憲法の権利を使うことが労働契約に違反する場合、どちらを優先するの?

G.W.も後半ですね。

 

今日は比較的良い天気だったので、お出かけになった方も多いのではないでしょうか。

 

私は、友人と食事をした後、仕事でした。

 

いくつか書面を作成したので、明日は休めそうです。

 

さて、今日は、働く教師の人権と労働契約に定める教育の中立性とを、どう調整すべきかが問題となった事案です。

 

十勝女子商業(Y)に和裁部主任の先生として採用されたXさんは、採用時に「校内において政治活動を行わない」という条件の下、雇用契約を結びました。

 

この条件は、「教育の中立性」という憲法上の要請を労働契約で定めたものです。

 

その後、X先生は、共産党の考え方を含む「愛情の問題」という本の購入を数人の生徒に勧め、1人の女生徒がこの本を購入しました。

これを知った学校(Y)が、上記の条件に違反するとしてX先生を解雇しました。

 

そこで、X先生は、

① 校内で政治活動をしないと約束した覚えはない、

② 書籍の販売は文化活動であり政治活動ではない

と主張しました。

 

そして、学校(Y)のした解雇は、法の下の平等(憲法14条)思想良心の自由(19条)侵害するものであるとして、解雇は無効だと主張していきました。

 

法律の解釈では、常に利益衡量(対立する利益を秤にかけてその重さを量って調整すること)が必要になってきます。

 

ここでは、X先生の人権である法の下の平等思想良心の自由と労働契約の内容として条件とされている教育の中立性の維持が衝突しています。

 

X先生の政治的な考え方~これは人格に結びつく重要な権利です~を尊重すれば、解雇までする必要はないとすることになるでしょう。

 

これに対して、高校生とはいえ、教師から特定の政治的教育を受けることは、できる限り避けるべきだとすれば、解雇もやむを得ないという方向になるでしょう。

 

さて、最高裁判所はどのような利益衡量をして結論を出したのでしょうか?

 

最高裁は、基本的人権も絶対のものではなく、一定の制約を受けるものであるとしました。

 

それを前提に、一定の範囲において政治活動をしないことを条件に雇われた場合には、雇用契約上の制限を受けるとしました。

 

そして、「愛情の問題」という本は政治的な考え方を含むものであり、その販売は政治活動該当する。

 

従って、雇用契約に定めた「校内で政治活動をしない」という条件に違反しているから、解雇有効だと判断しました。

 

補足として、私個人の考えを書かせてもらいますね。

 

確かに、高校で一定の政党の考え方を教師が勧めることは、教育の中立性から望ましくないとは思います。

 

でも、個人の主義・主張は、政治的な考え方と密接に結びついているので、全てを否定するのは思想良心の自由(憲法19条)の観点から適当ではありません。

 

そこで、教師(X)の活動が、一定の政党の考え方に大きく偏った場合に限って、解雇を認めるべきだと思います。

 

ですから、特定の政党の考え方が強く反映されている本を、X先生が直接生徒に勧誘して販売し、X先生がY学校の停止勧告にも応じなかった場合に限って、解雇有効とすべきでしょう。

 

逆に、政治的な意味合いは強くなく、むしろ教育・文化的な意義が強い本の販売まで、政治活動として解雇することは、公序良俗(民法90条)に反して許されないと思います。

 

結局、「教育の中立性VS思想良心の自由」という対立関係を、どう調整するかという利益衡量の問題なんですね。

 

労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。

 

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カテゴリー: 雇用と労働のお話

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