高い教育費は特別受益として遺産に戻すべき?

スギ花粉の量が多くなりましたね。

 

花粉症の私には厳しい季節です。

 

私がくしゃみをしていても風邪ではないので、ご相談者の方々は移ることはないのでご安心を。

 

さて、今回は相続における特別受益のお話です。

 

例えば、遺産を分けるときに兄弟姉妹の中に特別に高い教育費を親から払ってもらっていた人がいた場合、「特別受益」として教育費分を遺産に戻すよう請求できるでしょうか?

 

過去の裁判例を見ると、兄弟姉妹の間の教育費を比較して判断している事案が多いようです。

 

実際の事案で多額の教育費を認定しているものには、医科大学、歯科大学の教育費が多いようです。

犬のお医者さんのイラスト

例えば、A、Bの2人の子が相続人となっているとします。

 

その中のBの子(被相続人、つまり亡くなった人から見ると孫)3人に医科大学、歯科大学進学のための大学受験予備校、大学の入学金、寄付金、生活費等を支払った例があります。

 

この大阪高裁の事件では、これらを合計すると1億2,000万円程度の額となったそうです。

 

被相続人が孫のために支払ったとはいえ、実質的には子の扶養義務を負うBの支払うべき教育費が減っているのですからBの利益です。

 

そこで、Aは1億2,000万円を「特別受益だから遺産に戻せ」と請求しました。

 

大阪高裁では、そのうち4,300万円程度を特別受益として遺産に戻すよう決定しました。

 

ここでもAが受けていた贈与があったため、それをBが受けた利益と比較して教育費全額までは戻せとは言いませんでした。

 

実際、教育費についてはどれだけ不公平かを証明するのはけっこう大変ですよね。

 

兄弟姉妹間でも、大学が公立か私立か、親元か一人暮らしか、一人暮らしの場合には男性か女性かで普通は差が生ずるでしょう。

 

このような多くの家庭で見られるような差については「特別」な利益を教育費として受けていないので、特別受益とはいえません。

 

そのため、特別にお金がかかる大学として医科大学、歯科大学の教育費がやり玉に挙げられるのでしょう。

 

ひょっとしたら、今後ロースクール(法科大学院)も標的になってしまうかも?

 

裁判官は、ロースクールの学費がどの程度であれば高額とみるのか、個人的には興味があります。

 

今後、どこかで主張するかもしれないと心の準備だけはしておこうと思います。

 

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 相続のお話

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