子供が連れ去られた時の引き渡し請求には強制力はあるの?

先週の読売新聞に子供強制引き渡しが年間120件行われているという記事がありました。

 

3日に1回は子供の引き渡し強制的に行われているということになります。

 

これは、私自身も実感していなかったので、驚きました。

 

具体例から考えてみましょう。

 

離婚する場合、日本では、どちらかの親を親権者(親として子供を育てて、子供の財産や生活上の管理をする権利を持つ人)と定めなければなりません。

 

そして、子供が小学校の低学年以下ぐらいの場合には、子供の意見にかかわらず、母親が親権者に定められるケースが多いです。

 

そこで、親権者でなくなった父親から、子供を取り戻すために親権者である母親子供の引き渡し請求をすることが多く見られます。

 

良くあるケースとしては二つ考えられます。

 

一つは、夫婦が離婚して親権者が母親となった場合に、父親やその祖父母が保育園や小学校に勝手に迎えに行って連れ去ってしまった場合です。

 

もう一つは、離婚前に母親が一人で家を出て別居して、子供を父親が育てていたのにもかかわらず、裁判で親権者が母親とされてしまった場合です。

 

いずれの場合にも、父親が任意に子供の母親に引き渡さない場合、母親が親権者として、家庭裁判所に、子の引き渡しの審判の申立をすることができます。

 

では、家庭裁判所で引き渡しの審判が出ても、父親が子供を引き渡さない場合に、母親はどうしたら良いのでしょうか。

 

私が司法試験の勉強をしていた頃には、子供は物ではないので、物の引き渡しを強制的にするような手段(直接強制)はできないという見解が多数説でした。

 

そこで、どうするかというと、子供を引き渡さない場合、例えば「1日につき3万円支払え」というような命令を出す方法をとるべきだとされました。

 

子供を引き渡さない父親は、どんどん債務がふくらんでしまうので、それを避けるために子供をやむを得ず引き渡すという間接的な強制方法です(間接強制)。

 

ところが、新聞によると、最近の実務では、直接強制が相当数行われているということになります。

 

少子化に伴って、子供の奪い合いは激化している傾向にあるようです。

 

実務的な観点から見ると、子供が安心できる生活環境にいたのに、そこから連れ去られた場合のために、直接強制という方法も用意しておく必要はあるのかもしれません。

 

ただ、無理矢理子供を連れて行くという方法をとると、子供にとって、誰が自分を守ってくれる存在なのか混乱して、心に大きな傷が残ることがあります。

 

子供の生活のために何が一番良いかを、夫婦としてではなく、父母として考えて、適切面会交流によって解決するのが一番良いのかなとは思います。

 

離婚の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

弁護士ブログ村→にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ うれしい顔


カテゴリー: 離婚のお話

コメントは受け付けていません。