上を向いて歩こう ~ 建物所有者の怖い責任

ご存じ、坂本九の歌った歴史に残る名曲ですよね。


作詞・作曲とも本当にシンプルでありながら、独自の世界観を表しており、私も大好きな曲です。


「一人ぼっちの夜」と歌いながら、何故か人の温かみが伝わってくる不思議な詞とメロディーです。


これは計算して出来るレベルではないでしょう。


世界中でヒットし、特にアメリカではビルボード誌(アメリカの週刊音楽誌)の3周連続第1位となり、この記録は、日本のミュージシャンが未だに破れない記録とのことです。


私も犬の散歩を夜遅くしている時に、ふと夜空を見上げて、考え事をすることはありますが、昼間町中を歩いている時には上はほとんど見ません。


皆さんの多くもそうですよね?


でも、札幌で最近起きた「札幌かに本家」の看板落下事件を聞くと、街中でも上を向いて歩かなければいけないのかと思ってしまいます。


この事故で、看板が当たった21才の女性が、首と頭の骨を折って意識不明の状態となってしまったそうです。


もちろん、被害者は気の毒であり、私たちも何時同じ事故の被害者になるか分からないという怖さはあります。


でも、皆さんが加害者となる可能性を考えてみたことはありますか?


今回の事故では、加害者は、民法で定める「土地の工作物の責任」を定めた民法717条1項の責任を、被害者に対して負います。


「札幌かに本家」の看板は「土地の工作物」にあたるので、その設置や保存に問題があれば、㈱札幌かに本家が損害賠償責任を被害者に対して負います。


もし、21才の女性が植物状態になってしまったら、その損害額は2億を超える額になると予測されます。


そこで、質問です。


皆さんは、TVアンテナ、壁に直接とめた玄関灯、その他の建物付属物がご自宅の建物にあったりしますか?


もし、これらの取り付け方が不十分で、強風や台風で飛んでしまい、誰かの頭にあたって同じ傷害を与えたら、同じ責任を皆さんは負う可能性があります。


そして、第1次的には、「占有者=実際にそこを使っていた人」が責任を負います。


今回の事件で言うと「㈱札幌かに本家」が占有者にあたります。


そして責任が非常に重いため、この占有者は、自分から損害の発生防止措置などの管理をしっかりしていたことを証明しなければ損害賠償責任を免れません。


看板自治も大分錆び付いていたようですから、今回の事件では「㈱札幌かに本家」は責任を負わざるを得ないでしょう。


でも更におそろしいのは、札幌かに本家が定期的に検査をして、固定ボルトなどを新品に変えていたのに事故が起きてしまった場合でも、今度はビルの所有者が無条件で責任を負うのです。


ですから、究極的には、土地の工作物を所有している人は、自分に何の過失が無くても、突然数億円の責任を追及されるおそれがあるんですね。


そうすると、例えば、皆さんが持ち家のアンテナや屋根の一部が壊れてその破片が通行人に当たった場合には、皆さんは無条件で損害賠償責任を負うことになる可能性が高いです。


被害者も気の毒ですが、加害者も相当重い責任を負わされます。


ですから、持ち家を取得した場合には、火災保険の中などで、土地の工作物責任までカバーするような特約に必ず入ることをお勧めします。


私も、土地の工作物責任を追及されるのが怖いので、事務所も建物からはみ出るような看板はつけずに、壁に文字を直接貼り付ける形式のものにしてもらっています。


上を向いて歩けば防げるような事故なら良いのですが、どうもそうは行かないようです。

 

「身近なトラブル」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

 

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カテゴリー: 日常生活の法律問題

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