今回も引き続き、行政と私たちとの関係についての法律についてお話していきたいと思います。
「行政法」という法律は存在しないということは、以前にもお話したと思います。
行政に関する法律は数が多すぎるので、一々勉強するのは無理なんですね。
そこで、勉強をする時には、「行政法」とひとくくりにして、行政に関する法律の一般の原理・原則を学んでいくんです。
その、行政法の一般原則の主なものとしては、
① 適正手続の原則
② 説明責任の原則
③ 信義誠実の原則
④ 権利濫用の禁止原則
⑤ 比例原則
⑥ 平等原則
などがあります。
今回はこのうち、①適正手続の原則についてご説明したいと思います。
刑事手続については、憲法31条で明確に適正手続の原則が定められています。
では、行政手続についてはどうなんでしょうか。
判例・学説ともに、適正手続の原則は行政手続についても適用されるとしています。
最高裁の判例としては次のようなものがあります。
Xさんは新規に個人タクシーの営業免許を、東京陸運局長に申請したところ、法律の要件をみたさないとして申請が却下されました。
そこで、Xさんは、次のような主張をしました。
東京陸運局長は、あらかじめ審査基準を定めて、その内容をXさんに告知し、Xさんに主張と証拠の提出の機会を与え、またその基準を一般に公表すべきだった。
しかし、東京陸運局長は、それをせずに申請を却下した。
これは、適正手続違反の違法があるとして、却下処分の取り消しを求めて訴訟を起こしました。
さて、手続違反だけを理由に、処分の取り消しを求めることは認められるのでしょうか。
最高裁の判例はこれを肯定しています。
東京陸運局長としては、許可・不許可の基準を内部的にせよ設定する必要があることを前提として、次のように言っています。
免許の申請人(Xさん)に対し、その主張と証拠の提出の提出の機会を与えなければならない。
免許の申請人(Xさん)は、このような公正な手続によって免許の許否につき判定を受けるべき法的権利を有するので、これに反して却下処分がなされた時はこの処分は違法となる。
結論としても、Xさんに対する却下処分を違法としました。
国や県・市は、色々な許認可権限を持っていますが、その許認可をする際に、手続は適正なものでなければならないということなんですね。