ヤミ金に倍返し?

クリスマスも終わり、昨日で仕事納めという方も多かったのではないでしょうか。

 

当事務所も26日から事務員には休みをとらせています。

 

私は、26日、27日でたまった仕事を片付けて、今日からゆっくり休養する予定でした。

 

ところが、仕事納め直前に限って、色々な仕事が入ってしまい、26日、27日と今日の午前中はその対応だけで終わってしまいました。

 

今、本格的に、たまった仕事の処理を始めたところです。

 

毎年、年末になると多いのがヤミ金がらみのご相談です。

 

今年も、例にもれず何件か飛び込んできました。

 

普通、ヤミ金というと、借りる側からは情報をできる限り集める一方、自分の方は携帯電話の番号と返済先の個人名の振込先口座しか知らせません。

 

当然、携帯電話も、振込先口座も、お金がどうしても必要な赤の他人を利用して、その他人名義で契約させて買い取ったものです。

 

そのため、携帯電話の契約をした人や振込先口座の名義人を詐欺罪で逮捕しても、その先にはなかなかたどりつけないんですね。

 

ところが、今回、飛び込んできた相談の一つに、珍しく、お金を貸す時に直接訪ねてきたヤミ金業者がいました。

 

そして、20万円を渡して、依頼者の方の住民票と印鑑証明書だけ持って行ったというのです。

 

訪ねてきたヤミ金業者が「A」と名乗っていたとしましょう。

 

Aは、依頼者の方に、

「また、利息だけ取りに来る。利息は1ヵ月で1割だ。」

と言って帰りました。

 

初めは、資金の必要性に急かされて考えられなかったのですが、その依頼者の方もしばらくたって、

「自分は、相当危険な筋の人からお金を借りてしまったのではないか」

と気がついて、私の事務所に慌てて電話をしてきたようでした。

 

相談を受けて、私が初めに思ったことは、

「自分で利息を取りに来たら、相当、間抜けなヤミ金か、資金力が無くて、飛ばし(無関係な他人名義)の携帯や通帳を手に入れられないヤミ金なんだな~」

ということでした。

 

そこで、本当に訪ねてくるのか試してみようと、私からAの携帯番号へ電話して、本当に来るつもりがあるのか聞いてみることにしました。

 

電話をかけた最初は、何か、脅しめいたことを言っていましたが、私が

「20万円全額は、今、私が預かっている。もし返して欲しいなら、○月○日に事務所に訪ねてきて下さい。静岡駅についたら必ず電話をください。」

と丁寧に言うと、Aは

「それでは、取りに行く」と言いました。

 

月1割の利息は、トイチ(10日で1割)ほどではありませんが、年間で120%となるため、2倍以上の返済を1年間でしなければなりません。

 

もちろん、利息制限法にも違反する利息の約束で無効ですし、貸金業の登録をしないで「業として」貸し付けを行っていれば刑罰ものです。

 

そこで、近くの警察署に連絡をして、事情を説明したところ、もし訪問してきたら刑事事件の捜査として協力してくれるということになりました。

 

当日、Aは本当に私の事務所に来ました。

 

私は半ば呆れながら、警察署に連絡をした上で、Aと話をしました。

 

依頼者は、Aから借りたと言っており、ヤミ金もAと名乗っていますが、刑事事件になるような行為を行う人間が本名を名乗るはずがありません。

 

そこで、私は、依頼者から「Aから借りた」と聞いているので、他の人に返す訳にはいかないので免許証など身分確認証を見せて欲しいと言いました。

 

すると、Aは猛烈にそれを拒否してきました。

 

そこで、「返せ」「返せない」などの押し問答をしているうちに、刑事さんが2人来てくれました。

 

おかげで、生の現場で、刑事による職務質問を見られて、とても興味深かったです。

 

詳しい内容は捜査の秘密に触れるので書けないのですが、さすがに刑事さんもプロだけあって、とうとう免許証を見させることに成功したんですね。

 

すると、免許証の名前は、予測通り「B」となっています。

 

そこで、私はすかさず、

「ごめんね。Aさんから借りたお金を、Bさんには返せないよ。」

と言ってやりました。

 

でも、その時点では、そのA=Bは、警察から逃げることに必死で、20万円の返済のことは頭から全く飛んでいる様子でした。

 

その後、確たる証拠も無いということで、その場での逮捕は無く、A=Bは帰って行きました。

 

その日の夜、そのヤミ金業者のリーダー的な者から、怒りの電話がかかってきました。

 

最後に捨て台詞で、

「20万円なんかいらねえよ。だから、これは民事で、警察は関係ねえからな。」

と吐き捨てました。

 

その時、私が思ったのは、この20万円を私や依頼者がもらってしまうことは、果たして正しいことだろうかということです。

 

もちろん、法律的には、もらってしまっても違法ではなく、何ら問題はありません。

 

むしろ「倍返し」で痛快という考え方もあろうかと思います。

 

しかし、「借りたものは返す」という当然のことを、法律を利用して、逆にA=Bから巻き上げてしまうのは本当に正しいことなのかと疑問を持ちました。

 

また、自分が刑事事件の弁護人の立場でA=Bを見た場合のことを考えました。

 

そうすると、A=Bは、目先の小金欲しさに、暴力団等の金主から金銭を借りて、利息の相当額を吸い上げられている単なる手先に過ぎないだろうなと推測できます。

 

そこで、私はそのリーダー的な男に

「いや、いや、今度は警察呼ばないから、Aと名乗った人が取りに来て下さい。依頼者に同席してもらい貸した本人を確認できたら、20万円全額返しますから。」

と言いました。

 

その後、Aから電話がかかってきて、来所することになりました。

 

依頼者と対面させて、本人だと確認できたので、事前に作成した和解契約書に署名をしてもらって、20万円を返しました。

 

私が朱肉を差し出すと、A=Bは、こちらが何も言わないうちから、慣れた草で指印を押してきました。

 

それを見て、私は、「ああ、前科があるから、よほど刑務所に入りたくなかったんだな。」と、思わず同情してしまいました(捕まって取り調べを受けると、被疑者・被告人は嫌というほど指印を押すので癖になるんですね。)

 

A=Bも、被害を最低限に食い止められたし、依頼者の方お金を受け取ること自体に恐怖を覚えていたようなので、Win-Winの結末でした。

 

もちろん、依頼者の方には、二度とこのような得体の知れない所からお金を借りないように注意しておきました。

 

本当は、たまった訴状をじっくりと作成するはずだった事務所の休日の時間が、これで大分潰れてしまったので、一番損をしたのは私だったのかもしれませんね・・・

 

借金問題ご解決方法についてはこちらをご参照ください。

 

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カテゴリー: 借金のお話

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