宴会で暴行があると会社に責任が?

暖かい、というか暑くなってきましたね。

 

5月といえば初鰹。

 

漁港で有名な焼津(やいづ)で「春の鰹三昧」というイベントが行われています。

 

県外の方もご覧いただいているようなので、JR焼津駅の位置関係を説明すると、新幹線が停まるJR静岡駅から東海道本線で西に3駅(約12分)です。

 

静岡からは近いので、先日、私も行って鰹づくしのランチを食べてきました。

焼津駅の近くでも色々な店が開いているので、鰹が好きな方はよかったら。

 

なお、鰹三昧メニューは、1日の食数に限りがあるそうなので、早い時間帯に行かれることをお勧めします。

 

さて、今年の1月に東京地裁で、会社の忘年会で従業員Aが、他の従業員Bを殴る蹴るなどして肋骨を折るなどのケガをさせた事件について判決が出ました。

 

当然、Aは傷害罪になりますし、Bに対してケガをさせたことについて損害賠償責任を負います。

 

ここで、問題になったのは、Bが会社にも損害賠償請求をしたことです。

 

民法では「使用者責任」といって、従業員が業務に関連して第三者に損害を与えた場合には、その従業員だけでなく会社や個人事業主(使用者)も被害者に対して直接、損害賠償の責任を負うことが定められています。

 

過去の裁判であった典型的な事件としては、

①会社の自動車で営業をしているときに交通事故を起こしてしまった場合

②業務でフォークリフトを運転していて同僚を跳ねてしまった場合

などがあります。

 

どうして使用者が責任を負うのかという主な理由としては、

① 大きな事故になった場合に、加害者に損害賠償できるだけの資産がないと被害者が賠償を受けられないので、それを救済する必要があること

② 使用者は従業員を使って利益を上げているのだから、その業務に伴って人に被害を生じた場合には使用者も責任を負うべきこと

があげられます。

 

そして、この使用者責任には「事業の執行について」という要件がありますから、宴会が会社の事業の執行と言えるのかは問題になります。

忘年会のイラスト「サラリーマンの飲み会」

<designed by いらすとや>

 

従来から、裁判例では、この「事業の執行について」という要件を厳密に業務に限定せず、使用者(会社)の活動が社会的に広げられたと認められるものを含めています。

 

例えば、会社の自動車を自由に運転できる従業員が、その自動車を勤務時間外に私用で運転して事故を起こしても、会社に責任を認めているのです。

 

かといって、純粋なプライベートまで会社の責任としたのでは、会社は怖くて従業員を雇えません。

 

そこで、「事業の執行について」の範囲を適切に決める必要が出てくるのです。

 

今回の東京地裁の判決は、ギリギリの事案だと思われます。

 

会社の忘年会で起きた事件だったのですが、一次会ではなく、二次会で起きたのものです。

 

二次会で、従業員AがBに仕事ぶりを注意したところ、Bが「めんどくせえ」と言ったところから、Aが怒ってBに暴行をしてしまいました。

 

このような二次会での従業員同士のトラブルに会社が責任を負うのは重いように感じますが、この事件には特殊性がありました。

 

従業員Bは、上司から念を押されて全員出席と聞いて忘年会に出席することにしたこと、そして、一次会が、深夜から開かれ、二次会が電車がなくなった午前2時30分から開かれたことです。

 

一次会は、会社の上司が段取りをつけるということで会社の懇親会という性質を持っています。

 

そして、一次会の開始が遅くて、終電が無い時間に終わった場合、自力で帰ることは難しいことも多いでしょう。

終電を逃したサラリーマンのイラスト

<designed by いらすとや>

 

もっとも、一次会でタクシーなどで帰った従業員がいれば、二次会は自由参加ということになりそうですが、この事案では二次会も全員参加だったようです。

 

この二次会の「全員参加」というのがたまたまそうなったのか、半強制的な雰囲気だったのかは、争いになりそうなポイントです。

 

会社側からすれば、従業員が仕事上でのミスで損害を生じるのであれば予測できますが、従業員同士のトラブルは予測しにくいでしょうね。

 

ただ、歓送迎会、忘年会など会社が企画する懇親会の性質を持つ場合には、そこでの従業員の行動についても監督義務があると見られることが多いようです。

 

最高裁では歓送迎会から職場に戻る途中に交通事故死をした場合に、業務上の災害と認めています。

 

これらから考えると、会社や個人事業主の方(使用者)としては、歓送迎会や忘年会など懇親会の性質をもつ飲み会を一次会にしっかりと区切るよう注意すべきことになります。

 

被害者側だったら、加害者が会社の懇親会で飲んでいたかどうかは、損害賠償請求をするにあたっては、とても重要な事実になってきます。

 

もちろん、こんなトラブルなど起きず、お酒を飲むときには楽しく飲んで、安全に帰宅するのが従業員も会社もハッピーなのは間違いないでしょうね。

 

労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 労働事件のお話

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