相続で所有者不明になる土地と私道

最近、全国で雪が積もる風景がTVで報道されていますね。

 

静岡市に住んでいると、まるで他の国の風景を見ているようです。

 

例年通り今年も一度も雪は積もらず、晴れの日が続いています。

 

私が生まれてから現在まで、静岡市内で雪が積もったのを見たのは2回だけなので、静岡市の子供たちはTVを観てうらやましがっていると思います。

 

静岡市の魅力を伝えるコピーとして「本州に沖縄があった!」などがいいかもと、しょうもないことを考えてしまいました。

 

さて、土地を売ったり、買ったりするときに、その土地に通じている道路の幅や所有者が誰かは気になりますよね。

 

土地があっても、出入りする道路がなければ土地を利用できません。

 

その道路、必ずしも公道とは限りません。

 

住宅街の道路には周囲の土地所有者が土地の一部を出し合って、共有にしている「私道」がよく見られます。

 

ですから、土地を売買するときには道路の所有者を確認して、土地の所有者が道路の持分を持っていれば、その持分も一緒に売買する必要があるのです。

 

ところが、最近、誰も住まなくなってしまった住宅が増えているという問題が起きています。

<Designed by いらすとや>

私の経験した事案でも、土地の所有者が亡くなって相続の登記がされないままでいるうちに数十年経過してしまったというケースがあります。

 

亡くなった所有者が世帯主でなかったため住民票(除票)の調査もできず、本籍地が分からないので戸籍事項の確認もできませんでした。

 

そのため、相続人が不明になり、その土地の所有者が不明のため、「共有の私道」の持分を持っている人も不明となります。

 

この場合、道路が「共有の私道」だとしても、その下には水道管など公共の設備が通っていたりして、周囲に住んでいる人にとっては生活のために必須の工事があったりします。

 

ところが、民法では共有物の管理や変更について制限を設けています。

 

共有物について

① 物理的に変更するような処分行為にあたる場合は「全員」の同意が必要

② 性質を変えない範囲での利用、改良「過半数」の同意で可能

③ 現状を維持するような保存行為「単独」で可能

と定めているのです。

 

そのため、道路工事をする場合は通常は①にあたるので、共有者全員の同意がないとできません。

<Designed by いらすとや>

そうすると、私道の共有者の1人でも不明になると水道工事ができないことになったりして、他の共有者の生活に悪影響が出てしまいます。

 

このような相続に伴って所有者不明となる土地・建物はこれからも増えていくでしょう。

 

そこで、先日、2月1日に、法務省は、所有者の一部が所在不明になっている共有の私道について、補修工事などが円滑にできるよう同意の取り付け範囲のガイドライン(指針)を出しました。

 

ガイドラインでは、
共有私道が陥没したため、穴をふさいで再舗装したい場合
私有の水道管を共有私道の下に埋設したい場合
などは共有者の1人の単独の判断で工事ができるとしています。

 

つまり、工事をしないと周囲の住んでいる人が困るケースについて、民法の「保存行為」にあたると公的な解釈の方針を示して、共有者の1人の同意で工事が出来るとしたのです。

 

もっとも、民法の従前の解釈では、共有私道を掘り返して水道管を埋設してしまうような行為は、全員の同意が必要な処分行為だと私は思います。

 

新たな紛争の種にならないことを祈ります。

 

また、所在不明の共有者の土地から木の枝が伸びて共有私道の通行の妨げになっている場合でも、他の全員の同意があっても勝手に枝を切ることはできないとしています。

 

実は、これも民法に定めがあって、木の枝については土地所有者に対して切除を請求はできるのですが、いくら邪魔でも勝手に切ることはできないのです。

 

これに対して、根が私道に伸びてきて私道の利用が損なわれるときには、勝手に切っても構いません。

 

これはお隣同士でも同じです。

 

お隣の木の枝が自分の土地に伸びてきていくら邪魔でも勝手に切除すると損害賠償請求される危険があります。

 

でも、伸びてきた根を切る分には勝手にやって構わないということです。

 

隣に植えた竹から自分の土地にタケノコが生えたので、切って食べてしまっても実は適法です。

 

竹は建物の基礎を壊すとも言われて嫌われているので、あまり住宅に植える人はいないとは思いますが・・・

 

いずれにせよ、相続によって所有者不明の土地が増えていくと多くの人が困るので、いずれ抜本的に法律で解決する必要があるのでしょうね。

 

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 相続のお話

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