相続税の節税のための養子縁組は有効?

11月も中旬になるのに、日中は暑いくらいの気候が続いています。

 

静岡だけでなく、全国的にもそうなのでしょうか。

 

突然寒くなりそうで、それだけ少し心配しています。

 

さて、養子縁組という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。

 

これは、本当の親子でない間柄の人と法律上の親子になる手続です。

 

養親からみた場合、全くの他人を養子にすることもできますし、長男の妻や孫のような親族を養子にすることもできます。

 

養子縁組が有効になるためには、民法により「縁組の意思」が必要とされています。

 

この「縁組の意思」とは、社会通念(常識)でみた場合に、実際の親子と同様の関係を作ろうとする意思を言います。

 

典型的なのは、養親、例えば祖父から見て、子が先になくなった場合に、孫を養育するために養子にする場合です。

 

ここでは、祖父は孫を親代わりに孫を育てていこうとしていますから、「縁組の意思」が認められることに問題ありません。

 

では、相続税の節税のために養子縁組をした場合はどうでしょうか?

 

相続税には基礎控除といって、財産の中から課税の対象から除かれる金額が定められています。

 

この基礎控除の額の計算は、
3,000万円+法定相続人の数×600万円
とされています。

 

つまり、法定相続人の数を増やせば基礎控除の額が大きくなるため、養子縁組をして養子という法定相続人の数を増やして節税することが考えられます。

 

もっとも、国税庁もそんなに甘くありません。

 

相続税の基礎控除をする場合には、①実子がいる場合には養子は1人まで、②実子がいない場合でも2人までしか法定相続人の数に入れることができません。

辛そうに納税する人のイラスト(男性)

なお、例外もありますので、その点は国税庁のホームページをご覧下さい。

 

この人数制限はあくまで税法上のもので、民法では別に養子の数に制限はありません

 

ですから、本当に縁組をする意思があれば養子の数が3人以上でも有効です。

 

日本ではあまり想定しにくいですが・・・

 

さて、ここで最高裁まで争われた事例があります。

 

分かりやすく、事例を少し変えてご説明しますね。

 

Aさんは、孫を養子にすれば相続税の基礎控除額が増えて節税になると税理士からアドバイスを受けました。

 

そこで長男Bの孫Cを養子にすることにしました。このことは長男B家族とAさんの弟夫婦だけの秘密にしておきました。

 

ここでAさんが死亡した場合、誰が怒るでしょうか?

 

そうです。長男Bの兄弟姉妹です。

 

兄弟姉妹からすれば、

①自分に黙って親が養子縁組をしていたこと、

②自分たちの相続分が減ること、

③自分の子供(孫)には養子縁組をしてくれなかった不公平

など怒る原因が満載です。

 

これに対して、Aさんや長男B夫婦から見ると、Aさんを扶養したり、同居でBの妻が苦労したりして、養子縁組は当然だと思うでしょう。

 

つまり、どこまで行っても平行線で理解しあうのは難しいです。

 

そこで、裁判になって最高裁まで争ったのです。

裁判所の建物のイラスト

そこでの争点は、AとCとの養子縁組は相続税の節税目的であり、通常の親子関係を作ろうとする意思がない(縁組の意思がない)のではないか?ということです。

 

確かに、縁組の意思がなければ養子縁組は無効です。

 

これに対して最高裁は、「節税目的と縁組の意思は併存し得る」として、この事案での養子縁組を有効としました。

 

ですから、「明らかに節税目的だけで、縁組の意思が認められない」という例外的な場合でなければ、養子縁組は有効とされることになります。

 

その判断は、養親と養子との関係、縁組から死亡までの期間など色々な要素が関係していきそうです。

 

長男Bの立場から見れば、AとCとの養子縁組をAができるだけ元気なうちにしておくことや、生前の交流を持っておくことが大切でしょう。

 

逆に、兄弟姉妹からすれば、必要に応じて戸籍を確認させてもらって、もし養子縁組がされていた場合には、自分の子供も公平に扱うよう求めてみるしかないでしょう。

 

この場合、養子が2人以上に増えてしまい節税にはなりませんが、兄弟姉妹の実質的な相続分を確保することができることになります。

 

もっとも、親が生きているうちに親族の間で戦略的に動くことは難しいでしょうから、そこに相続問題を生じる原因があるのでしょうね。

 

 

相続の一般的なご説明についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 相続のお話

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