座に入れて管理して、二人で相談しながら使っていきたいと思っていました。

 

でも、妻は一々自分の出金をチェックされるのが嫌で応じませんでした。

 

夫は、自分が頑張って稼いでいき、妻は医師をやるものの、夫ほど仕事に専念せずに家庭のことをやって欲しいと考えていました。

 

そのような中、夫は大学院に進学を希望し、合格しました。

 

その後、妻が大学院へ行きたいと言うと夫は、大学院まで行ってしまったら、家事に専念できなくなると考えて反対しました。

 

それでも、妻は夫の反対を押し切って大学院に進学しました。

 

それを見て、夫は、家庭に対する価値観が違うと考え、自分が家を出て行く形で別居しました。

 

夫は、別居後、妻は自分を同じ医師のライバルと見ており、夫婦の関係を取り戻すことは不可能だとして、離婚調停→離婚訴訟を提起しました。

 

これに対して、妻は、夫との結婚生活をまだ望んでおり、「夫が戻るのであれば、大学院を退学しても良い」とまで言いました。

 

これに対して、判決では、

 

夫の言うほど妻に悪い点があったとは言えないし、妻の関係修復への努力の意思を見ると、現段階では婚姻関係が破綻していない

 

と判断して、夫の離婚請求を棄却しました。

 

平成17年の判決ですから、価値観が変わるほど古い判決ではありません。

 

この判決で「現段階では」と留保しているのは、やはりこのまま別居期間が相当期間続けば、修復不可能と判断することになるのでしょう。

 

結局「性格の不一致」を主張する側は、自分の中では修復不可能と思ってはいるのでしょうが、相手が離婚を拒絶する場合には、相当の事情が必要ということです。

 

まだ、別居期間だけで離婚を認めるのが難しい昭和の時代に「性格の不一致」を理由に離婚を認めた東京高裁の判決があります。

 

結婚1週間後の夫婦喧嘩で、口論になったら、妻がヒステリー性発作を起こして失神してしまいました。

 

その後も、2年半の間に、夫婦喧嘩の時に約8回、ヒステリーによる失神をしました。

 

夫としては、高い水準の知的生活を希望していたのに対し、妻は平凡な家庭で良いと考えて、夫からみると低級な趣味に講じていたのが、許せなかったようです。

 

その後、夫が妻と別れたくなって、離婚の話をすると妻はヒステリー性発作を起こし、失神するようになりました。

 

夫は妻との結婚生活に絶望し、完全別居した上で、離婚調停→離婚訴訟を提起しました。

 

しかし、妻は夫に対する愛情を失っていないとして、離婚を拒否しました。

 

こんな事例でも東京地裁は、まだ夫婦関係は破綻していないとして、夫の請求を棄却しました。

 

しかし、夫は東京高裁まで争い、そこで離婚を認めてもらったんですね。

 

夫は東京大学文学部(文Ⅲ)を卒業し、朝日新聞社に優秀な成績で入社したという経歴もあって、クラッシックや文学などについて、対等に議論できる相手を求めていたようです。

 

これに対して、夫から見て低級な妻の趣味というのは、判決書にも具体的に書いていないので、何なのか分かりません。

 

確かに、これを例えば「TVのバラエティ番組ばかり見ている」とか、「マンガしか読まない」とか具体的に書いてしまうと、「低級」とは何だ!と袋たたきに合うのを恐れたのかもしれません(笑)。

 

自分に照らし合わせてみると、TVは見ますが、サッカーの試合とか、特定のドラマを選んで見る程度なので、週に多くて2時間程度です。

 

多分少ない方でしょう。

 

これに対して、本やマンガは良く読みます。

 

純文学・哲学書・法律書・推理小説・その他ミステリ物・SF・経営書など本と名のつくものは、何でも読みます。

 

マンガも相当数読んでいると思います。

 

青年・少年マンガはもちろん、少女マンガまで読んでしまいます。

 

「アオハライド」・「きょうは会社休みます」・「俺物語!!」とか(笑)

 

私にとって「あしたのジョー」は、太宰治の「人間失格」、カフカの「変身」、東野圭吾の「容疑者Xの献身」などなどと同じくらいの衝撃を与えてくれましたので、名作のマンガを生み出す作者を心から尊敬しています。

 

結局、趣味というものは、理屈抜きで好きになってしまうので、これは「低級」とかそういう問題ではなく、合うか、合わないかだと思います。

 

夫婦で趣味が違っても良いとは思うのですが、「これだけは許せない」というポイントを誰しも持っていて、そこにズレが出ると一緒に生活するのは難しいですよね。

 

そこに引っかかってしまうと、結婚生活が地獄になってしまうので、気をつける必要があるのでしょうね。

 

離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。 

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カテゴリー: 離婚のお話

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