コメダ珈琲のマネはNG?~後半

だんだん暖かくなってきたのは嬉しいのですが、スギ花粉がピークで花粉症の私にとっては厳しいシーズンです・・・

 

さて、前回に引き続いて、
「㈱コメダが、和歌山県内にできた類似店舗の営業差し止めを求めた紛争」についてのご説明をしていきます。

 

この事案で主に争いになった点は

 コメダ珈琲店の店舗外観が、不正競争防止法に定める「商品等表示」に該当するか。

 この店舗外観が、不正競争防止法に定める「需要者の間に広く認識されている」(周知性がある)表示といえるか?

ということでした。

 

まず、について考えてみましょう。

 

「外装や内装がコメダ珈琲店とソックリだから営業を停止すべき」と主張するためには、その外装や内装そのものが「商品等表示」として保護されるものでなければなりません。

 

「商品等表示」というのは、営業をしている主体を顧客などに識別させるためのものであり、通常店舗の外観や店内の構造それ自体は営業主体を識別させる目的で作られるものではありません。

 

スターバックスやドトールでも、オシャレな店舗作りをしている所は、外観や内装が似ることもあるでしょう。

 

都市部の店舗は特にその傾向が強いので、私たちは外装よりもロゴでどの店舗か確認しますよね。

 

ところが、コメダ珈琲店の郊外型店舗ではちょっと違うようです。

 

裁判所の判断によると、「コメダ珈琲店の標準的な郊外型店舗の店舗イメージとして、来店客が家庭のリビングルームのようにくつろげる柔らかい空間というイメージを具現することを目して選択された」と指摘しています。

 

確かに、ログハウス風で天井が高かったりして、「長居しても怒られないかな~」という気持ちになる内装であることは私も感じます。

 

そこで、少なくとも郊外型のコメダ珈琲店の外装と内装は、他の同種店舗の外観とは異なる特徴を持っているので「商品等表示」にあたるとしました。

 

次に、について考えてみます。

 

営業をしていて、いきなり「外装や内装がソックリで不正競争だ!」と言われても、その外装や内装が世間の人々に知られていなければ商売に関係ありません。

 

例えば、喫茶店という営業の形であれば、多くの場合「落ち着いた」「オシャレな」「リラックスできる」など共通の目的で作られますから、お店の雰囲気も似てきます。

 

それを、全く知られていない個人の喫茶店とソックリだから営業を止めろと言われてしまったのでは、怖くて喫茶店の営業などできません。

 

そのため、この事案でも、世間の多くの人がコメダ珈琲店の外装や内装を知っていることが保護の要件になるのです。

 

さて、皆さんの目から見て、コメダ珈琲店の外装や内装は周知性があると思われるでしょうか?

 

私を含め、多くの人が「Yes」と答えるのではないでしょうか。

 

この東京地裁仮処分の判断でも、

(a) ㈱コメダは和歌山県内でこの店舗の外装を継続的・独占的に使用してきており、郊外型店舗で典型的に用いられていたこと

(b) テレビ番組や新聞・雑誌などで度々宣伝・報道がされ、視聴者・読者に認識されていたこと

(c) 幹線道路沿いの一戸建ての建物であるため、道路を通る人たちの目にとまっていたはずであること

などをあげて周知性を認めています

 

実際にも、自分の裁判例のデータベースにある店舗外観図を見るとソックリなので、私がもし何も知らなかったら「コメダ珈琲店が店舗名を幾つか増やしたのかな」と思ってしまうでしょう。

 

その点で、A社の営業が㈱コメダの営業を妨害する不正競争だと認定されたのでしょう。

 

なお、ここで使われた「仮処分(かりしょぶん)」という手続は緊急のものですから、ひょっとしたら本裁判で争った結果、仮処分と異なる判決が出る可能性もあります。

 

この場合には、A社が経営を差し止められたことで損害を被ってしまいます。

 

そこで、債権者となる㈱コメダは、仮処分の申立にあたって、損害賠償が発生したときに備えて裁判所に担保を入れなければなりません

 

担保の金額は、申立をした㈱コメダが勝つ可能性や差し止めを受けるA社が被る損害額などを総合的に考えて裁判所が決定します。

 

この事案で㈱コメダが裁判所に納めた担保は500万円でした。

 

つまり、仮処分の申立をする方も相当の覚悟を決めて勝負に出なければいけないことになります。

 

その後、本裁判がなされたという報道はされていません。

 

今、対象となった喫茶店のホームページを見ると、少なくとも外装は裁判の時の表示と大幅に変わってコメダ珈琲店と区別できる程度になっています。

 

カップやメニューが似ているような気はしますが、これは東京地裁も差し止めを認めていませんので、法的には許される範囲になります。

 

本裁判で勝つ可能性が高いとはいえ、リラックスできることが売りの㈱コメダが、いつまでも裁判の当事者になっていることは営業上はむしろイメージダウンでしょう。

 

おそらく、この事案では双方の会社や代理人弁護士もそれぞれの利益を考えて、和解で解決したものと私は推測しています。

 

「経営についての法律の問題」の過去記事はこちら 

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カテゴリー: 経営についての法律の問題

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