防衛大臣の辞任と憲法

暑い日が続きますね。

 

日中、体温が上がりすぎたり、汗をかきすぎたりすると、水分をとっていても、それが適切に体に回らずに熱中症になってしまうそうです。

 

例えば、水分が適切に腎臓に回らないと腎不全を起こしてしまい、人口透析をしなければならくなった人もいるそうです。

 

皆さんも、野外では涼しい場所にいる時間を適度にとって、体を大切にしてください。

 

さて、最近話題になっている稲田防衛相の発言や辞任の問題。

 

最終的に引き金になったのは、アフリカの南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)部隊の日報を隠してしまったことのようです。

 

「部隊が毎日の活動を記録した日記(日報)」のような書類を隠すことがどうして大臣の辞任にまでつながる重大な問題なのでしょうか?

 

それは、この「日報」が、部隊の海外での活動が憲法9条に違反していたかどうかを、私たち国民が知るため(知る権利)の非常に重要な書類になるからです。

 

憲法は、法律・条例その他の法令のどれよりも強い効力を持つ「法の王様」です。

 

ですから、憲法に違反する法律や国の活動は全て無効・違法ということとになります。

 

この憲法で私たちの人権や平和主義が保障されているから、仮に(ヒトラーのときのナチスのように)圧倒的与党が国会を支配しても、憲法を改正しないかぎり私たちの自由や平穏な生活が一方的に抑圧されることがないのです。

 

日本の憲法で有名な9条では、①戦争を放棄すること②戦力を持たないこと③交戦権を国が持たないことが定められています。

 

そして、自衛隊が②の「戦力」にあたることについては、政府も学説のほとんども認めています

 

それでは、どうして自衛隊の設置が憲法9条に違反しないのでしょうか?

 

確かに、憲法には自衛隊についての記述は一言もありません。

 

しかし、憲法が日本の「国」という存在を前提として定められている以上、「国」が危機に陥ったときに、自衛することは当然認めていると考えられるからです。

 

この点については、学説には様々な意見がありますが、ひとまず政府の見解を前提にして考えていきましょう。

 

憲法がこれだけ厳しく戦争について否定している以上、自衛隊の「戦力」についても、本当に日本という国、私たち国民に危険が迫った時にしか使うことは許されません。

 

つまり、憲法が想定しているのは、日本の国土や国民が危機に陥ったときに反撃する「戦力」だけなのです。

 

ところが、国連平和維持活動ということになると自衛隊が活動する場所は外国(今回は南スーダン)になります。

 

憲法は、自衛隊が外国で「戦力」を使うことは一切認めていないということについては、憲法を学んだ人なら理解しているはずです。

 

ですから、自衛隊がPKOで協力するのは「戦力」にひっかからない範囲、つまり南スーダンの内戦で危険に陥っている人を助けたり、医療活動の援助だったりすることなどに限定されるわけです。

 

自衛隊員が自分の身を守るために武器を携行することですら大きな議論になったくらいです。

 

つまり、私たち国民が、自衛隊が海外で活動するときに、「戦力」を使っていないか?=憲法9条に違反していないか?をチェックきるような情報を国は開示しなければならないのです。

 

そこで、その私たちがチェックできる情報として大切なのが「日報」というわけです。

 

南スーダンで平和維持活動をしていた自衛隊の毎日の日記である「日報」には、その日の部隊の行動が詳しく書かれています。

 

これを見れば、例えば

・どのような銃器を使ったのか?

・銃器使用は自衛隊員の身を守るために必要なものだったか?

・南スーダンで、内戦を鎮圧するのに関わっていなかったか?

ということが非常に良く分かるわけです。

 

もちろん、国際問題に関わる政治的なことやプライバシーに関することは非開示にできるのでしょうが、銃器の使用などについては開示しなければなりません。

 

これを隠してしまうと、私たち国民が自衛隊が外国で「戦力」を使っていないか?がチェックできないのです。

 

そのため、「日報」を隠したことに関与した防衛大臣は憲法違反か否かの判断に重要な資料を隠して、私たちの知る権利(憲法21条)に違反する行動をしたということで、重大な責任を追及されているわけです。

 

私個人としては、世界の平和に日本も貢献すべきと思うので、PKOへの自衛隊参加は賛成です。

 

ただ、それは「自分や大切な人の命や身体を守りたい」という人類の普遍的な理念のために参加すべきで、その国の内戦には一切関与すべきではないと思います。

 

内戦の場合、他の国が「どちらが正しくて、どちらが誤りか」を判断することは不可能で、結局は経済原理で動くことになると思うからです。

 

もっとも、このような防衛大臣の責任問題が起きるのも現在の憲法だからで、今予定されている改正がされてしまったら問題すら生じなくなってしまいそうですね。

 

「憲法のお話」のブログ過去記事についてはこちらをご参照ください。

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カテゴリー: 憲法のお話

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