遺言を「偽造又は変造」した人でも相続することってできるの?

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昨晩は、静岡県東部を震源とする地震もありました。

 

静岡市内も震度4ということで、相当揺れました。

 

不安定に積んであった本などが崩れる程度ですんだのが、不幸中の幸いですが、今後も、静岡でも地震対策を考えていかなければなりません。

 

さて、相続関係のお話ということで、今回は相続権遺言のお話をさせてください。

 

遺言書を偽造したり変造したりした場合に、相続権を失うことは以前にもお話したことがあったと思います。

 

例えば、夫と一緒に同居していた妻が、亡くなるまで夫の面倒を十分に見ていたとします。

 

ところが、夫が死亡して遺言書を発見したら、先妻の子に多額の遺産を贈る内容でした。

 

妻としては、納得いかないでしょう。

 

このような場合に、遺言書の内容を勝手に変造して、先妻の子に遺産が行かないようにすると、相続欠格(そうぞくけっかく)と言って、相続権を失うんです。

 

では、遺言の変造が、被相続人(遺言をした人)の意思を実現させるためだった場合にも相続権を失うのでしょうか。

 

裁判では次のような事例が問題となりました。

 

Aさんが死亡したところ、Aさんが自筆で遺言を書いていましたが、これには署名に続いての押印が無く、文書中の訂正箇所の訂正印もありませんでした。

 

自筆で書いた遺言は、全文を本人が書いて、署名・押印する必要があります。

 

また、訂正箇所には、押印もする必要があります。

 

ですから、このような要件をみたしていない遺言は無効です。

 

そこで、Aさんの妻だったBさんは、押印や訂正印をしてしまったんですね。

 

そこで、Aさんの先妻の子共であるCさんが、「Aさんは遺言を変造したから相続権は無い。」と争ったんです。

 

確かに、無効だった遺言に印を押して、有効な遺言に代えるのは遺言の「変造」にあたります。

 

でも、この事案では、Bさんは自分に有利に遺言の内容を変えてしまったわけではありません。

 

Aさんの意思とおりの遺言を実現するために、不足していた印鑑を押しだけです。

 

そこで、最高裁判所は、このようなBさんの行為は、相続欠格の事由である「偽造又は変造」にあたるとしつつも、Bさんは相続欠格者にはあたらなとしました。

 

つまり遺言の「偽造又は変造」にあたるような行為を相続人が行っても、

相続人が被相続人(相続される人)の意思を実現させるために、その法形式を整える趣旨で行った場合

には、その相続人は相続欠格者にはあたらないとしたんです。

 

結局、Bさんが自分に有利に遺言を変造したのではなく、Aさんの意思はそのままに、押印だけを追加した点を重視したのだと思います。

 

なお、遺言はAさんが死亡後に、Bさんが偽造又は変造したものですから、遺言無効であることは変わりなく、法定相続分に従って遺産は分けられることになります。

 

いずれにしても、自筆の遺言を発見したら、家庭裁判所に検認の申し出をするとともに、内容には一切手を加えないことが大切だということはご承知しておいていただければと思います。

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

 

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カテゴリー: 相続のお話

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