依頼者に教えられること

大分、ブログの更新をさぼってしまいました。

 

もう、夏、本番ですね。

 

静岡を含む東海地方は、今月8日には梅雨明けをした模様です。

 

先週の土曜日は、夕方まで仕事をした後、久しぶりに日本平スタジアムに足を運び、清水エスパルスVS大分トリニータの一戦を見てきました。

 

3-1の快勝で、出口でスタッフの皆さんたちとハイタッチをして、とても楽しい観戦でした。

 

ジュビロ磐田も帰宅後にTV観戦で応援していたのですが、1-0でベガルタ仙台に勝てば連勝だと思っていたところ、最後に追いつかれてしまって、こちらはちょっと悔しい思いでした。

 

さて、弁護士の仕事は、一応、専門業だと言われています。

 

法律的な知識を駆使して、依頼者の方へ最適なアドバイスをしたり、訴訟追行をしたりすることが本来的なイメージだと思います。

 

でも、少なくとも、私は、「自分が依頼者に教える」というだけでは、問題を上手く解決できないと思っています。

 

依頼者の方々は、私とは違った人生を送ってきています。

 

もちろん企業を経営されたり、お勤めの方は、その分野に関しては、私なんかよりよっぽど豊富な知識を持っています。

 

また、専業主婦の方でも、その人生を選択して初めて経験できることもあり、それを私が理解できないと、例えば調停なども上手く進められません。

 

打合せで依頼者の方とお話していると、本当に「なるほどな~」と感心することも多いです。

 

あまり具体的なお話は、依頼者の方への守秘義務の関係で書けないのですが、少しお話を変えて具体例をお話したいと思います。

 

アルバイト先で、ある未成年の少年が仕事中に、後遺症の残る大怪我をしました。

 

その少年は当然入院していますから、ご相談は少年のご両親が事務所に来られます。

 

私は、初対面でご両親にお会いした時には、自己紹介をするとともに名刺をお渡ししました。

 

その上で、仕事中の事故について、加害者は誰になるのか、何時、どのような状況で起きたのか、雇い主の監督状況はどうだったのかなど、法的請求に必要なことを聞き取っていきました。

 

何回か、ご両親と打合せをする中で、法的に必要なことは理解出来ていたつもりでした。

 

ある日、ご両親が、少年が退院したということで、初めて連れて見えられました。

 

私は、事故の状況の概要は分かっているつもりだったので、すぐに打合せに入って、少年から事故の詳細を確認しはじめました。

 

ところが、話を進めれば進めるほど、その少年の顔は曇っていき、口も重くなっていきます。

 

私は、その理由が分からず、非常に困惑しました。

 

その日打合せが終わった後、ご両親から電話がありました。

 

その内容は、少年が私に依頼するのを止めたいと言っているという衝撃的なものでした。

 

ご両親は、私のことを信頼してくださっていたので、説得してもう一度、少年と会う時間を設けました。

 

私は、どうして依頼を止めたいと思うようになったのか、慎重に言葉を選びながら聞いてみました。

 

すると、初対面の時に、私が少年に自己紹介をして名刺を渡さなかったこと、事故に遭った少年のつらい気持ちを聞き取ろうとしなかったことが主な理由とのことでした。

 

私は、その時愕然としました。

 

確かに、依頼者はご両親ではなく、未成年ではあれ、その少年です。

 

そして、事故に遭って最もつらく悔しい思いをしているのも、その少年自身なのです。

 

私は、ご両親には「事故に遭ってお気の毒です」ということは言っていたのですが、何回も打合せをしていたので、少年と初対面だということを忘れていたのです。

 

その少年は、「この弁護士が、本当に自分のつらさを分かってくれて、自分と一緒に戦ってくれるのか」ということを、注意深く観察していたんですね。

 

私は、少年に謝罪して、遅まきながら名刺を渡して自己紹介し、自分の考えの至らなさを恥じました。

 

何とか、ご依頼は継続できたものの、これは本当に依頼者に教えられたことでした。

 

弁護士は、法的に必要な事実だけ聞き取ると、それで満足してしまいがちです。

 

でも、弁護士としては、まず「依頼者は誰なのか?」「事件で一番つらい思いをしているのは誰なのか」ということを、しっかりと把握する必要があるんですね。

 

依頼者の方から、専門的知識を教えられることもありますが、それ以上に、人間として成長するための知識・感情を教えられることが多いと感じています。

 

良く、弁護士は医師とも比較されますが、医師の書いた本で「患者さんから学ばせてもらうことも多い」と読んだこともありますので、共通点があるのかしれません。

 

何時でも、他の人から教わりつつ、かつ他の人を助けられる人間でありたいものです。

 

「弁護士のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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