過労死の原因はどこに?

今週の木曜日に、沼津市に宅地建物取引士の法定研修の講師として行ってきました。

 

講義がちょうどお昼前に終わったため、昼食を沼津港内の食堂に行って食べてきました。

 

やはり、魚は美味しかったですが、それ以上に驚いたのは、自動車のナンバーでした。

 

港の共同駐車場に停めてある自動車のナンバープレートの地名が「沼津」や「静岡」はほとんどなく、「品川」「足立」「習志野」「長野」など県外のものでした。

 

沼津港深海水族館など話題になる施設ができて、近くに伊豆や箱根という観光地を抱えているので、平日にも観光客が来るのでしょう。

 

さて、最近、電通の新入社員だった、女性従業員(当時24歳)が平成27年(2015年)に過労自殺したことが話題になっていますね。

 

過労死」は「過労を原因とする死亡」という意味ですので、その死亡の経緯が自殺の場合と不整脈など突発性の症状の場合があります。

 

いずれも過労→死亡との間の関係性(因果関係)の証明が一番難しいし、争いになるところだと思います。

 

先月末には、三重県の津地方裁判所でも過労死について、経営者側に約4,600万円の賠償を命じる判決が出ています。

 

この経営者はミスタードーナツのフランチャイズをしている四日市市の中小企業です。

 

ドーナッツ店だけでなく、コンビニエンスストアや自動車用品販売店など大手の小売チェーン店は、その会社が直営するよりも、地域ごとの中小企業に経営を委託するケースの方が多いです。

 

私たち消費者は、ミスタードーナツ、セブンイレブン、ファミリーマート、ケンタッキーフライドチキン、オートバックスなど、おなじみの看板があれば、「看板のお店」という認識で買物をすることが多いです。

 

しかし、例えば同じファミリーマートでも、静岡市の中心部のお店と海の方のお店とは経営会社が違うことが多いです。

 

ですから、一見、「ミスタードーナツの店長が過労死」というと、大企業の従業員が過労死したように見えますが、実は、実際には看板を借りて営業をしているその地域の中小企業の従業員が過労死したということなのです。

 

この津地裁の裁判でも、ミスタードーナツを全国展開している㈱ダスキンが被告となるのではなく、加盟店となっている(看板を借りている)中小企業が被告となっています。

 

そのため、有名な看板のお店で過酷な労働条件で働かされる従業員が出てきやすいのです。

 

この裁判では、50才の店長が過労により不整脈で死亡したところ、そのお店では死亡する前の6ヶ月間の残業・休日出勤(時間外労働)が月112時間を超えていたということです。

 

過労死ラインと言われるのが残業80時間ですから、大幅なオーバーと言えるでしょう。

 

また、会社が店長の業務負担を軽くするための改善対策をとらなかったことも重くみました。

 

過労死の原因を作るのは、時間外労働の時間数だけでなく、職場の環境や人間関係にも大きな要因があると思います。

 

電通の事案でも、上司や同僚が、お互いに勤務の大変さについて理解しあえる環境にあれば、結果は大きく異なっていたように思えます。

 

津地裁の事案でも、業務の中での悩みを一生に考える副店長がいれば、やはり死亡するほどの不整脈になる前に病院に行けていたかもしれません。

 

そのような意味では、津地裁が、使用者側に労働者の健康状態や労働環境に配慮すべき安全配慮義務違反を認めたことは実態に即しているように思えます。

 

今後も、従業員に大幅な残業をさせている中で死亡した場合には、使用者に安全配慮義務違反の責任が認めれることが増えてくるでしょう。

 

その場合には、未払の時間外手当だけではなく、将来得られるはずだった所得、慰謝料など様々な責任が生じます。

 

津地裁の判決が約4,600万円の支払を命じたのもこれらを含むという趣旨でしょう。

 

経営者側も、目先の利益から人件費削減を重視しすぎると、「人の死」そして「会社の信用喪失」という取り返しの付かない結果を生じることを予測する必要があるのでしょうね。

 

労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 労働事件のお話

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