弁護士費用のフシギ

大分涼しくなってきましたね。

 

私も、今日から長袖のYシャツにかえました。

 

ちょっと体重が増えてしまったので、週末には走るようにしています。

 

夏に比べれば、夕方のジョギングは快適です。

 

問題は、走った後のビールが美味し過ぎることだけです・・・

 

さて、今回は、弁護士費用について最近思うことをお話したいと思います。

 

弁護士費用というのは、もともと分かりにくいものです。

 

まず、計算の仕方自体色々あります。

 

① 着手金と成功報酬という形でいただく方式

② タイムチャージという事務処理時間に応じて計算する方式

③ 単に、手数料という形でいただく方式

などなどです。

 

また、日弁連で決められた報酬規定は、現在は存在しないので、事務所によって弁護士費用が異なるのは当然ということになります。

 

私も、自分の事務所以外の事務所については、弁護士費用の算出方法は、正直、分かりません。

 

私自身HP上で、できるだけ分かりやすく弁護士費用についてご説明しているつもりですが、事案ごとの特殊性もあるので、全てを説明することはできていません。

 

おそらく、他の弁護士のHPでも同様ではないでしょうか。

 

さて、その特殊性として色々ありますが、例えば、最近多い離婚事件について考えてみましょう。

 

離婚調停事件について、私の事務所では、静岡家裁で行う場合には着手金20万円(消費税別)でお引き受けしています。

 

色々なHPを見ると、着手金としては、15万円~30万円の範囲で設定しているところが多いようです。

 

では、依頼される方が離婚を思い立った場合、HPを比較して、着手金15万円の所に頼むのが一番良いのでしょうか?

 

その回答は間違いなく「NO!」です。

 

その理由は沢山ありますが、思い当たるところをいくつかお話します。

 

①まず、弁護士が引き受けるのは単なる事務処理ではなく、人生の大きな転機における法的なガイド役です。

 

弁護士は、依頼者の方にとっては、時には、人生相談まで含めながらお話をしていく相手となる人物です。

 

法的にも、離婚であれば、子供の親権の問題、財産の分け方の問題、養育費の額、離婚までの生活費など様々な問題について、弁護士からアドバイスを受けなければなりません。

 

ですから、着手金15万円の弁護士よりも、着手金30万円の弁護士の方が、自分にとって納得がいく説明や活動をしてくれるのであれば、後者の弁護士を選ぶべきです。

 

わずか15万円の差額を計算してご自分の人生を安売りするようなことは避けるべきだと私は思います。

 

②次に、実は、弁護士費用の計算方法には巧妙な落とし穴があることです。

 

よく「着手金無料!」と大きく宣伝しているのを目にします。

 

こんな時、一般の弁護士が思うことは、

「莫大な広告費用をどこで回収するつもりなんだろう?」

「実際に弁護士が面談して、弁護士が仕事をしてくれるんだろうか?」

「事件が終わった後の成功報酬をどれくらい取るつもりなんだろう?」

です。

 

ですから、そのような事務所に依頼をする際には、必ず、

◎  弁護士と面談して依頼し、その後も弁護士から報告を受けられるのか

◎ 成功報酬をどの程度取る契約内容となっているのか

について確認する必要があります。

 

もし、弁護士が顔も出さず、何の資格も無い事務員が対応して契約し、報告も最後に事務員からだけなされるという場合、本当に弁護士が仕事をしたのか分からないので、私だったら怖くてたまりません。

 

また、仮に、成功報酬に、本来、着手金としていただく分を上乗せして、「着手金無料!」と宣伝しているのであれば、「弁護士費用仕組みを知らない素人をだましている」と言われてもしょうがないと思います。

 

③また、やはり弁護士費用の落とし穴として、「着手金1件15万円」としていた場合でも、事件の数をどのように数えるかでトータルで支払う弁護士費用は全く違ってきます。

 

例えば、妻が「離婚調停」を申し立てる場合、「婚姻費用分担調停」も一緒に申し立てた方が良いというお話を前回しました。

 

この場合、裁判所では、「離婚調停」と「婚姻費用分担調停」とは別事件として扱われ、事件番号がふられます。

 

例えば、「離婚調停」は「平成25年(家イ)第○○号」、「婚姻費用分担調停」は「平成25年(家イ)第△△号」という具合に別個の事件番号が振られます。

 

そうすると、「離婚調停」1件で15万円、「婚姻費用分担調停」1件で15万、合計30万円という弁護士費用の計算もできそうです。

 

もっとも、「離婚調停」も「婚姻費用分担調停」も同じ期日の同じ時間に審理されます。

 

ですから、着手金30万円で引き受ける弁護士の中には、両方の事件を合わせて30万円という計算をしている弁護士もいるはずです。

 

そうすると、どちらに頼んでも価格的には同じということになります。

 

では、どちらの弁護士に依頼したら良いのでしょうか?

