無断録音・無断撮影のデータは、裁判で証拠として使えるの?

弁護士のタイプを、イヌ科とネコ科に分けたとします。

 

イヌはもともと狼が先祖で、群れのリーダーに従いながら集団で狩りをして生活をしていました。

 

ですから、犬が獲物を捕まえるときには、相手を威嚇しながら追い込んで、追い詰めた上でとらえます。

 

これに対して、単独行動型のネコは虎の仲間です。

 

虎は密林の中で、獲物の通り道を確認すると、その風下で匂いで気づかれないように何時間でも待ち続けます。

 

そして、獲物が通りかかった瞬間に、虎パンチと噛みつきで一瞬で仕留めるわけです。

 

これの性格は、リーダーをしっかり決めるイヌと、物陰から飛び出してじゃれついてくるネコの性格に受け継がれています。

 

これを弁護士に置き換えると、大人数の法律事務所に所属し、全員の連名で書面を出して、威嚇を交えながらの攻撃をするのがイヌ科に近いのでしょうか。

 

しかし、私をどちらかに例えるとすると、間違いなくネコ科です。

 

訴訟でも、相手を威嚇して追い詰めるような方法は一切とりません。

 

どちらかというと、相手の法的な弱点を分析したり、相手がボロを出すのを待っていることが多いです。

 

すでに弱点やボロを見つけていても、どのタイミングで主張するのが最も適切か、気長に待ち続けます。

 

そして、手続きごとのに適したタイミングをみて、一気に主張する手法の方が性にあっています。

 

それが成功すれば、虎の一撃になりますし、失敗するとネコパンチ(笑)になってしまうわけですね。

 

自宅では、ラブラドールに勝手にリーダー扱いされていますが、もともとリーダーの器ではない私にとっては、何となく居心地が悪いです(笑)。

 

「気楽にいこうぜ」と言っても、ネコたちには通じていますが、どうもイヌには通じないようです。

 

逆に、その誠実さと一生懸命さが、イヌの魅力でもあるんでしょうね。

 

さて、違法収集証拠という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

 

読んで字のごとく、違法な方法で集められた証拠です。

 

犯罪を裁く刑事訴訟手続ではこの原則が極めて厳しく適用され、証拠として裁判に提出できません。

 

なぜなら、警察・検察という強大な国家機関により、違法に集められた証拠が冤罪(えんざい)結びつく危険性が高いからです。

 

ところが、契約の不履行交通事故不貞行為慰謝料請求離婚などの民事訴訟手続では必ずしもそうではありません。

 

例えば、民事訴訟手続で違法に集められた証拠として典型的なものとしては、無断でコピーした日記、盗聴録音データなどが問題となります。

 

これらを、民事訴訟で証拠として使えるのでしょうか?

 

これを判断する裁判例での一般的基準としては、

「その証拠が、しく反社会的な手段を用いて人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって採集されたものであるときは」「証拠能力否定されてもやむを得ない」としています。

 

要約すると、原則として証拠として提出できるものに制限はないが、

一般の常識からみて極端に限度を超えていて人格権など他人の重大な権利を侵害して得られた証拠は、裁判提出できない

ということです。

 

例えば録音で言えば、相手との会話を相手の同意なくこっそりICレコーダーやスマホで録音した場合、その録音データは証拠として使えます。

 

しかし、相手の家に忍び込んで盗聴器を仕掛け、その録音したデータを証拠として使うという場合は別です。

 

この場合、他人のプライバシーや住居権という重大な権利を侵害する方法(犯罪にもなります)で得られた証拠なので、裁判所に証拠として出すことを認めないんですね。

 

同様に、日記のコピーであっても、自分自身がたまたま保管していたり、同居する配偶者や親族の日記をこっそりコピーするのであれば、そのコピーは証拠として使えるでしょう。

 

しかし、日記を相手から盗んできてコピーした場合には、その方法自体が犯罪ですから、違法収集証拠として、裁判では証拠として提出できません。

 

では、クイズです。

 

証拠として裁判所に提出できるか、ちょっと考えながら読んでください。

 

夫の不倫相手に対すして妻が慰謝料請求訴訟を起こしました。

 

妻はその証拠集めとして、別居している夫のマンションの郵便受けをチェックして、不倫相手から夫への手紙があったので、それを無断で持ち出しました。

 

この手紙証拠として使えるでしょうか?

 

このケースで、名古屋地裁は、証拠として使える(証拠能力がある)と判断しました。

 

以上のことをスマホで考えていくと、同居している夫婦のスマホについて、こっそりデータをPCへ転送したり、メール・LINEの画面を無断で撮影することはOKです。

 

それらのデータをプリントアウトした資料は、民事訴訟では証拠として使えると思われます。

 

逆に、別居後に、家に忍び込んで同じことをすると、証拠として使えなくなりそうです。

 

なお、録音・画像データを裁判所に提出する場合には、裁判所によって一定のファイル形式を指定している場合があります。

 

ちなみに、静岡地方裁判所は、分かりやすく言うと、Windows Media Playerで再生できる形式のものとしています。

 

また反訳書などの説明書面を一緒に提出することを必要とします。

 

もし、裁判まで考えている方は、証拠として使えるものを数多く集めておくと、勝率が上がりますので、頭に置いていただければと思います。

 

「裁判手続で知っておきたいこと」の過去記事はこちらへどうぞ。 

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カテゴリー: 裁判手続きで知っておきたいこと

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