死刑って必要なの?

私は機械いじりが昔から大好きで、ラジオを組み立てたり、家庭用電化製品を自分で修理したりしています。

 

ですから、製造業の訴訟や物作りの会社破産事件は、得意な方だと思いますし、事件の件数も多いと思います。

 

ということで、時代に逆行するのですが、自動車のメカニックについても非常に興味があります。

 

先日、一度「トヨタ86」というスポーツカーに試乗してみようと静岡トヨタのディーラーに行ってみました。

 

すると、トヨタのディーラーがレース用にチューンするショップ「エリア86」が併設されていました。

 

その「エリア86」が、本来ターボ仕様が無い「トヨタ86」にターボをつけて、足回り・内装からハンドリングまでレース仕様にしたクルマが展示されていました。

 

もちろん、外観も凄いです(ディーラーの方の了解を得て写真を撮りました)。

車の外観

 

「どんなチューンをしているのだろう?」と、エンジンルームをジーっと眺めていると、「86」というナンバープレートがついているのに気が付きました。 エンジンルーム

 

「ひょとしたら、公道で運転できるのではないか?」と思い、ディーラーの人に試乗できるか確認したところ、なんとOKが出ました。

 

マニュアルシフトの自動車を運転するのは20年ぶりくらいだったのですが、不思議なもので、体が覚えていて問題なく運転できました。

 

内装も助手席の前にまで油温計などズラーっとメーターがついていて、本当にレース車の雰囲気でした。

車の内装

 

ターボの加給音も「ゴーッ!」といういかにもレース車っぽい雰囲気。

 

さて、この自動車いったいいくらだと思いますか?

 

私も興味本位で聞いてみたところ

「だいたい通常仕様の86が2台買えるくらいの価格になります。」

とのこと!

 

通常仕様がおそらく300万円くらいでしょうから、約600万円!になるということです。

 

さすがに、実用的ではなく、試乗だけを楽しむことにしました。

 

さて、今回どうして死刑制度なんてテーマを選んだかというと、弁護士会で「死刑制度を考える」アンケートが配布されてきたからです。

 

私自身の考えは別として、そのアンケートについていた資料で興味深いものがあったのでご案内しようと思います。

 

まず、EU(欧州連合)に加盟する28国の全てで死刑を廃止していて、日本に対しても死刑廃止に加わるよう呼びかけをしてきているそうです。

 

死刑を肯定する考えの根拠とされるものに、①殺人罪など重大な事件が増加するのではないか、②遺族の気持ちとしては死刑を強く求めるのではないかというものがあります。

 

このうち①については、終身刑と死刑とで犯罪抑止力には差は生じないという調査結果が出ています。

 

これは、死刑制度を廃止した国々が、廃止前の犯罪発生率と廃止後の犯罪発生率の統計をとったものです。

 

これに対して、②については、事件で見ているとやはり遺族感情は厳しいものが多いように思えます。

 

自分にとって大切な人を殺人で失った場合には、おそらく犯人には極刑(死刑)を求める遺族の方が多いでしょう。

 

これは日本に限ったことではなく、死刑を廃止した欧州の国々でも廃止当時の死刑支持率は高かったようです。

 

もう一つ、日本の制度で誤解があると思うのが無期懲役刑の仮釈放の運用です。

 

無期懲役刑になった場合、20年もすれば仮釈放で出てこられるという誤ったことを書いてある記事を少し前までは良くみかけました。

 

2005年~2014年の10年間の無期懲役刑の刑務所に入れられている平均期間は30年を超えていて、その仮釈放の確率も4%弱とのことです。

 

最近の運用でも30年を超えないと仮釈放は殆ど認められないようです。

 

成人になってから殺人を犯した場合には、50才を過ぎてから仮釈放の本格的な審査が始まり、その率も非常に低いということです。

 

具体的に想像してみると、30年間以上を刑務所の中で模範囚のような生活をしてきた人だけが仮釈放されているということでしょう。

 

その上、30年以上前というと、PCやスマホ・携帯電話、インターネットも全く無い時代です。

 

出所した時には、日本語が外国語のように感じるでしょうし、人が社会性を育む時期に刑務所にいたのですから、まともに働けるはずがありません。

 

もっと短い刑期の窃盗事件などでも、数年受刑してしまうと履歴書だけで採用を蹴られてしまうのが現実です。

 

説明できない数年の空白期間があるだけでどこの会社も敬遠しますし、その理由を正直に話せばなおさら採用されません。

 

理解のある中小企業の社長などに雇用してもらうか、履歴書すら不要な企業(その過酷さは想像できるとは思いますが)に就職するしかないのです。

 

つまり、無期懲役刑になった時点で、年齢によってはほぼ獄中死することが確定しているか、仮釈放されたとしても、社会的には相当過酷な社会的制裁が待っているのです。

 

そう考えると、ひょっとしたら、苦しまないように絞首刑を実施する日本の制度の下では、無期懲役刑にした方が実際の犯人が長く苦しむことになるのかもしれません。

 

反省しない受刑者は仮釈放されずに獄中死しますし、ごくわずかの反省した模範囚ですら過酷な社会的な制裁を中高年になってから受け続けることになるからです。

 

もちろん、人を殺したのですから、その動機や犯行の背景に特別な事情が無ければ、「死をもって償うべき」という考えも論理的です。

 

アメリカでも50州のうち死刑を廃止した州は23州ということらしいので、考え方は分かれているのでしょう。

 

弁護士という立場だと、死刑廃止を当然に主張するという訳では無く、私はどちらにも与しないようにしています。

 

時間をかけて議論しないといけない問題だと思っています。

 

 

刑事弁護についての基礎知識についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 刑事事件のお話

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