弁護人はHEROになれない?

今日の静岡は、昨日の強風と寒さがウソのような暖かい良い天気になっています。

 

今回は、刑事事件の冤罪えんざい)のお話しを。

 

私は、刑事事件の取扱いは特に多い方ではなく、静岡では平均的な数ではないかと思います。

 

普通に国選弁護人を中心に、時々私選弁護を行うという程度です。

 

その普通の刑事弁護人から見た刑事事件の感想だと思って聞いて下さい。

 

どうしても、刑事事件の話になると、弁護人は悪役っぽくなります。

 

少なくとも「HERO」とは呼ばれないですね・・・

 

私も、「悪い人をどうして弁護しなければならないんですか?」と聞かれたことは何度もあります。

 

おそらく絶対の正解というものは無いんでしょうが、私の理解している範囲でお話を。

 

3つのことをご説明したいと思いますが、まずは、何と言っても冤罪(えんざい)の防止のためでしょう。

 

冤罪(えんざい)とは、本当は(神様の目で見れば)その犯罪を犯していないのに、裁判でその犯罪を犯したとの判決がなされてしまうことです。

 

例えば、最近大きく報道された足利事件(あしかがじけん)が典型です。

 

1990年5月に、栃木県足利市内のパチンコ店から行方不明になった4才の女の子が、行方不明の翌日に近くの河川敷で、遺体で発見されたという事件です。 

 

 この事件では、犯人だと疑われた菅家さんは、実は犯罪を全く犯していなかったのに、犯罪事実を認めてしまいました自白)。

 

 また、「遺体があった現場に残されていたもの(遺留物~いりゅうぶつ)と菅家さんの血液型DNA型矛盾がない」との鑑定かんてい)も重要な証拠になりました(DNA型の鑑定)。

 

当然、マスコミ報道も菅家さんを真犯人だと報道しました。

 

ここでの問題は、

 取調担当の警察官が菅家さんにひどい取調をしてウソの自白を言わせたこと

 不正確なDNA型鑑定を担当裁判官が有罪の証拠として採用してしまったこと

のように見えます。

 

それも問題の一つの側面でしょうが、背景には他にも問題があるのではないかと思います。

 

そもそも、菅家さんはどうして、やってもいない犯罪を認めてしまったのでしょうか?

 

まず、重大な犯罪事件が起きると、世論は、「早く犯人をつかまえて!」と、マスコミなどを通じて相当なプレッシャーを警察にかけます。

 

すると、その事件を早期に解決できるかどうかは、警察官(特にエラい人)の出世に大きくかかわってきます。

 

そこで、捜査する警察官たちに、早期の犯人発見と逮捕を強く命令されます。

 

もともと、警察の組織は強い体育会系の組織ですから、その意思は、普通の会社よりもずっと強く伝わるんですね。

 

その結果、菅家さんの取調では、15時間近く連続して、何度も同じことを聞いたり、相当の暴行がなされたと言われています。

 

「この取調を何とかやめてほしい」との一心で、捜査官の言うことをそのまま認めてしまった結果、事実と違う自白ができあがったんですね。

 

こう見ると、冤罪(えんざい)のスタートは、「とにかく犯人をつかまえろ!」と突っ走る私たち世論とマスコミのような気もします。

 

事件が起きた時には、私たち自身が被害者やその家族でない限り、事件から一歩引いて、「本当にこの人は犯人だろうか?」って考えてみることが重要かなと思っています。

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

 

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カテゴリー: 刑事事件のお話

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