総選挙と憲法改正

衆議院が解散され、10月22日には総選挙が行われることになりましたね。

 

政党によって主要な争点の主張が異なっているようです。

 

私としては、仕事がら憲法改正が非常に気になっています。

 

そこで、今回、今度の選挙と憲法改正について考えてみました。

 

ご存じの方も多いかもしれませんが、憲法は日本の国の唯一の最高法規であって、これに違反する法律は全て無効となる法の王様です。

 

つまり国会が多数決で法律を作っても、憲法に違反したら、裁判所で全て無効と扱われてしまうのです。

 

憲法の最大の目的は、
第二次世界大戦時の日本や
ヒトラーの現れたドイツ
のように、誤った多数決による国家権力を抑制して私たち国民の権利を守ることにあります。

 

例えば現在では、アメリカの失業率や景気がもっと深刻であれば、トランプ大統領が圧倒的多数決で選出されて、過去と同じ過ちに走った可能性もあります。

 

私たちの個人の権利を「自宅」にたとえると、憲法は「玄関の鍵」のような役割と言えるでしょう。

 

悪い人がいなければ必要ないのですが、万が一の危険を防ぐために必要なものということです。

 

鍵をいくつもつけてしまったのでは、出入りするときに不便です。

 

かといって、盗難に弱すぎる鍵では怖くて眠れません。

 

どの程度の鍵が妥当なのか?というのが憲法改正の判断と似ていると思います。

 

そして、私たち自身の家の鍵ですから他人(国会議員)に勝手に付け替えられては困ります。

 

そこで、憲法改正は、国会で発議した上で「国民投票」といって、私たち自身が改正すべきかどうかを最終的には私たちの投票で決めていくことになります。

 

では皆さん、憲法で最も大切な条文って何だと思いますか?

 

日頃の報道では平和と戦争の放棄をうたった9条ばかりが取り上げられていますね。

 

仮に、弁護士・裁判官・検察官など法律を実務で取り扱う人に「憲法で一番大切な条文を一つだけあげてください」というアンケートをとったら、9条はそれほど上の方に来ないと思います。

 

私の予想だと、上位を占めそうなものとして、
①前文(国際平和など憲法の理念を詳しく述べているもの)
②13条(個人の尊重・幸福追求権)
③15条(投票権)。
④21条(集会・結社・表現の自由・検閲の禁止)
⑤31条(法内容・手続の適正の原則)
⑥96条(憲法改正手続を厳しく定める条文)
あたりでしょうか。

法曹が専門家ぶっているのではなく、憲法上あくまで9条というのは手段であって目的ではないからです。

 

戦争の放棄や自衛隊を定めるかは手段の問題で、それによって私たち国民の生命・身体の安全や平和を守ることが目的ですよね。

 

憲法の目的はあくまで権力を適正な範囲で抑制して私たち国民の権利を保護することです。

 

ですから、憲法9条も
「国会が自衛隊の活動などを法律で定められる範囲を制限して、国家権力を抑制すること」(手段)
によって、私たちの平和な生活(前文・13条)を守ろうとするものなのです。

 

そして私達の権利を直接守る規定や直接的な制度は、
簡単に憲法を改正させないこと(96条)
人権を侵害するような内容の法律を作らせないこと(31条)
ヒトラーのようなおかしな政治家が現れたら、それを私たちの世論と選挙で反対していくこと(15条・21条)
なのです。

 

ですから、仮に9条がそのまま維持されたとしても、私たち国民の上の①~⑤の権利が法律で簡単に制限できるように憲法が改正されてしまえば、一時の愚かな与党の判断で戦争への道を行くことは容易なのです。

 

私が個人的に最も重要だと考えている条文は、21条(表現の自由)です。

 

今回の憲法改正では9条ばかりが騒がれていますが、各党の改正の考えには9条以上に重要な改正が含まれていると私は考えています。

 

明確に憲法改正草案を打ち出している自民党を例に見てみると、21条(表現の自由)について怖い案が出されています。

 

現在の憲法は21条1項をこう定めています。

 

「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」

 

これに対して、自民党の憲法改正草案ではこれに2項を新設して以下のように定めています。

 

「前項(1項)にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。」

 

現在の憲法の条文上では無制限で表現の自由を保障していますが、決して何でも表現して良いわけではありません。

 

例えば、名誉毀損罪が刑法で定められているように、憲法で保障された別の人権である名誉・プライバシー(13条)を害する表現については、表現の自由(21条)も制限されることに争いありません。

 

つまり他人の人権を侵害してまで、自分の人権を貫くことはできないのです。

 

ですから、今でも指定暴力団やオウム真理教など明らかに目的を違法とする結社や活動は法律で制限できます。

 

では、それ以外に「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動」や結社を制限する必要があるのでしょうか?

 

私にはとても必要があるとは思えません。

 

そして、もし現在の自民党草案のとおり21条が改正されれば、制限の必要性の判断は、私たち国民の手から離れて(法律を制定できる)その時々の与党に持って行かれてしまいます。

 

もし、ヒトラーのような政治家が現れたら、今回の私のブログでの意見発表は「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動」として間違い無く処罰されることになるでしょう。

 

明日にはゲシュタポあたりに勾留されて静岡中央警察署か静岡刑務所内の拘置所に入っていそうです(笑)。

 

これに対して、希望の党のように、憲法改正について争点と言いながら、どの条文をどのように変えたいのかすら示さないで何となく選挙に突入することもどうかと思います。

 

「そんな未成熟な急ごしらえの政党で政権をとるつもりだろうか?」
と個人的には不安を感じます。

 

だからといって、国の最低限の防衛に加えて国際平和貢献についても十分考えなければならない時代に、共産党のように、ただ「9条改正反対。自衛隊は違憲だ。」と主張し続けているのにも違和感を感じます。

 

私は固定的に指示する政党を持たないので勝手なことを言っていますが(支持する政党を持つ方に不快な思いをさせていたらすみません)、憲法改正を考える情報が絶対的に不足していることは確かだと思います。

 

少なくとも、マスコミには、何条をどのように改正するつもりなのかを個別に分かりやすく報道して欲しいですね。

 

その結果、私たちがしっかりと考えられる状況の中で、条文1個ずつ国民投票にかけていくことを期待しています。

 

「憲法のお話」のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 憲法のお話

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