軒を貸して母屋を取られる

私が、仕事に疲れた時に一休みとして、良くやるのが、ネットでの他の読者の本の感想を読んでみることです。

 

小説以外ではアマゾンで本を購入することが多いのですが、他にも興味本位で「○○ランキング」みたいなHPへ飛ぶこともあります。

 

この前、「東野圭吾のおすすめランキング」というサイトを見てみました。

 

1位 容疑者Xの献身

 

「うん、うん。これを読んで泣かない人はいないだろう。」

 

2位 白夜行

 

「確かに、容疑者Xの献身が出る前は、これが最高傑作だと思ってたからな~」

 

3位「手紙」

 

「あれ?この本読んだことない。『秘密』、『赤い指』などを押しのけて上位に来る長編?」

 

さっそく、書店に行って即購入しました。

 

しかし、まだ読んでいません。

 

それは、もし「手紙」が本当に、私にとって面白かった場合、平日の夜に読み始めると読書が止まらなくなり、翌日の仕事に差し支えることが目に見えているからです。

 

小学校高学年から大学生まで、「面白い本に夢中になって、気がつくと午前4時」ということは日常茶飯事でした。

 

そして、その日の授業は爆睡状態で、先生に怒られ続けた人生でした。

 

でも、それは私が悪いのではなく、そんな素晴らしい本を書く作家が悪いのです(キッパリ)。

 

とはいえ、社会人になるとそういう訳にはいきませんよね。

 

そこで、私は社会人になってからは、平日の夜遅い時間に読む本は、ビジネス本か小説なら短編集と決めているのです。

 

ですから、「手紙」を読むのは、今度の日曜日の昼間と決めています。

 

ところが、先日大失敗をしてしまいました。

 

湊かなえの「往復書簡」という本を何となく買って、夜読み始めてしまいました。

 

確かに短編といえば短編ですが・・・

 

この先は、読んでない人のために伏せておきますが、とにかく気がついたら午前3時過ぎでした。

 

もちろん、翌日の仕事は眠くて眠くて。

 

これも、私が悪いのではなく、本屋のポップを貼った人か、湊かなえさんが悪いのです・・・

 

さて、「軒(庇)を貸して母屋を取られる」ということわざがありますよね。

 

「一部を貸したために、その後全部を奪われるようになる。」という意味でしたね。

 

日本の借地借家法の下で、建物を貸すというのはまさに、このことわざの通りとなる危険性があります。

 

まず、連帯保証人をしっかりとつけてもらわないと、借りた人が賃料を支払わなかった時に苦労します。

 

確かに、請求しても賃料を支払わない場合には、賃貸借契約を解除して、「建物から出て行って欲しい」と請求はできます。

 

でも、多くの場合、

 

「出て行く引っ越しのお金もないんです。」

 

「新しく入る所の敷金も払えないし、審査も通らないんです。」

 

などと言って、出て行ってくれません。

 

それが真実の時もありますし、ウソの場合もありますが、いずれにせよ結果は一緒です。

 

こんな時に勤務先がしっかりした連帯保証人をつけておけば、必ず払ってくれますから、そちらから賃料をもらうことで解決できるのです。

 

では、連帯保証人さえつけておけば、安心なのでしょうか?

 

例えば、アパートのように、貸して賃料をもらうのが目的の場合には、原則としては安心といって良いでしょう。

 

しかし、一軒家を貸す場合には、色々と問題が起きます

 

一番多いのは、自分が一軒家を貸したけれども

 

① 自分や身内がそこに住みたくなった

 

② 不動産として持っているよりお金が必要なので、売りたい

 

という動機で、借りている人に出て行って欲しいというケースです。

 

さて、この場合、事情を説明すれば簡単に出て行ってもらえるでしょうか?

 

この場合、先ほどの長期の賃料滞納など、借りている人に重大な問題があれば契約を解除して、最終的には裁判をすれば出て行ってもらえます。

 

しかし、借りている人に問題が無い場合には、出て行ってもらうには「正当の事由」が必要なのです。

 

借地借家法によると、この「正当の事由」は、

 

① 建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情

 

② 建物の賃貸借に関する従前の経緯

 

③ 建物の利用状況

 

④ 建物の現況

 

などを考慮して決められます。

 

例えば

 

①では、ただ、今済んでいる所が狭いから貸している家を返して欲しいなどという理由では弱いです。

 

例えば、火災や震災で済んでいる家が消失してしまったというようなケースであれば認められやすいでしょう。

 

②は、大家さんと借主が非常に険悪な関係で、借主が大家さんに嫌がらせを長期間やってきているという事情があれば、認められやすいでしょう。

 

③は、長期間そこに家族で済んでいるのであれば出て行けの言いにくいでしょうが、単身者が1~2年済んでいただけであれば、認めやすいと思います。

 

④は、建物がどれだけ老朽化して危険な状態かが争われることが多いです。

 

というように、賃借人に問題が無い場合には、でていってもらうのには、相当大きな理由が必要で、また、それにくわえて立退料も支払わなければならないことが多いのです。

 

まさに、大家さんとしては、「軒を貸して母屋を取られる」という気分でしょう。

 

このように、一度貸してしまうとよほどの「正当の事由」がないと返してもらえなくなるという制度だと、大家さんが警戒して建物を貸さないようになります。

 

しかし、それでは、建物の有効活用を害するとともに、「一定期間で良いので借りたい」という人のニーズまで満たせなくなってしまいます。

 

そこで、平成12年から、借地借家法で「定期借家制度」として、契約期間が終了したら正当の事由が無くても出て行ってもらえる契約が作られました。

 

この「定期借家」の要件と次のとおりです。

 

① 必ず契約書(できれば公正証書)を作ること

 

② その契約書面に定期借家であることが明確に記載されていること

 

③ 契約書とは別に、一定期間で終了する契約だということを説明する書面を借主に渡して説明する必要があること

 

④ 期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に、期間満了による終了を通知すること

 

が必要になるのです。

 

結構、面倒ですね。

 

でも、これをしておけば、建物利用に予測が立ちますので、将来、自分や身内が使う可能性があれば、定期借家契約をしておくべきでしょう。

 

逆に、借主の場合には、長期間借りて住みたいと思っているのであれば、普通の賃貸借契約をしている大家さんを捜すべきでしょう。

 

家を借りる時も貸す時も、最初の契約が肝心ということですね。

 

不動産トラブルの基本知識についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 不動産のトラブル

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