面会交流を間接的に強制するためには? ~ 夫の戦略

この前の台風の連続、皆様はどうでしたでしょうか。

 

静岡市付近では幸い、大きな被害は免れたようです。

 

気候も、寒暖の差が激しい日が続きますので、皆様も、服や布団などに十分にご注意して、風邪などをひかないようにお過ごしください。

 

さて、夫=父親が子供との面会交流について、調停又は審判で定めてもらったとします。

 

ところが、それにも関わらず、妻=母親が子を合わせようとしないというケースが珍しくありません。

 

特に、子供が小さい場合、子供の面会交流を円滑に行うのに、母親の協力がどうしても必要です。

 

では、母親が協力しない場合にはどうしたら良いのでしょうか。

 

例えば、調停又は審判に違反する行為であり、自分の父親としての権利を侵害し精神的に傷つけるものだとして損害賠償請求をすることも考えられます。

 

でも、子供に愛情を持っている父親であれば、お金の請求を妻にして、それが認められても目的を達成はできません。

 

では、どうしたら良いのでしょうか。

 

一つの方法として、「間接強制かんせつきょうせい)」という方法が考えられます。

 

裁判所に、面会交流について、「もし面会交流に応じなかったら、1回の拒否ごとに金○万円支払え」との命令を出しでもらうのです。

 

金銭的なプレッシャーをかけることで、母親に面会に応じさせるという強制執行の方法です。

 

ただ、今年の3月に最高裁で3つの判決が出ていて、その中の二つは間接強制を否定し、その一つは間接強制を認めています。

 

その違いは、子供を実際に育てている母親が、父親に対して面会交流として行う義務の内容明確に特定されていないとダメだということです。

 

そして、その両者の違いは、法律の専門家以外から見ると、本当に小さい違いです。

 

ですから、子供に絶対に面会したいと思う場合には、相当注意して、調停条項や求める審判の内容を求めていく必要があるんですね。

 

例えば、次のような定め方では、どうだと思われますか?

 

① 面会交流は、2箇月に1回程度、原則として第3土曜日の翌日に、半日程度(原則として午前11時から午後5時まで)とするが、最初は1時間程度から始めることとし、子の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする。

②母親は、上記①の面会交流の開始時に所定の喫茶店の前で子を父親に会わせ、父親は終了時間に同場所において子を母親に引き渡すことを当面の原則とするが、面会交流の具体的な日時、場所、方法等は、子の福祉に慎重に配慮して、母親と父親の間で協議して定める。

 

最高裁は、これでは母親に対して強制する行為の内容が明確ではないとして、間接強制認めませんでした。

 

では、どの程度、面会交流の内容を明確に定めれば良いのでしょうか。

 

最高裁が、間接強制認めたものは、次のような審判がなされたケースでした。

 

① 面会交流の日程等は,月1回,毎月第2土曜日の午前10時から午後4時までとし,場所は,子の福祉を考慮して父親の自宅以外の父親が定めた場所とする。

② 子の受渡場所は,母親の自宅以外の場所とし,当事者間で協議して定めるが,協議が調わないときは,所定の駅改札口付近とし,母親は,面会交流開始時に,受渡場所において子を父親に引き渡し,子を引き渡す場面のほかは,面会交流に立ち会わず,父親は,面会交流終了時に,受渡場所において子を母親に引き渡す。

 

まず、①の点について比較すると、面会交流の日時が、後の事案の方が明らかに明確です。

 

先の事案では、回数については「2箇月に1回程度」、日時についても「原則として第3土曜日の翌日に、半日程度」と「○○程度」という不明確な内容となっています。

 

これに対して、後の事案では、回数については「月1回」、日時についても「毎月第2土曜日の午前10時から午後4時まで」と、明確に定められています。

 

また、②の点についても、先の事案では、面会交流における子の引き渡しの場所や方法について、原則は定められているものの、最終的には父母協議の上定めることになってしまっています。

 

これに対して、後の事案では、協議が整わない場合に、母親がどこでどのように子供を父親に引き渡すかが明確に定められていますよね。

 

これらの違いで、父親は、調停や審判後に、面会を拒絶する母親に対して、間接強制を求められるかどうかが違ってくる訳です。

 

父親が子供に確実に会うための戦略としては、調停成立時や、審判になってしまった場合には、書面で自分の求める面会交流内容を明確に特定して書いて提出しておく必要があると言えるでしょう。

 

もちろん、父母が離婚後も、夫婦ではなくても、子供を愛する気持ちに変わりはないことを、子供に自然に感じさせることが、最も大切なことは確かです。

 

父母が婚姻していても、虐待されてしまう子供もいれば、離婚しても、父母の愛を信じることができる子もいます。

 

結局は、両親自分のことよりも、子供のことを大切に考えられるかどうかがこの紛争のポイントではあるんですね。

 

離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。 

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カテゴリー: 離婚のお話

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