預貯金も遺産分割調停・審判の対象となりました

1月になって、急に寒い日がありますね。

 

大雪などでご苦労されている方もいると思います。

 

雪が降らない静岡でもインフルエンザなど、この時期特有のトラブルが流行っています。

 

皆様もくれぐれもご体調にお気をつけ下さい。

 

さて、遺産を分けるときに、相続した人同士で話がまとまらない場合に家庭裁判所で調停を申し立てることができるというお話は以前したと思います。

 

この調停では相続をした人全員が当事者となって、家庭裁判所の調停委員の仲介の下で話し合いをします。

 

これを「遺産分割調停」といいます。

 

遺産分割調停は、あくまで話し合いの手続ですから、話し合いで合意できず調停が成立しない時もあります。

 

その場合には、それまでの調停手続をふまえて「審判(しんぱん)」という手続に移ります。

 

この遺産分割審判では、裁判官が主導して調停の資料に、更に必要な資料を当事者から提出させ、話を聞いて、話し合いができなくても「審判」という結論をくだします。

 

さて、この遺産分割の調停審判対象になるのは、相続した時点で分割できていない遺産だけです。

 

例えば、土地、建物や貴金属などは、その性質上分割して平等に分けることができません。

 

ですから、だれがどのように取得するのかを調停で話し合って、それでも解決しない場合には審判にしたんですね。

 

ところが、亡くなった人(これを「被相続人」といいます。)が預金を持っていたり、誰かにお金を貸し付けていた場合は別です。

 

なぜなら、預金というのは金融機関に対する債権であり、貸付金も債権です。

 

2,000万円の預金債権や貸付債権を2人で平等に分けるのに相談は要りません。

 

単純に1,000万円ずつ債権を相続すれば、誰が見ても平等だからです。

 

そのため、例えば、遺産の中に土地、建物の他に預金があった場合、遺産分割調停や審判では原則として、預貯金は対象となりませんでした。

 

当事者の全員が合意した時にだけ、調停で対象にできただけでした。

 

ところが、遺産分割の当事者や代理人となる弁護士にとっては、この考え方は非常に不便でした。

 

例えば、遺産として500万円の価値のある土地・建物があり、その建物に長男家族が住んでいたとしましょう。

 

遺産にはその他に預貯金2,000万円があったとします。

 

二男と相続について話し合いましたが、二男は長男が被相続人から2,000万円の贈与を受けていたという主張を言い張って合意しようとしません。

 

この場合、今までは、預貯金2,000万円を1,000万円ずつ自動的に相続しあって、残りの土地、建物(500万円)と2,000万円の贈与についてだけ遺産分割審判の対象とならざるを得ませんでした。

 

でも、長男は自分と家族が住んでいる土地、建物は譲れない上、2,000万円の贈与を遺産として戻すことも経済的に難しいことが多いです。

 

二男は、長男家族が居住を続けるなら土地、建物の価値の半額の250万円と贈与の半額の1,000万円の合計1,250万円を支払ってくれないと納得しないでしょう。

 

従来では、調停で話し合いがまとまらない場合、審判で土地、建物を競売にかけてしまった上で、長男に次男に対して1,250万円を支払うよう命じるしかありませんでした。

 

でも、対立が激しい遺産分割ですから、長男は預貯金として相続した1,000万円を勝手に引き出して使ってしまったり、隠してしまうこともあり得ます。

 

そうすると、二男は結局不動産を競売にかけて得た金額しか手に入れられません。

 

しかし、長男がどうしても出て行かない場合、競売の手続費用だけでも相当額がかかってしまう上に、実際に売れる金額も評価額よりも低いです。

 

これに対して、もし、預貯金も遺産分割調停や審判の対象として遺産に含まれるとすれば、審判で、土地・建物を長男が相続する代わりに、預貯金2,000万円を全て二男に与えた上で、250万円を長男が次男に支払うように命令することが可能です。

 

そのような解決であれば、二男もとるべき遺産のほとんどを手に入れられますし、250万円の支払を分割にすることにも同意しそうです。

 

逆に、長男も250万円の支払を渋ったことで、自宅を差し押さえられて競売にかけられることは避けたいので、できる限り借入でもして支払おうとするでしょう。

 

このように、遺産分割では預貯金が、長男と次男の利害を調整するという大切な役割を果たします。

 

そこで、最高裁判所決定(平成28年12月19日)で、従来の預貯金が相続とともに自動的に分割されるという考え方を変えました。

 

預貯金には、先ほど書いた調整金としての役割、確実に引き出せることから現金に近い性質を持っていること、入出金や利息で残高が常に変動するので確定額として自動分割しにくいことから、相続によっても当然に分割されずに遺産分割調停や審判の対象となるとしたのです。

 

ですから、例えば貸付金債権については、預貯金と同じようには考えられず、従来通り相続とともに自動的に分割されることになると思います。

 

貸金債権は、確実に回収できるとは言えませんし、預貯金のような入出金はないからです。

 

この最高裁の決定は、これからの実務に大きな影響を及ぼしそうです。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 相続のお話

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