会社が従業員を守る義務はどこまで?~安全配慮義務

ゴールデンウィークの確保できた時間で、本を読んだり、音楽を聴いたり、近場にブラッと出かけたりしています(事務所は暦通りに空けています)。

 

昔の司法試験は、母の日に択一試験をやるという鬼のようなもので、直前期のゴールデンウィークというのは地獄の勉強とプレッシャーの中でした。

 

十数年経った今になっても、その感覚が残っているようで、暗い気持ちがふっとよぎることがあります。

 

そんな中、日本のバンド「バンプ・オブ・チキン」の「ray」という曲に「分かるな~」と思わず聴き入ってしまいました。

 

特に共感したフレーズは

「晴天とはほど遠い 終わらない暗闇にも 

星を思い浮かべたなら すぐ銀河の中だ。」

「大丈夫だ。 あの痛みは忘れたって消えやしない。」

という箇所です。

 

①暗闇をどのように歩いて来られたのか

そして、

②暗闇をくぐり抜けた後の「痛み」は、「大切な人(今ではもう会えない)からもらった光=過去から未来に向かって自分を照らす光線(ray)」と一緒になっている

ことを表現したものだと私は解釈しています。

 

おそらく、藤原基央(作詞・作曲・ボーカル)の体験をもとにした詞なのでしょうね。

 

さて、今日は、会社の従業員の安全を会社がどこまで配慮しなければならないかということについて、大阪高裁の裁判例を参考にご説明したいと思います。

 

まず、会社と従業員の間には「従業員の労務の提供に対して、会社が賃金を支払う」という雇用契約があることには問題ありませんよね。

 

では、会社は従業員の安全を配慮する義務まで負うのでしょうか?

 

本来、雇用契約で会社が負う義務は、賃金の支払義務などのはずですが、労働者は会社が用意した環境で働かざるを得ないので、会社が粗悪な環境で働かせて利益だけを追求することは望ましくありません。

 

そこで、裁判実務では、民法1条2項に定められた信義則の条文を根拠に、会社には「労働者が安全な環境で働けるように配慮する義務」=安全配慮義務を認めています。

 

平成8年の大阪高裁の裁判例でも、ある会社で従業員Aが、他の従業員Cにフォークリフトに衝突して「左頬骨鼻骨骨折等」の大怪我をした事案で、B会社の安全配慮義務違反を認めて、従業員Aへの賠償義務を認めています。

 

B会社は、他の従業員が運転するフォークリフトを早く発見できるように、ライトを設置したり、フォークリフトで運ぶ荷物に目印を付けるように指導する義務を怠ったという判断になります。

 

この事案での大きな問題は、大怪我をした従業員Aが治療後に、自らの申出で復職した後1ヵ月半ほど経過して宿直室で急性心不全で死亡した場合、その死亡についてもB会社の安全配慮義務違反と言えるのかということでした。

 

私の感覚では「難しいのではないか?」というものですが、この大阪高裁はB会社の安全配慮義務違反を認めました。

 

その理由は、次のようなものです。

 

会社は労働者の生命、健康が損なわれることのないよう安全を確保するための措置を講ずべき義務(安全配慮義務)を負っている。

 

そして、従業員Aは、復職した時に従前と同じ作業時間で同じ作業量をこなすだけの健康状態には無かったということです。

 

B会社としては、産業医(会社で従業員の健康のために登録をしている医師)の判断を仰いで、仕事の内容や時間を制限すべきだったということです。

 

そうなると、会社側からすると、事故であろうと、精神的・肉体的な病気だろうと、一定期間会社を休んだ従業員が復帰する時には、必ず産業医(居なければ、従業員自身のかかりつけの医師)の細かい指示を受けておくことが大切になります。

 

また、従業員も重大な症状や死亡の危険があるのですから、理して働かないで、かかりつけの医師の診断を受けて、会社にしっかりと報告しておくことが大切でしょう。

 

この事案では、最も認定が難しそうな「復帰後の労働」と「死亡」との因果関係も認めていますが、1ヵ月半の間の会社以外の場所での過ごし方や生活の規則性など事案によっては争いになる部分が多々ありそうです。

 

ですから、必ずしも、復職して1ヵ月半で死亡した場合の全てに会社の安全配慮義務違反が認められる訳ではないことに注意が必要だと思います。

 

会社にとっては、事案によっては責任を負担する必要はないでしょうし、従業員にとっては、この裁判例だけを根拠にして「勝てる」とまでは思わない方が良いと思われます。

 

労働問題のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。

 

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カテゴリー: 雇用と労働のお話

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