梅雨らしく、あじさいの花が咲いているのを見かけました。
天気の良い日だったので、花の色がきれいでした。
雨のあじさいとは、また違った華やかさがありますよね。
さて、「自己のために相続が開始したことを知った時」の問題の二つめです。
このような事案で考えてみましょう。
ある男が定職につかず、ギャンブルに夢中になり、ことあるごとに妻子に暴力を振るっていたので、妻子は家を飛び出してしまいました。
その男は、その後も借金をしたり、保証人になったりして莫大な債務を抱えて、訴訟を起こされている最中に死亡してしまいました。
妻子は、二度とその男の顔は見たくなかったので、全く連絡はとっていない状態でしたが、さすがに臨終の時には立ち会って、葬儀はすませました。
もちろん、その時に、その男から借金の説明はありませんでした。
妻子は、その男の相続については「何も財産が無い」と思っていたので、何もしないでいました。
ところが、1年ほど経過してから、いきなりその男の債権者から、妻子に対して訴訟を起こされてしまいました。
さて、この場合も、条文を形式的にあてはめると、妻子は、その男が死亡したことは知っているのですから、「自己のために相続が開始したこと」は知っています。
そうすると、3ヶ月以上経過してしまっている以上、相続放棄はできないように見えます。
でも、これではあまりに可愛そうですよね。
そこで最高裁判所の判決は、このような場合にも相続放棄を認めました。
その理屈はこうです。
相続人が相続放棄をしなかったのが、
① 被相続人(亡くなった人)に財産が全く存在しないと信じたためであり、
かつ、
② 被相続人の債務など財産調査を相続人に期待することが著しく困難な事情がある時
には、「自己のために相続が開始したこと」の時点を修正します。
どのように修正したのでしょうか?
判決の言葉をそのまま引用すると、3ヶ月の熟慮期間は「相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算すべき」としたのです。
ちょっと、わかりにくいですよね。
例えば、今回の例にあわせて言うと、借金のような相続財産(消極財産)があることを、妻子が知った時から3ヶ月以内であれば相続放棄できることになります。
ですから、妻子にいきなり訴状が届いたらそのときから3ヶ月以内であれば、相続放棄をすることができるのです。
このようなケースは決して珍しくなく、私も何件も相続放棄を裁判所に認めてもらったことがあります。
もし、似たような問題でお困りの方は、是非、お近くの弁護士にご相談ください。
相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。
今後のブログのテーマ選びの参考のため、「いいね」ボタン(Facebook・Twitter・Google+)でご感想↓をいただけると嬉しいです。