天気予報によると、今日(8月8日)は、全国的に比較的気温が上がらないそうです。
連日厳しい暑さが続いていますので、中休みになると良いですね。
当事務所は、来週、お盆の週はお休みさせていただきます。
ブログの方も、来週更新分はお休みとさせていただきたいと思っています。
さて、国歌斉唱と起立のお話の第3回です。
今回は、最高裁が教育委員会の減給処分を違法とした事案について考えてみましょう。
事例としては、公立高校又は公立養護学校の教職員の方が、卒業式で、国旗に向かって起立して国歌(君が代)を歌わなかったことなどで、教育委員会から減給処分を受けたというものです。
国旗に向かって起立して歌うことを命ずる職務命令には合理的な根拠があるとした点は、前回のご説明と同様です。
しかし、今回の事案については次の事情をより重視して、教育委員会の減給処分を無効としました。
① 起立しないことは、当該教職員の歴史観ないし世界観等にもとづくもので、卒業式の積極的な妨害の意図によるものではないこと。
② 方法も物理的に卒業式の進行を妨げるものではなく、自分自身が起立して歌わないということだけで、卒業式へどの程度混乱をもたらしたか客観的な判断が難しいこと。
③ 処分を「減給」という重いものにした根拠は、当該職員が過去の入学式にも服装について校長の職務命令に違反したという行為だけで、式典を妨害するような行為ではないこと。
④ 卒業式や入学式のたびに、起立して歌わないことを処分してしまうと、短期間に懲戒処分が累積・拡大していき、職員への不利益が著しいこと。
以上の事情を前提とすると、その職員に対しては、減給処分は重すぎるとして、違法としたんですね。
今まで見てきたように、卒業式で起立して国家を歌わないことを理由に、教職員に戒告・減給処分をすることは、一律には違法とも適法とも言えません。
個別の事情を前提にして、利益衡量をしていくことになります。
おそらく、このブログを読んでいただいている方にも、
「税金から給与をもらいながら、校長の職務命令にも違反して、起立して国歌すら斉唱しないのは、公務員としていかがなものか」という考えの方、
「卒業式を直接妨害せず、影響もほとんど無いのに、個人の歴史観・世界観に基づく行動を処分の対象とするのは納得できない」という考えの方、
両方いらっしゃると思います。
私は、両方の考え方があることを前提に、しっかりと議論ができる社会が健全なのかなと思っています。
なお、公立学校についての裁判例について、ご説明してきましたが、これが私立学校だったらどう異なるかを考えてみるのも憲法上面白い問題だと思います。
司法試験の論文問題で聞かれそうな問題意識でもあります。
「憲法のお話」のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。