音楽は誰のもの?

少し前に「君の名は」というアニメ映画が大ヒットしたことを聞いたことがある方もいるかと思います。

 

最近、DVDがレンタルされると聞いて、勇気を出して観てみました(ストーリーの話が入るのでこれから観る予定の人は飛ばして下さい)。

 

「勇気を出して」の理由は、親切にTVで情報漏れをしてくれるので、だいたいの筋書きが予想できると思っていたことが一つ。

 

もう一つは、高校生が入れ替わる映画や小説は相当数あり、何度も観たり読んだりしていたからです。

 

個人的な感想としては、「多くの人が良いというものには、それなりの理由があるな」というものでした。

 

アニメでなければ出来ない画像の美しさや、古き良き日本の田舎を舞台の一部としていることは、ジブリと同じく世界的に受ける狙いも見られます。

 

また、個人的には創作ものは、どこまでディテールが緻密に出来ているのかこだわって観るのですが、これも納得できるものでした。

 

ストーリーの中に「人と人、時間のつながりを紐に例える」という日本的な考え方を軸に入れているところ。

 

始めの方にチラっと出てきた「高山ラーメン」のクルマが、後でしっかりとストーリーにつながったり。

 

音楽担当の野田洋次郞が個人的に好みだったことも、楽しめた理由かもしれません。

 

さて、このようなアニメや音楽は、当然、著作権の対象になります。

 

著作権の対象になるということは、勝手に複製して売ったりしてはいけないということは皆さん知っているとは思います。

 

更に、進んで、他人の音楽を聞かせることを目的として再生や演奏をすれば、日本音楽著作権協会(JASRAC)に著作権料を支払わなければなりません。

 

アマチュアのバンドがコンサート(ライブ)をやるときでも、他人の音楽を演奏すれば著作権料を支払わなければなりません。

 

JASRACの人は、NHKの料金徴収の人と似ていて、アマチュアの人がコンサートを開く場所を探して、突然現れてプログラムを確認することもあります。

 

ブログラムに他人の曲があった場合(いわゆる「コピー」)には、その曲数に応じて著作権料を取られるのです。

 

これは、私が大学生だった数十年前も同じで、学生の懐では痛かったことを今でも覚えています。

 

この著作権料を、2018年1月から今まで対象にしていなかった音楽教室まで広げようとJASRACが動きだしました。

 

これに対して、ヤマハを中心とする音楽教室を経営する会社が大きく反発しています。

 

過去に痛い思いをした私としては、心情的にはヤマハ側なのですが、法律家として冷静に見た場合には、結論も違ってきます。

 

この問題について、ヤマハなどの音楽教室側は、今年の6月に、東京地方裁判所に対して、JASRACを相手とする裁判を起こしました。

 

「著作権料の支払い義務が無いこと」を確認することを求める裁判です。

 

ヤマハ側の主張は、「音楽教室での演奏は聞かせることが目的ではなく、手本を示すためで、公衆に伝えようとするものではないので、演奏著作権の対象とならない」というものです。

 

確かに、例えばピアノ教室やギター教室で最近のヒット曲を素材に練習する場合、その曲で感動するというよりも、演奏力を磨くことが主目的ではあります。

 

ここでヤマハ側は、著作権の直接の利用主体を主に演奏をする講師や生徒と構成しています。

 

これに対してJASRACは、著作権の利用主体は直接にも間接にも事業者である経営者のみとしています。

 

ですから、音楽の著作権者の専有する権利を侵害していないかについて、ヤマハ側よりもう少し広くとらえることになります。

 

実際に、カラオケボックス、ダンス教室、カルチャースクールなどでは、著作権料を納めているのは、講師やお客さんではなく、経営者です。

 

そうすると、著作権を利用して間接的に公衆から利益を得ていないのかという側面も見ていかなければなりません。

 

例えば、音楽教室で生徒に好きな曲をリクエストさせて、それを毎回の練習課題とすれば、生徒たちのやる気も起きるでしょう。

 

また音楽教室をしている場所で、楽器に必要な器具や楽譜を売っていれば、生徒が買うことも多いでしょう。

 

楽器を置いてあれば、大きな収入源になっているかもしれません。

 

つまり著作権を利用して人を感動させるという性質は弱くても、公衆に働きかけて間接的に著作物(曲)を利用して利益を上げれば、やはり著作演奏権を利用していると私は思います。

 

音楽は、その内容が素晴らしければ素晴らしいほど、著作権者の手を離れて公衆のものとなっていきます。

 

そして、著作者が死亡した後も、時代を越えて歌い弾きつがれていきます。

 

音楽が公衆のものとなるのは未来に任せて、著作権者に法律上の権利があるうち(原則著作者死後50年まで)は、著作権者の利益を保護することが必要だと思います。

 

目に見えない権利を軽くみる傾向があると言われる我が国にとっては、この裁判の結果は一つの参考となる基準になるでしょう。

 

大分先のことになるでしょうが、東京地裁の判決が出たら、分析してみたいと思います。

 

著作権のお話」の過去ブログ記事についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 著作権のお話

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