 

まず第一に大切なのは、相性の問題だと思いますので、依頼者の方が「この人になら何でも相談できそう」と感じる弁護士を選ぶべきでしょう。

 

それでも迷ったら、同じ30万円を払うのであれば、

 

裁判所の事件番号ごとに単価をつけてドライに見積する弁護士よりも、

 

「その人の人生の法的なガイド役」という視点から合計30万円という弁護士費用を算出する弁護士

 

の方が私は好感を持ちます。

 

事件ごとに単価をつけて積算するという前者の弁護士だと、場合によっては、「こんなはずではなかった・・・」ということになりかねません。

 

というのは、例えば、

離婚調停の申立を依頼→15万円+消費税+実費を支払い

       ↓ 

婚姻費用の請求調停をした方が良いと言われて依頼→15万円+消費税

       ↓

・相手から面会交流の調停を申し立てられてその対応も依頼→15万円+消       費税

というケースがあり得るからです。

 

これら3つの調停は裁判所では別々に事件番号が振られますから、1件15万円+消費税と機械的に計算すると、合計45万円+消費税となってしまいます。

 

依頼者の方は、離婚問題を解決して欲しくて弁護士に15万円を支払うつもりだったのでしょうが、結果的に45万円を支払うことになってしまう場合があるんですね。

 

特に、私が怖いと思っているのは、弁護士の損得勘定だけで、本来、依頼者にとって必要ではない訴訟や調停を申し立てて、事件ごとに着手金をせしめようとするケースが、今後、増えないかということです。

 

医者についても、「やたらと薬を出す医者は信用するな」というのは、昔から言われていますよね。

 

弁護士についても、激増の時代の中で、同じ事が言えるのではないかと、私は思っています。

 

ここで、参考までに私の事務所のやり方をご紹介します。

 

宣伝も入っているので、興味の無い方は、読み飛ばしていただければと思います。

 

私の事務所では、弁護士費用の計算方法は、事件番号ごとに単価をつけて、弁護士費用を増額していくという計算方法はとりません。

 

離婚調停や遺産分割調停で言えば、静岡家裁で行う場合には、着手金は20万円+消費税+実費1万円で、付随する全ての調停(婚姻費用分担調停や寄与分を定める処分調停など)を行います。

 

そして、成功報酬は、依頼者の方が受けた経済的利益の10%+消費税です。

 

調停は成立したけれど、何が経済的利益かはっきりしないようなケースでは、着手金と同額の成功報酬をいただいて終了しています。

 

県内の裁判所であれば、島田・浜松・沼津でも、着手金30万円+消費税で、離婚や遺産分割に関する全ての調停をお受けしています。

 

成功報酬の考え方は、静岡家裁の場合と一緒です。

 

弁護士激増の中、今後は相談者の方が、弁護士を観察して選ぶ時代になっていると思います。

 

特に、弁護士の費用の取り方には、その弁護士のスタンスが出ていることが多いので、依頼者の方も良く観察してみると良いと思います。

 

また、ご依頼前の法律相談の段階で、弁護士に違和感を感じないかも注意すべきです。

 

不作法な物の言い方をしないか相談しているのはこっちなのに、弁護士ばかりが言いたいことを一方的に話していないか、観察してみるのも良い方法だと思います。

 

法律相談の中で、「何か違うな・・・」という違和感を感じたら、その弁護士との相性は良くないと思われますので、ご注意ください。

 

弁護士は1回選ぶと、その後に解任するには相当の不信感や勇気が必要です。

 

そして、弁護士に依頼される方は、自分の人生の一部を委ねることになります。

 

ですから、弁護士を選ぶにあたっては、宣伝やHPの比較ではなく、実際に弁護士に相談をして、依頼者の方が実際にその弁護士を観察した上で選ぶべきだと思います。

 

「弁護士のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。 

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