中国ギョーザ~後編

昨日は、「みぞれ」から「雪あられ」へと変わるという、静岡では珍しい天気となりました。

 

県内でも、御殿場の方はさらに大雪だったようです。

 

桜の花の上に雪が積もるという面白い風景が報道されていました。

 

では、中国ギョーザのお話の続きです。

 

今後は、逮捕された元従業員を被疑者として、取調べをしていくことになります。

 

そして、その元従業員の行為には日本の刑法の適用があります

 

ところが、報道では、「その元従業員を逮捕して日本に連れてきて、取調をする。」という話は全く出ていません。

 

逆に、中国で「代理処罰」をするという報道がなされています。

 

いったいどのような意味なんでしょうか?

 

まず、前提として、次のお話を理解しておく必要があります。

 

法律の分類では、

① 実体法(じったいほう)

② 手続法(てつづきほう)

という区別を理解する必要があります。

 

① 実体法というのは、法律関係の内容について定めている法律です。

 

その例としは、刑法があります。

 

刑法は、どのような犯罪を犯すと、どのような刑罰を国家から受けるかという、私たちと国家との法律関係の内容について定めていますよね。

 

ですから、刑法は、実体法になります。

 

これに対して、

 

手続法というのは、その実体法が定める法律関係について、実現する手続を定めている法律です。

 

その例としては、刑事訴訟法(けいじそしょうほう)という法律があります。

 

この法律では、どのような場合に逮捕・勾留ができるか、取調の手続、起訴や裁判の手続などについて定めています。

 

ですから、刑法を実現していく手続法ということになります。

 

今回の事件には、刑法という実体法が適用されることは、前編でお話しました。

 

しかし、刑事訴訟法という手続法によって、被疑者を逮捕するためには、まずは中国政府から被疑者の引き渡しを受けなければなりません。

 

そして、引き渡しを受けるためには、「犯罪人引き渡し条約」によって、国家間で被疑者の引き渡しが定められていないといけません。

 

ところが、犯罪人引き渡し条約が日本と中国との間には結ばれていないんですね。

 

そのため、中国が自主的に、日本に被疑者を引き渡してくれない限り、取調も、裁判もすることができません

 

そこで、せめて、日本で起きた殺人未遂罪なども含めて、中国で代わりに処罰するよう求めているんですね。

 

これが「代理処罰」です。

 

現在、中国では、この事件を「危険物質混入罪」の疑いで捜査しています。

 

その犯罪の刑罰を日本風に言うと

原則として「死刑又は無期もしくは10年以上の懲役」

だそうです。

 

もし、日本に引き渡しを受けて殺人未遂が認められても

「死刑又は無期もしくは5年以上の懲役」

です。

 

そうすると、日本で裁判をする(当然、裁判員事件です。)よりも、中国で殺人未遂罪も考慮した代理処罰をしてもらった方が刑は重くなるかもしれません。

 

とはいっても、

①元従業員が本当に真犯人か

②共犯者や組織的背景は無いか

③動機は何か

など、事件の全容を明らかにしないまま重い処罰だけをしても、再犯の防止にはつながりません

 

中国で対応するにしても、日本の政府(警察)が対応するにしても、きっちりと捜査して欲しいものですね。


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