遺産の預金を自分の分だけ引き出せる?

燕が飛んでいるのを見て、季節の変わり目が来たと思っているうちに、もう梅雨入りしてしまいました。

 

湿度が高くなったので、さすがにクールビズでないと仕事の効率が落ちてしまいますね。

さて、民法は、最近になって、多くの改正規定が適用されるようになっています。

 

契約関係など(いわゆる「債権法」)が最も大きな改正なのですが、むしろ相続の分野の改正の方が、身近なものかもしれません。

 

今回は、相続の分野の重要な改正についてお話していきたいと思います。

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相続をするときには、必ずといっていいほど預金がありますよね。

 

この預金は、銀行などの金融機関に払い戻しを請求する権利預金債権)であり、土地や建物と違って分割は可能です。

 

例えば、親の300万円の預貯金を、2人の子供が相続したときには、数字上では150万円ずつ分けることは可能です。

 

でも、各相続人が勝手に払い戻しをできるとした場合、遺産分割での話し合いが上手く出来なくなる危険があります。

預金通帳のイラスト

例えば、相続した土地(価値2000万円)に長男が住んでいて、預金が2000万円あったとしましょう。

 

二男は、土地を取得できないから、その代わりにお金を取得しようとしていたのに、長男が自分の取得分として1000万円の払い戻しを受けてしまうと、二男は預金(お金)で取得することが難しくなってしまいます。

 

住んでいる長男を追い出して売却する方法は、居住権の問題もありますし、手間も費用もかかるので好ましくありません。

 

そこで、平成28年に最高裁は、預貯金も遺産分割の対象となるため、話し合いで分割内容を決めるまでは、原則として、個々の相続人が自分の相続分だけを勝手に払い戻すことはできない、という取り扱いとしました。

 

もっとも、相続人の中には、被相続人(亡くなった方)から扶養されていて、すぐにお金が必要な場合に問題が生じます。

 

つまり、他の相続人の反対で、遺産分割全体の内容が決まらないと、何年も預金を引き出せなくなってしまうのです。

 

例えば、夫の扶養で生活をしていた妻が、引っ越したり、就職するまでにどうしても一時金が必要な場合に、他の相続人(例えば子供たち)の反対のために預金の払い戻しを受けられないこともあります。

 

逆に、子供たちが困るケースもあるでしょう。

 

そこで、令和元年7月1日以降の相続については、預貯金について、他の相続人の同意がなくても、預貯金の一部について払い戻しを受けられることとしました。

 

なお、引き出し額には上限があるので、それについては次回、お話ししたいと思います。

 

ちなみに、相続が始まったの(死亡日)が令和元年7月1日より前でも、払い戻しがそれ以降であれば、この制度が適用されます。

 

預金の一部引き出しを認めることで、家族が突然死亡して、生活に困ってしまうことを防ごうとしているのですね。

Q&Aでの詳しいご説明はこちらへ

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 相続のお話

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